ピア・ツー・ピア・カーシェアリングのスタートアップTuro(トゥーロ)が、米国で上場申請したことを正式発表した。2021年8月から密かに進めていた手続きだ。
米国時間1月10日、米国証券取引委員会(SEC)に提出されたS-1書類に、募集条件は書かれていない。
Turoは2010年に設立され、Airbnb(エアビーアンドビー)のクルマ版と言われている会社で、民間の自動車所有者が、同社のウェブサイトを通じて車両を貸し出すサービスを提供している。2021年9月30日時点で、7500以上の都市にアクティブ・ホスト8万5000人、アクティ車両16万台が登録していると同社は言っている。自動車オーナーは保有コストの削減が見込め、ユーザーは、パンデミックによるサプライチェーン問題でレンタカーが値上げされている時期に、短期レンタルを利用できるメリットがある。伝統的レンタカー業界の苦境が、激しい競争にもかかわらずTuroの市場シェア獲得に寄与したことは間違いないが、その人気は時として負担をもたらすことをS-1のリスクファクター記述が示している。
財務状況概要
まず財務状況を見てみよう。
2020年、Turoは純売上1億4990万ドル(約172億9000万円)を計上し、対前年比6%の成長だったとS-1に記載されている。収支は純損失9710万ドル(約112億円)で、2019年の純損失9860万ドル(約113億7000万円)からわずかに改善された。
Turoは売上増加についていくつかの要因を挙げているが、中でもRisk Score(リスク・スコア)と同社が呼ぶデジタルツールが目立っている。2020年4月に提供開始されたこの機能は、利用者が予約する際にTuroが徴収する手数料を動的に調整する。Turoは、このツール、およびホストが車両を貸し出す料金を引き上げたことが、純売上の増加に貢献したという。
2021年、売上と損失が急増。
Turoは2021年最初の9カ月間に3億3050万ドル(約381億2000万円)の純売上を生み出し、2020年同期間の1億780万ドル(約124億3000万円)から207%急増した。純損失も同じく急増した。2021年9月31日までの9カ月間に、Nuroは1億2930万ドル(約149億2000万円)の損失を計上し、2020年の同時期は5170万ドル(約59億6000万円)だった。
その理由?TuroはS-1書類で、レンタル日数の増加および1日当たりの総取扱高の増加によって売上が増えたと書いている。
S-1を精査したところ、Turoは2020年、少ない労力で多くのことを行おうとした結果、この年の財務状況が好転したとみられる。同社は2020年の出費を抑え、事業経費を2019年の1億3390万ドル(約154億4000万円)から2020年は9580万ドル(約110億5000万円)に削減した。
2021年最初の9カ月間の状況は異なる。同期間の事業経費は1億2401万ドル(約143億円)で、前年同期間の7160万ドル(約82億6000万円)を上回った。
リスクファクター
同社が直面するリスクファクターには、当然ながら「人々がTuroを使わなくなったらどうするか」および、類似アプリと伝統的レンタカー会社との「競争に直面する」ことが挙げられる。しかし、他にもいくつか気になる点がある。
まず、Turoは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが同社ビジネスに変動性を加えたことを指摘している。会社は社員の解雇を余儀なくされ、2020年にはドイツでの操業を閉鎖し、なんとか「新型コロナ以前レベルを超える」ところまでこぎつけた。
同社は、ホストに対する犯罪行為の責任問題に直面する可能性を指摘している。これまでに訴訟や罰金が発生した様子はないが、2021年8月、Turoをはじめとする複数のピア・ツー・ピア・レンタル・アプリが人身売買などの犯罪に利用されたことが発覚した。国境付近で増加傾向にあると米国税関・国境警備局が認めている犯罪だ。
Turoは、同社に対してレンタカー許可の取得を義務づけている都市、具体的には空港当局からの訴訟リスクもある。実際この面においては、Turoは訴訟を受け反訴もしている。空港利用に関する訴訟は4件あり、Turoがロサンゼルス市を相手取った訴訟を含め3件は未解決だ。
機会と成長
リスク要素はあるものの、Turoは現在のサービス可能獲得可能市場規模を1460億ドル(約16兆8405億円)、総獲得可能市場規模(TAM)を2300億ドル(約26兆5257億円)と推計している。
「当社の総獲得可能市場規模、2300億ドルのうち1340億ドル(約15億4541億円)は北米、650億ドル(約7兆4969億円)が欧州、310億ドル(約3兆5754億円)がそれ以外(中長期的機会があると当社が考える国々が含まれます)と推計しています」と提出書類にかかれている。
同社が事業を本拠地米国だけでなく世界市場に進出する用意ができているらしいことは注目に値する。さらに同社は、戦略的買収および提携によって「ホストやゲストに現在自社で提供していないサービスや機能を提供する」つもりだ。
画像クレジット:Turo
[原文へ]
(文:Rebecca Bellan、Kirsten Korosec、翻訳:Nob Takahashi / facebook )
- Original:https://jp.techcrunch.com/2022/01/11/2022-01-10-peer-to-peer-car-sharing-company-turo-files-ipo-to-go-public/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Rebecca Bellan,Kirsten Korosec,Nobuo Takahashi
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