Google Playがサードパーティによる課金オプションを試験的に導入、まずはSpotifyから

アプリストアとその手数料の仕組みをめぐってグローバルで規制が強化されつつある中、Google(グーグル)は米国時間3月23日、同社が「user billing choice(ユーザーの課金選択)」と呼ぶ機能を検討するためのパイロット事業のローンチを発表した。このパイロットでは、Spotifyを皮切りに、参加した少数の開発者が、Google Play自体の課金システムに加えて、独自の課金方式を提供できる。Googleはすでに韓国において、新たな法令に従って同様のシステムを提供しているが、複数の市場で試すのはこれが初めてだ。

SpotifyによるとこのパイロットはSpotify Premiumが利用できるすべての市場で展開し、全世界で184の市場になるという。しかしGoogleは、パイロットは選ばれた市場で行い、その後の結果に基づいて作り上げていく、どの地域から始めるかまだ決めていないとしている。

Spotifyはパイロットのスタートパートナーとして、開始時には独自の課金システムとGoogle Play自身のシステムの両方を導入する。Googleは今後の参加開発者をまだ発表していないが、Spotifyは「グローバルな実績を持つ世界最大のサブスクリプション開発者であり、多様なフォームファクタのデバイスに統合されている点」でも、この取り組みの「最初のパートナーになって当然」だという。

もちろんSpotifyは、アプリストアの既存の課金システムと構造に対する規制の変更を望む大手開発者の1つであり、この問題について議会で証言し、ロビー活動にも参加そしてAppleやGoogleなどの企業に既存のアプリストアに代わるものを求めるOpen App Markets Act(オープンなアプリの市場法)など、アプリストアの関連法案を支持した。

この争いは、顧客とのより直接的な関係を求めるためだけでなく、大半はお金の問題でもある。今日のアプリストアはサブスクリプションやアプリ内購入を自分のプラットフォーム上で提供しているアプリに対し、15〜30%の手数料を課している。Googleが代替課金システムの許可を要求されている韓国の例でも、自らの課金システムにユーザーを誘導した開発者は、手数料が4%低くなるだけだ。

コメントを求められたSpotifyは、今度のパイロットでGoogleに支払う手数料について明かさず、合意事項は秘密だという。しかし同社の広報担当者は、その商業的条件がSpotifyの「公正規準」を満たすとほのめかしている。

Googleも手数料の詳細を明かさなかった。しかし同社によると、韓国のようなユーザー選択課金でも、ユーザーがどの課金システムを選んだかに関係なくサービス料金は課金されるという。

この新しいシステムは発表の時点ではまだ利用できず、Googleのプロダクトのチームとエンジニアリmグのチームが今後数カ月かけて新しいユーザー体験を作っていくものだ。本稼働後、ユーザーはSpotifyで2種類の課金オプションが並んでいるのを目にするだろう。ユーザーがSpotifyの決済方法を選んだら、Spotify自身の課金システムとそのユーザーインターフェースでチェックアウトを続ける。Google Play Billingを選んだら、Google Play BillingのUXへ進むことになる。

Spotifyのサブスクリプションに関するユーザーとのコミュニケーションは、変わらずSpotifyの責任だが、Google Play Billingを選んだユーザーは自分のSpotifyのサブスクを、以前と同じくGoogle Play Store Subscription Centerの中で見ることができる。

Spotifyによると、同社はパイロットの開始を2022年後半と予想している。同社としてはそれを、SpotifyのPremiumサブスクリプションが利用できるすべての市場で提供したいという。

Spotifyのフリーミアム事業担当チーフであるAlex Norström(アレックス・ノルストレム)氏は声明で次のように述べている。「Spotifyは今、アプリのデベロッパーにイノベーションの自由を保証し、公正な条件で競合できるための数年におよぶ計画に取り組んでいます。今回、Googleと提携して決済の選択制と、開発者およびユーザーとインターネットのエコシステム全体の自由を探求できることに興奮しています。私たちが共同で行う事業で、業界全体の利益となる道を照らすことに期待したい」。

Googleによると、このパイロットはまだ初期的な段階であり、Spotifyとの今後の経験を通じて細部をつめていきたいという。Spotify以外のパートナーはまだ明かさないが、Googleによると、その目標は国や開発者のタイプが変わっても共通して利用できる課金選択の方式を完成させることだという。多様な国や開発者のタイプという言葉には、今後は小企業もパイロットのテスターになることが含まれているだろう。同社によると、パイロットは数カ国で一定数の開発者からスタートして、国も開発者も増やしていくという。

すでにGoogleはこの変更以前にGoolge Playの課金システムを利用する開発者の年商が100万ドル(約1億2000万円)以下の企業に対して、Appleにならって手数料を、30%から15%に下げている。同社によると、これによって開発者の99%が、15%以下のサービス料金になったという。

Googleのプロダクト管理担当副社長Sameer Samat(サミール・サマット)氏は、次のように述べている。「Androidは常に、オープンであることとユーザーの選択を重視してきました。今回のステップはモバイルのアプリストアにとって重要な節目であり、Spotifyよりも優れた最初のパートナーは思い浮かびません。同社は、私たちと同じく選択を重視し、エコシステム全体の健全さのためにAndroidとGoogle Playへの投資の継続が重要であることを理解しています。これはエキサイティングな最初の一歩であり、今後、新たなパートナーを加えて学びを深め、最初のモデルをAndroidのプラットフォーム全体に向けて拡張していきたい」。

画像クレジット:SOPA Images/Contributor/Getty Images

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)


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