タナゴやモツゴ(クチボソ)を小川で狙う小物釣り。とくにタナゴ釣りは繊細な道具と奥深い世界観で、矢口高雄先生の釣り漫画『釣りキチ三平』では「小さなビッグゲーム」として描かれるほど。そんな趣がたっぷり詰まった、冬ならではの気軽な釣りをご紹介します。
「雑魚(ざこ)釣り」なんて言われ方もする小物釣り。そのポイントは、「ホソ」と呼ばれる水路や野池など、いわゆる「小場所」と云われる釣り場です。「え、こんな小さな川に魚がいるの?」と思ってしまうような場所でも楽しめる気軽さが魅力なのです。
小物釣りは一年中楽しめますが、気温が下がると越冬のため群れを作る小魚は冬になると釣りやすく、他の釣りのオフシーズンにやり込む釣り人も多いのだとか。
▲今回使用する道具はすべてタナゴ用。竿は90cm程度と短いものを選びました
相手の魚が小さい分、使う道具も極めて繊細。道具一式がポケットに入ってしまうほどのコンパクトさですが、大物ゲームのタックルに勝るとも劣らないこだわりを感じさせてくれます。
▲大豆のような「親ウキ」と小さいつぶつぶの「シモリウキ」の組み合わせで、繊細な魚の反応を探ります
例えば仕掛けの「シモリ」。「親ウキ」と呼ばれる小豆大のウキの下に、ゴマ粒のような小さな「シモリウキ(イトウキ)」がいくつも付いています。これは、あまりに小さな魚のアタリを逃さずキャッチする仕組みなのです。
▲親ウキの浮力が強すぎると喰いが悪いので、状況によってはオモリを足して調整します。慣れてくると水中に沈めたシモリのかすかな動きでアタリを察知できるようになります
釣り座を決めたらシモリ仕掛けを竿にセットし、水に沈めてウキと針の間隔を調節します。針が水底に触れないように親ウキを上下させ、シモリウキを等間隔に調整すれば、仕掛けの準備は完了です。
▲今回は手軽な練りエサを使用。説明書きの通りの分量の水と混ぜるだけでOK
小物釣りの定番エサと言えば、「赤虫(あかむし)」ですが、活きエサは釣行の直前に用意する必要があるなど手間がかかるので、今回は粉末状の「練りエサ」を使いました。
練りエサは小さな保存容器に入れて水を加えて練り、100円ショップのシリンジに移せば乾燥もしないので便利。小物釣りは丸一日釣りをしてもほんの少しの量で十分です。
▲針の先端部分に丸めたエサを付けます。釣り始めは魚を寄せるため、大きめに付けて同じポイントに何度も送り込みます。お隣で釣っていた名人によると、タナゴを狙う場合はこの1/4以下の大きさで良いそうです
練りエサは小さく丸めて針に付けます。エサから針の先端を少し出すのがポイントで、こうするだけで掛かりがぐっと良くなります。
▲流れが緩やかで、魚が身を隠す障害物の近くを狙います
ポイントは、アシなどの水草や水中にある杭の近くなど、何かしらの変化がある場所。基本的に小魚は岸から近い浅場にいるので、短い竿で十分釣りになるというわけです。
アシの際にそっと仕掛けを入れると、すぐにウキがモゾモゾと動き出します。軽く合わせると銀色の魚体に薄紫の鱗が美しいモツゴが釣れました。
体長は5〜6cmほどですが、繊細な仕掛なので思いのほかスリリングな手応えを味わわせてくれます。モツゴは群れているようで、同じ場所で立て続けに三匹ほど釣り上げることができました。
▲カワセミも小魚を食べに小川にやってくるようです
ふと釣りの手を休めると、小魚をくわえたカワセミの姿が。住宅地のそばにある小川ですが、驚くほど豊かな自然を満喫できます。残念ながらタナゴの姿は見られませんでしたが、冬の午後をのびのびした気持ちで過ごすことができました。
水辺でのんびり頭の中を空っぽにして楽しめる小物釣り。他の魚種がオフシーズンの釣りにおすすめです。
<取材・文/杉山元洋>
杉山元洋|自転車やSuperCubなどの二輪車と大衆酒場を愛する、下町育ちの編集者兼ライター。男性情報誌、ビジネス、生活情報、グルメなど、幅広い分野の雑誌・ウェブ記事制作に携わる。Instagramアカウント:xcub_redbear
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