食用コオロギで“タンパク質危機”に挑む! 徳島大発グリラス、コオロギ量産化・品種改良加速へ

急激な世界人口の増加が予想されるなか、牛・豚・鶏といった既存畜産によるタンパク質供給が追いつかなくなる、いわゆる“タンパク質危機”が発生すると言われています。

このタンパク質危機を見据え、コオロギ食の普及に注力しているのが徳島大学発ベンチャー 株式会社グリラス(以下、グリラス)。同大学の30年におよぶコオロギ研究を基礎とし、食用コオロギの研究や生産、商品開発、販売までを一貫して行っています。

そんな同社はこのたび、Beyond Next Ventures株式会社らより、約2.9億円の資金調達を実施。累計調達額は、約5.2億円となりました。

クッキーやカレーなどを展開中

まずは、グリラスの事業内容と展開について紹介しておきましょう。

同社は、食用コオロギの品種改良・生産・原料加工・商品開発・販売を手がけるフードテックベンチャー。自社EC「グリラスオンライン」では、クッキーやチョコクランチ、カレーやパンといった商品をオリジナルブランド「C. TRIA(シートリア)」として展開しています。

また「C. TRIA」に使用しているコオロギ原料のブランド「C. TRIA Originals(シートリアオリジナル)」を2021年12月に設立しました。

2020年12月の資金調達(総額2.3億円)により、徳島県美馬市にある廃校(旧芝坂小学校)を生産・加工を担う拠点として整備し、株式会社ジェイテクトと共同開発する食用コオロギ量産のための自動生産システムを導入。既存のファームと合わせ、2022年2月時点で年間10トン以上のコオロギパウダーを生産する体制を確立しました。

また、2021年7月には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業に採択。これにより、徳島県美馬市にある廃校(旧美馬市立切久保小学校)を整備し、コオロギの品種改良を目的とした研究施設を立ち上げました。

食品ロスを餌にする食用コオロギ

ではなぜ、“コオロギ食”なのでしょう?

今後発生し得るタンパク質危機への解決策として、FAO(国際連合食糧農業機関)は昆虫食を推奨しています。その理由としては、昆虫のタンパク質生成に必要な餌や水の量が既存の畜産と比べて圧倒的に少ないこと、温室効果ガスの排出量が少なく、環境負荷の低いタンパク源であることが挙げられるでしょう。

その昆虫のなかでも雑食であるコオロギは餌の制限が少なく、世界中で発生している食品ロスを餌として使用できます。つまり、捨てられるはずの食品ロスを新たなタンパク質へと循環させられるというわけですね。

こういったコオロギの特徴から、グリラスは食用コオロギを循環型の食品“サーキュラーフード”と位置付けて、研究・生産・商品化などを行っています。

追いつかない生産、アレルギー対策も

しかし、食用コオロギの普及にはまだまだ課題が。

たとえば、年間10トン以上のコオロギパウダーを生産する体制があるにもかかわらず、その生産は追いついていないといいます。また、現在は野生の品種を採取して養殖しており、大量生産のための品種改良を加速する必要があるようです。加えて、昆虫は甲殻類に類似したアレルギーを引き起こす可能性があるため、低アレルゲン品種の確立も必要だといいます。

そして、タンパク質危機やその解決策としての昆虫食について、生活者の認知・理解の推進も不可欠。自社商品の販売促進はもとより、市場の創出・拡大につながるPR・広報・マーケティング活動も必要なようです。

こういった課題解決に向けて施設・人員への投資を拡大すべく約2.9億円を調達したグリラス。

既存株主であるBeyond Next Ventures株式会社、HOXIN株式会社、株式会社産学連携キャピタルらに加え、いよぎんキャピタル株式会社、近鉄ベンチャーパートナーズ株式会社、食の未来ファンド、地域とトモニファンドを新規株主として迎えています。

PR TIMES(1)(2)(3

(文・Higuchi)


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