2022年模型業界8大予測!【趣味な男の欲しいモノと秘密基地】

【趣味な男の欲しいモノと秘密基地】

現在、空前の模型ブームが起きている。コロナ過の巣ごもり需要、さらにはSNSの流行により、改めて模型をじっくり楽しもうとするファンが増えてきたようだ。そこで、発行部数11万部を誇る人気No.1模型誌『月刊ホビージャパン』の副編集長である木村学さんに、最近の傾向をふまえつつ、今年の模型業界について占ってもらった。

*  *  *

昨年はコロナの影響による巣ごもり需要などもあり、プラモデル市場が大きく伸びたと木村さんは振り返る。

「キャラクターモデルのほか、カーモデルや戦車などのスケールモデルまで、多岐にわたるジャンルが好調でした。各社とも、ここ数年で例を見ないくらいの販売数だったと聞いています」

特にガンプラは、かつて〝第一次ガンプラブーム”といわれた頃をしのぐほど。小売店やネットショップから新旧ガンプラが消え、争奪戦となっている。

「ガンプラに関しては急激な人気の高まりで、多くのファンが入手に危機感を持ってしまい、買いだめに走ったことも品不足の原因でしょう。ガンプラは再販もありますが、一度品切れすると、次の機会は数カ月後の可能性もありますからね」

転売行為も問題のひとつとなっていたが、ここ数カ月で状況は変わってきたようだ。

「販売店の方に話を聞くと、最近は行列を作って購入する人の多くは(肌感覚的に)転売目的ではないと。本当に欲しい人が、こぞって購入しているようです」

一方、プラモデルの人気に伴って、工具や塗料といった模型製作道具に対するニーズが高まっていることも見逃せない。

「塗料でも瓶以外にも、缶スプレー、エアブラシシステムなども非常に好調だったようです。おそらく“出戻りのモデラー”たちはもちろん、コロナ過の巣ごもりで模型製作を新たに始めようと思ってくれた人が、非常に多かったんでしょうね」

そんな昨年の動きをふまえ、今年は“買い揃えた模型を作ること”がトレンドになるのではないかと木村さんは予想する。

「“買う”よりも“作る”傾向が強まり、塗料や工具の販売がより好調になると思います。売り上げが伸びれば、その分、開発資金も潤沢になり、塗料などの性能もさらに上がるはずです」

『月刊ホビージャパン』副編集長 木村学さん
1970年、大阪府生まれ。大学生の頃よりプロモデラーとして活躍。『月刊ホビージャパン』のほか『ホビージャパンエクストラ』、『HJメカニクス』など数々の雑誌やムックを担当する

 

 

【TOPIC①】“積みプラ”を作る人の急増に伴い塗料の進化も加速する!?

海外も含めて水溶性塗料の人気が高まっています。臭いのきついラッカー系よりも使いやすいのが魅力。塗料系は今後さらに進化するはずです!(木村さん)

 

▼安心安全!家庭環境に優しい水性塗料

GSIクレオス
「アクリジョンシリーズ」(アクリジョン:各198円/ベースカラー:各330円/リターダー:198円)

木工用接着剤などと同じくエマルジョン系の水性塗料。溶剤の使用を極力抑え、より安全に設計された模型用塗料だ。隠ぺい性もあり、発色も良くなっている。もちろん水性なのでニオイが少なく、乾燥前であれば筆やエアブラシなどの塗装道具を水で洗浄できる。乾燥後もアクリジョン専用ツールクリーナーがあるので安心だ。

 

▼プレミアムな発色がやみつき!高級感たっぷりの仕上がりに

ガイアノーツ
「プレミアムシリーズ GP-09 プリズムブルーブラック」(1100円)

光の加減によってブラックからダークブルーに変化する偏光パールカラーのラッカー塗料。クリアカラーでコーティングすれば、より光沢のある表現に。ツヤ消しにすれば上質なビロードのような質感になるなど、アレンジも可能だ。プレミアムシリーズは貴重な原料を使用することで、今まで表現できなかった色を表現可能な特別なシリーズだ。

 

【TOPIC②】漆から和柄の模様まで塗り方のオリジナル化が進む!

立体が2Dのように見える“アニメ塗り”など、模型の塗装にはさまざまなトレンドの移り変わりがある。最近の流行は次のステージへと進み始めているようだ。そのひとつとして木村さんが例に挙げたのは“和柄”などをモチーフにする“オリジナル塗装”だ。

「着物のような模様を表現するなど、模型の表面をキャンバスとし、そこに絵を描くような感覚で塗装する人もいます。漆を塗るなど、新しい表現を追求する人も増えてきました」

SNSの発達により、技術や作品をTwitterなどで発信できるようになってきたが、ネット時代において情報が玉石混淆となってきたことを木村さんは危惧している。

「今、模型に関しても、多くの情報がネットにアップされていて、便利な反面、中には間違ったものも散見されます。今は“出戻り組”や初心者が模型を作る際、インターネットや動画配信を参考にすることも増えていますよね。間違った情報を信じた結果、思ったとおりに作れなくて模型をやめてしまうのが心配で、そして何より、ケガや事故などがあってはいけません。そこで『月刊ホビージャパン』の編集部では現在、模型のハウツーに特化したネット番組をリスタートする準備を進めています。模型の正しい情報をSNSなどで提供し、模型づくりの楽しさや魅力を伝えていく予定です。それをきっかけに模型に興味を持った人が雑誌を手にして“模型の沼”にハマってくれるといいですね」

 

▼新しい塗装スタイルを提案するエアブラシの新製品も登場

SNSの発達により、コンテストなどがなくても、自分で作品を発信できるようになりましたよね。今後もいろんな表現方法が増えてくると思います(木村さん)

PROFIX
「PROFIX Tech Liner 充電式エアブラシ TS1-B02 ハンドピース(TH-B02)付き充電式コンプレッサーセット」(1万1080円)

エアコンプレッサーとハンドピースが一体となったエアブラシ。USBによる充電式で、30〜40分ほど連続使用できる。塗料カップやスポイト、クリーニング用ブラシなど付属のオプションも充実しており、エアブラシ初心者が使用しても安心だ。

▲葛飾北斎風ジャパネスクカラー ※出典『月刊ホビージャパン』2022年3月号 ▲日本伝統工芸の“漆塗り”SDガンダム ※出典『月刊ホビージャパン』2022年3月号 ▲ネイルデコシールで晴れ着をまとう ※出典『月刊ホビージャパン』2022年3月号 

【TOPIC③】3Dプリンターの高性能化で一体成型の緻密な商品が続々

昨今、模型の設計はデジタルモデリングが主流だ。その傾向は大手メーカーのみならず、アマチュア、プライベーターも含め、さらに加速すると木村さんは予想する。

「今までアナログで原型を作っていたベテランの原型師も、デジタルモデリングを習い始めている人が多いです。かつての3Dプリンターといえば高額でしたが、最近はリーズナブルな価格で性能のいい海外製が続々と上陸しています。低価格な3Dプリンターでも表面の仕上がりがきれい。ガレージキットでも、アマチュアディーラーのデジタルモデルの比率がもっと増えるでしょう」

デカールやエッチングパーツをはじめ、ディテールアップのためのカスタムパーツを幅広く用意するメーカーも増えてきている。中でもここ数年は、3Dプリンターで出力する改造パーツも多いそうだ。

「昔はレジン樹脂やメタル製が主流でしたが、3Dプリンターによる出力品が増えてきています。ロボットの拳やバイクのタイヤをはじめ、今年はさらにさまざまなデジタル出力パーツが増えるのではないでしょうか」

 

▼造形作家K氏が手掛けたAndroidシリーズ第2弾

海洋堂さんのデジタルガレージキットはクオリティが高いです。原型もデジタルとアナログのハイブリッドが増えるでしょう(木村さん)

海洋堂
「デジタルガレージキット Android HB02」(2万5300円)

海洋堂の造形作家育成プロジェクト「ワンダーショウケース」に選ばれたK氏によるAndroidシリーズ。デジタル出力の強みを生かし、人体の美しさとメカ的な要素を合わせた複雑な造形をプロダクトとして成立させている。

©2021 K All Rights Reservd.

 

■アジア圏でガンプラ人気上昇中!

『月刊ホビージャパン』副編集長の木村さんは、プラモデルを“作る”技術は過渡期にきているとも感じているようだ。

「今、製作技法は多くの技術革新を経て“踊り場”にきていると思います。例えば塗装は、エアブラシでグラデーションをきれいに表現するMAX塗り、多彩なウェザリング技法、そして昨今のアニメ塗りと、時代による流行とともに表現の幅が広がってきました。それらの技術が、ある意味で、行き着くところまで到達した今、新しい表現方法が生まれつつあります」

そんなプラモデルの製作において、大きな影響を持っているのが、何といってもガンプラだ。

「日本におけるキャラクター模型のカテゴリはガンプラが支え、けん引してきたといっても過言ではありません。ガンプラは40周年を超えて、ファンの中枢となる第一次ガンプラ世代は今、50〜60代になりました。その多くは、各業界で活躍されてきた人たちであり、自身の仕事や趣味で身に付けてきた知識や技術を、ガンプラで表現する人が増えてきているんです。ロケットの技術者が、ロケットに付いていそうな仕掛けを本気で組み込むといった作例も見かけます。なお“自分の知見をガンダムに生かす”という点では、2020年に登場した横浜の“動く1/1ガンダム”にも同じことがいえます。設計や開発に関わった人は、ほぼ全員、ガンダムやガンプラのファンですからね」

今春、福岡県の商業施設においてガンダム立像が新たに建立されるのに伴い、ガンダムに対する注目が再び集まるのではないかと、木村さんはみている。

「立像の題材となる“νガンダム”は、人気のある機体ですからね。新しいガンダム立像をきっかけに、ガンダムおよびガンプラに興味を持つ人が、再び増えるのではないでしょうか」

また現在、中国・上海に1/1のフリーダムガンダム立像が制作された。海外でもガンダムやガンプラの人気がある。

「現状、ガンプラに関する需要がアジア圏で大幅に増加。昨年は東南アジア初進出となるTHE GUNDAM BASE THAILANDがバンコクにオープンしました。なぜかプラモデルって、あまり製作環境に適していない国や地域ほど、人気が出ることがあるんですよね。例えばタイは、亜熱帯なんで湿度も高く、塗装に向かないはずなんですけど。もしかしたら厳しい環境のほうがモデラー魂に火がつくのかもしれません(笑)。海外市場はまだまだ伸び代があると考えています。今年はNetflixでハリウッド版ガンダムも配信されますし、次は、欧州や北米でも人気が出るチャンスだと思います」

 

【TOPIC④】実物大立像&新施設オープンで「νガンダム」ブームが来る!?

実物大ガンダム立像はガンプラのブレイクスルーでした。実物大を体感できることは模型表現のステップアップにつながりますからね(木村さん)

 

▼『ガンダムパーク福岡』2022年4月開業予定

▲今年4月、ららぽーと福岡にオープン予定の複合ガンダム施設。グッズはもちろん、体感型アクティビティも楽しめる

 

▼実物大νガンダム立像のエントリーモデル

「ENTRY GRADE 1/144 RX-93ff νガンダム」(1430円)

作りやすさを徹底追求したENTRY GRADEのνガンダム。ニッパーなしでも組み立てが可能だ。エントリー(入門モデル)ながら、可動やプロポーション、色分けとクオリティはハイグレード級。象徴的なロングレンジ・フィン・ファンネルも付属する。

 

▼実物大νガンダム立像の本物感を追求。MSのリアルが見える!

「RG 1/144 RX-93ff νガンダム」(4950円)

緻密なパーツ構成でMSの本物感を追求するRG(リアルグレード)モデル。立像と合わせて細かな装甲分割や色分けがなされ、細部の情報量も多い。関節可動と連動して装甲がスライドする「マルチリンク・ギミック」なども見どころ。

 

▼デフォルメだって伊達じゃない!

「BB戦士 RX-93ff νガンダム」(1650円)

デフォルメされた姿がカッコかわいい。テトロンシールと成形色でカラーリングを再現。パーツの表裏を変更することで瞳の有無を選択できる。

©創通・サンライズ

 

【TOPIC⑤】2021年に売れたバイク模型とともに精巧なクルマのプラモデルにも注目!

ニッチなバイクモデルも、昨年は人気でした。フェアレディは窓枠までパーツ分割されており、タミヤの技術力に驚かされます(木村さん)

 

▼世界的人気を誇る日本製傑作スポーツカー

タミヤ
「1/24 NISSAN フェアレディ 240ZG」(4620円)

世界的人気を誇るフェアレディZの中でも、初代S30型の最上級モデルとなる240ZG。ロングノーズ&ショートデッキのファストバック型クーペフォルムは、まさに実車そのもの。窓枠やヘッドランプカバーのリムはメッキ仕様の別パーツなので、ボディとの塗り分けをしなくても美しく仕上がる。

 

▼ブルー&シルバーのMotoGPチャンピオンモデル

タミヤ
「1/12 チーム スズキ エクスター GSX-RR '20」(4400円)

スズキ創立100周年の2020年に、MotoGPチャンピオンを獲得したロードレーサーをキット化。1000cc直列4気筒エンジンを精密に再現でき、空力を追求したカウル類など、美しいフォルムを楽しめる。カウルはビス止めで完成後も脱着可能だ。カウルの塗り分け用マスクシールとスタンドが付く。

 

【TOPIC⑥】懐かしい“トレインボット”が復活!トランスフォーマーから新ライン登場

いわゆる合金トイやダイキャスト製ロボットは各社製品とも目覚ましい進化が見られます。今や国内外の各社が鎬を削る、ホビーのホットスポットです(木村さん)

 

▼往年ファンが胸アツな“0系新幹線”のロボット

タカラトミー
「トランスフォーマー MPG-01 トレインボットショウキ」(1万9800円)

「GATTAI(合体)」「GIANT(巨大化)」「GREAT(グレート)」をテーマにした新ライン「トランスフォーマーMGP」の第1弾。東海道新幹線0系からロボットに完全変形する。トレインボットゲツエイなど、今後発売予定のトレインボット5体との合体で、巨大ロボット「ライデン」が完成だ。

©TOMY JR東海承認済 JR 西日本商品化許諾済

 

▼ブルートレインからロボットへ変形!

タカラトミー
「トランスフォーマー MPG-02 トレインボットゲツエイ」(1万7600円)

MGPシリーズの第2弾。EF65形電気機関車(ブルートレイン)からロボットへの完全変形を実現した。武器、パンタグラフ、ジョイントパーツが付属する。レールを使って、鉄道模型のようなディスプレイも可能だ。巨大ロボット「ライデン」合体時は右脚のパーツになる。

©TOMY JR西日本商品化許諾済 ©東映

 

【TOPIC⑦】往年ファンの物欲を刺激する豪華仕様の超合金にも注目!

最近は豪華仕様の商品が増えています。ユーザーの年齢層が上がり、子供の頃、購入できなかった超合金の最新モデルなどはつい買ってしまうようです(木村さん)

 

▼超合金魂史上最大級!子供の頃の夢が今叶う

BANDAI SPIRITS
「超合金魂 GX-100 ガイキング&大空魔竜」(8万2500円)

超合金魂シリーズの記念すべき100体目。大空魔竜は全長約75cmという超合金魂史上最大級の大きさを実現。大空魔竜に内蔵された音声ICにより、番組主題歌を再生可能だ。3機のマイクロポピニカ仕様の恐竜メカが付属。

©東映アニメーション

 

【TOPIC⑧】SDGsを推進する観点からカプセルトイのエコ化も加速する

SDGsに対する関心の高まりで、最近のカプセルはエコな工夫も。カプセルを商品の一部として有効活用するアイテムもありますね(木村さん)

 

▼空のカプセルを再資源化!ホビーもエコな時代に

バンダイ
「リサイクルエコカプセル」

現在、バンダイの一部のガシャポンは空カプセルを回収し、それを原材料とするカプセルを使用。その一方、話題となったダンゴムシをはじめ、カプセル自体のない商品の開発も進んでいる。ホビーにもエコ意識の高さが不可欠だ。

「ガシャポン バンダイオフィシャルショップ」や「ガシャポンのデパート」などのショップには回収ボックスを設置。回収量は1年で約20トン、カプセル約400万個分の見込み。

>> 【特集】趣味な男の欲しいモノと秘密基地

※2021年2月4日発売「GoodsPress」3月号34-37ページの記事をもとに構成しています

<取材・文/桑木貴章>

 

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