NFT(非代替性トークン)の世界は、奇妙で、混乱していて、爽快だ。否定派は、大衆文化から永続的な価値をすべて奪おうとする資本に執着した詐欺師であふれていると見ているが、一方で肯定派は、オンラインメディアから実際に価値がどのように創造され、獲得されるかを一変させる新たな技術革命であると見ている。
この1年の間に、機関投資家は2021年まではほとんど検討されなかったNFTへ投資する機会に夢中になり、Dapper Labs(ダッパーラボ)、OpenSea(オープンシー)、Sky Mavis(スカイ・メイヴィス)といったスタートアップ企業の株式投資に数十億ドル(数千億円)を投じている。
投資家による最新のNFT投資では、Pixel Vault(ピクセル・ヴォールト)と呼ばれるスタートアップが注目を浴びている。Pixel Vaultはスーパーヒーローの巨大なNFTコレクションで「分散型Marvel(マーベル)」のような帝国に成長することを目標としている。このNFTスタートアップは、Adam Bain(アダム・ベイン)氏とDick Costolo(ディック・コンストロ)氏の01 Advisors(ゼロワン・アドバイザーズ)とVelvet Sea Ventures(ベルベット・シー・ベンチャーズ)から1億ドル(約115億円)の資金を調達したと、TechCrunchに語った。
Pixel Vaultは、NFTプロジェクトが何千枚ものJPG画像を超えたもっと大きな何かになるのかという実験の最前線にいる。
「Pixel Vaultのプロジェクトは、コミュニティエンパワーメント、分散型ガバナンス、真のデジタルオーナーシップという、Web3の重要な理念を中心に構築されています」と、Pixel VaultのCEOであるSean Gearin(シーン・ギアリン)氏(暗号資産業界ではGFunkという名前で知られている)は、声明の中で述べている。「私たちは、ファンを顧客として見ていません。我々のファンはオーナーであり、ビルダーなのです」。
2021年5月(実際に会社として設立される前)に行われた同社の最初の製品発表では、CryptoPunks(クリプトパンク)の世界のキャラクターが登場するリアルおよびデジタルのコミックブック数千冊が発行された。ユーザーは、短期間でこのコミックのNFTと交換して、Pixel Vault創設者が運営するDAO(分散型自律組織)の一員になることができた。これによりユーザーは、多数のNFTアートワークのコレクションの所有権を得ることができた。その中には、Pixel Vaultコミックのメインキャラクターである、現在の価格で数百万ドルの価値があるCryptoPunksのNFTも多く含まれている。
このPunksのほとんどを提供したのは、@beaniemaxiという偽名の暗号投資家で、彼はこのプロジェクトに最初から資金を援助し、数百万ドル(数億円)のPunksコレクションを提供して、このプロジェクトの可能性について声高に語っていた。彼はここ数週間、自分のフォロワーにプロジェクトを押し付けておきながら、彼の個人的な関与の範囲については透明性が欠けているため、非難を浴びていた。このマイナーな暗号スキャンダルにより、彼はPixel Vaultプロジェクトから離脱することで、同スタートアップへのさらなる反感を避けた。
I’ve never done anything that I didn’t disclose. As an investor I often receive part of NFT sales revenues. I only back teams that I feel have strong chance of success. My track record is great hence my following. To expect perfection isn’t realistic. Some projects/founders fail.
— Beanie (@beaniemaxi) January 24, 2022
私は開示していないことは、何1つしていません。私は投資家として、NFTの販売収益の一部を受け取ることがあります。私は成功する可能性が高いと思われるチームのみを支援しています。私の実績がすばらしいから、私に続こうとする人がいるのでしょう。完璧を求めることは現実的ではありません。プロジェクトやファウンダーの中には失敗するものもあります。
Beanie
Pixel Vaultチームは「Punks Comic(パンクス・コミック)」のリリース以来、コミックの世界観を大切にし、同コミックのベテランアーティストを起用して、スーパーヒーローのNFTを大量に作成してきたが、これをより広いメディア世界に展開したいと考えている。チームは、知的財産権の維持と、コミュニティによる「MetaHero(メタヒーロー)」アートの使用と促進を奨励することのバランスを取ることを考えている。また、146の「Core(コア)」キャラクターのNFTに対する知的財産権を維持しつつ、何千ものジェネレーティブなキャラクターの幅広い再利用を可能にしようとしている。
「(彼らには)分散型Disney(ディズニー)を構築するという使命があります。これは、私の考えでは、経済的には参加しないが、この世界に存在するキャラクターを評価してくれる熱心なファンとの共同創造と共同所有を意味します」と、Velvet Sea VenturesのMichael Lazerow(マイケル・ラゼロフ)氏は、TechCrunchに語った。
CryptoPunksは、ハリウッドをはじめとするさまざまな分野でパートナーシップを展開するために、すでにWMEと代理店契約を結んでいる。
数千もの「MetaHero Generative Identity(メタヒーロー・ジェネレーティブ・アイデンティティ)」の1つの最低落札価格は、現在の価格で1万8000ドル(約200万円)強のETHとなっており、146のCoreキャラクターの中で最も安いものでも30万ドル弱(約3500万円)となっている。
分散型マーベルの構築は、確かにお金以上のものだ。とはいえ、Pixel Vaultはそのコミュニティにおそろしく多くのお金を持っている。このプロジェクトは、生涯取引量が10万ETH近く、現在の価格で約3000億円にも達しているのだ。
画像クレジット:Punks Comic / Pixel Vault
[原文へ]
(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)
- Original:https://jp.techcrunch.com/2022/02/05/2022-02-02-pixel-vault-banks-100-million-in-funding-to-chase-an-nft-media-empire/
- Source:TechCrunch Japan
- Author:Lucas Matney,Hirokazu Kusakabe
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