車上荒らし防止に取り組むFordとADTのジョイントベンチャー企業「Canopy」

自動車メーカーのFord(フォード)と、ホームセキュリティやビジネスセキュリティ、アラーム監視サービスを提供するADTは、現在の車両セキュリティの脆弱性に対処することを目的としたジョイントベンチャーCanopy(キャノピー)を立ち上げた。

Canopyはまず、車両に取り付けて周囲を監視し、盗難や破壊行為などの問題をドライバーに警告するアフターマーケットアクセサリーを提供する予定だ。

車両に内蔵されたアラームシステムは、盗難の抑止に役立つ場合もあるが、決して安全とはいえない。2020年、FBIは自動車盗難によって74億ドル(約8479億円)の損失が発生したと推定しており、これには自動車そのものとその内容物の盗難が含まれている。Canopyの製品は、過去10カ月間、米国のトラック運送会社や英国の貨物バンなどで試験運用されており、フォードの車両カメラシステムの専門知識とADTの監視サービスを組み合わせて、商業・小売業の顧客が車両盗難を回避できるようにすることを目的としている。

Canopyは、ADTにとって初の自動車セキュリティへの進出であり、他社と協力して新しい輸送技術を迅速に構築、買収、試験運用するFordの新しいベンチャーインキュベーターであるFordXの製品だ。2018年、FordXはドックレスeスクーターのシェアリング企業であるJelly(ジェリー)を手がけ、これがFordによるSpin(スピン)買収の基礎となった。Canopyは、従来のビジネスライン以外で拡張性のあるモビリティソリューションのポートフォリオを拡大するフォードの戦略の次のステップとなるようだ。

Canopyの自己吸着型アクセサリーは、あらゆる車種に対応し、2023年初頭までにオンラインとさまざまな実店舗で販売される予定だ。カメラ、レーダー、音響センサーなどのセンサーを用いて、クルマの周囲に関するデータを収集する。そして、車内とは独立したOSがデータを処理し、LTEやWi-Fi経由でクラウドサーバーに共有します。ADTのモバイルセキュリティおよび戦略的プロジェクト担当副社長Leah Page(リア・ペイジ)氏によると、盗難の可能性がある場合は、モバイルアプリやADTの5000人のモニターエージェントに報告されるという。

「ADTが製品にもたらす要素について考えると、それはまさにAIソリューションの導入を支援することです」と、ペイジ氏はTechCrunchに語った。「つまり、鳥が通り過ぎるのと、誰かがトラックの荷台に侵入して何かを盗むことの違いがわかるということです。そのような事象が発生すると、ADTに情報が入り、監視員がどう対応すればよいかがわかります。状況に応じて、オーナーや緊急連絡先への通報から、警察への通報まで、あらゆる対応が可能です」。

今後、Canopyは、クルマのハードウェアに統合し、そのクルマのカメラとセンサーに依存して同じ安全機能を実行する別の監視システムをリリースする予定だ。FordがCanopyの最初の統合企業となるが、Canopyのすべての技術をどの自動車メーカーでも利用できるようにすることが目的だ。

「このサービスを顧客にとって本当に意味のあるものにするためには、マルチメーカーで、現在すでに路上を走っているクルマのセキュリティの懸念に対応できるような方法で行う必要がありました」と、FordXのディレクターでCanopyの暫定CEOであるChristian Moran(クリスチャン・モラン)氏はTechCrunchに語った。「私たちは、ターゲットであるトラックやバンなど、無数の車種に対応できる1つのソリューションを検討しています」。

Canopyは当初、高価な貨物を運ぶ大規模な運送会社と、トラックの荷台に数千ドル相当の工具や機器を積んでいて、しばしば盗難の被害に遭う中小企業のオーナーの両方を考えて、商業顧客に焦点を合わせていた。来年早々には、このような顧客が最初のターゲットとなる。しかし、試験運用を通じて、一般消費者向けの使用例も出てくるようになった。

「トラックやバンの荷台に自転車やカヤックを積んでトレイルに出かける人たちから、これらのものは非常に高価なものなので守って欲しいという、非常に大きなフィードバックがありました」とモランは述べた。「さらに、これは当初の機能ではありませんでしたが、試験運用の参加者の多くから、夜間、外が暗いときにクルマの周りをライブストリーミングするのがお気に入りの機能の1つであるという声を聞きました。つまり、誰もいない暗い駐車場に入って、アプリを使って自分のクルマの周りを見ることができることを想像してみてください」。

試験運用の間、Canopyは2つの異なる盗難未遂の証拠をクルマの所有者に渡すことになったとモランはいう。そして、顧客が警察や保険会社と協力するためにCanopyの映像を使うことができると付け加えた。

FordとADTは、このジョイントベンチャーにFordが6300万ドル(約72億円)、ADTが4200万ドル(約48億円)の合計1億500万ドル(約120億円)を投資している。この資金は、英国と米国の製品、エンジニアリング、市場開拓の各チーム全体の雇用に充てられる他、アフターマーケット製品のサプライチェーンと物流を整備し、今後数年間で規模を拡大できるようにする予定だ。

画像クレジット:Ford Motor Company

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Yuta Kaminishi)


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