先日開催されたモーターサイクルショーでお披露目され、バイクファンの心を掴んだホンダの新型「ダックス125」。同社の「スーパーカブ」系に搭載される横型エンジンと呼ばれるパワーユニットを採用し、自動遠心クラッチを採用しているので、AT限定免許でも運転でき、バイク乗りの裾野を広げてくれそうなモデルです。
「ダックス125」は1969年に登場した「ダックスホンダ」を現代風に蘇らせたモデルですが、ホンダにはこれ以外にも横型エンジンを搭載した魅力的なレジャーバイクがいくつもありました。そうしたバイクを振り返りつつ、次に“復活”してほしいモデルを考えてみました。
■原付二種となって復活した「ダックス」
▲1969年式「ダックスホンダ」
新型のルーツとなった「ダックスホンダ」は1969年の発売。当時の価格は6万6000円(!)でした。車名の由来ともなったダックスフンドをイメージした車体設計で、T字型のバックボーンフレームを採用。フレームに内蔵されたガソリンタンクは、車体を横にしても漏れない作りで、乗用車のトランクにも積めることをうたった文字通りのレジャーバイクでした。
▲1995年式「ホンダ ダックス」
ハンドルも折り畳める設計で、幅広のタイヤや前後に長いシートを採用。長めのホイールベースとリラックスしたライディングポジションで人気を集め、1981年に一旦生産を終了したものの、1995年には復活販売されるほどでした。ちなみに、このときの車名は「ホンダ ダックス」で、価格は19万8000円となっていました。
▲2022年式「ダックス125」
70ccモデルも存在しましたが、当時の主力は50ccの原付一種でした。しかし、新型の「ダックス125」は原付二種。自動車の免許で乗れないのは残念ではありますが、動力性能やバイクとしての楽しさは、圧倒的に125ccのほうが上です。長いシートでタンデムが楽しめるようになったのもポイントですね。全長は初代モデルの1510mmに対して1760mmと250mmも大きくなっていて、倒立フォークに前後ディスクブレーキと、装備面でもスキのない仕上がりです。初代モデルは、すでにバイクを持っている人のセカンドバイク的な位置づけでしたが、新型はメインバイクとしても十分な存在感といえますね。
■レジャーバイクといえば「モンキー」
▲モンキーシリーズのルーツとなった「Z100」(1961年式)
レジャーバイクの代名詞的な存在が「モンキー」。当初は、ホンダが経営していた遊園地「多摩テック」の遊具として開発されたというのは有名な逸話です。この「Z100」というモデルをベースに、輸出向けの「CZ100」が作られ、好評だったために1967年に国内向けの初代モデル「Z50M」が発売されました。
▲1967年式「Z50M」
初代モデルはサスペンション機構のないフルリジッドでしたが、モデルチェンジがされていく中でフロント、リアともにサスペンションを搭載するように。当初は2.5PSだった最高出力も徐々に高められ、最終的には3.4PSまで高められました。
▲2017年式「モンキー50周年スペシャル」
2007年には排ガス規制に対応できず、一旦生産が終了しますが、2009年には燃料噴射をインジェクション式として復活。2017年の50周年記念モデルを最後に、半世紀におよぶ歴史を閉じることになります。
▲2021年式「モンキー125」
しかし、翌2018年には原付二種モデル「モンキー125」として復活を遂げます。最高出力は9.4PSと飛躍的に高まり、車体も大型化。前後ディスクブレーキに倒立フォークと装備も充実し、まったく新しいモデルに生まれ変わりましたが、一見しただけで「モンキー」とわかるデザインとされているのはさすがです。2021年にはミッションが5速化され、さらに魅力を増しています。
■「ゴリラ」「モンキーBAJA」の復活に期待
すでに新型に生まれ変わっている「モンキー」ですが、個人的に復活してほしいと思っているのが、そのバリエーションモデルです。
▲1978年式「ゴリラ」
「モンキー」の派生モデルとして有名なのは1978年に登場した「ゴリラ」です。9Lと大容量のタンクを装備し、シートも大型化。その名の通り「モンキー」に対して大柄になっています。前後にキャリアも装備されていました。タンクを大きくする程度だったら、それほどコストもかからなそうですし、ニーグリップがしやすいというメリットも大きいので、ぜひ「ゴリラ125」を登場させてほしいところです。
そして記憶に残っている人が多いであろうバリエーションモデルが「モンキーBAJA(バハ)」。
▲1991年式「モンキーBAJA」
登場したのは1991年で、当時人気の高かったバハ・カリフォルニア半島の砂漠を疾走するレース“BAJA1000”に参戦していたマシンをイメージした外装をまとっていました。2眼タイプのヘッドライトが愛らしく、サイドカバーなどのデザインもオフロード車っぽくて個人的にも好きなモデルです。現在“BAJA1000”に参戦しているマシンをイメージすると、このデザインにはならないかもしれませんが、砂漠を走るアドベンチャーマシン的な派生モデルも面白いと思います。
また、レーサーレプリカブームが盛り上がっていた頃に登場した「モンキーR」も忘れられないモデルです。
▲1987年式「モンキーR」
「モンキー」のバリエーションモデルではありますが、ツインスパータイプのフレームを採用し、タンクやシートもオリジナルのものを採用していました。ハンドルはセパレートタイプで(後にアップハンドルの「モンキーRT」も追加)、戦闘的なスタイル。ここまで手を掛けた派生モデルは難しいかもしれませんが、こういうスポーツタイプのコンパクトなマシンもラインアップされていてほしいと思ってしまいます。
▲1988年式「モンキーRT」
■アウトドアシーンで活躍しそうな「モトラ」
▲1982年式「モトラ」
現代の技術で復活してほしいと強く感じるのが1982年に発売された「モトラ」です。50ccクラスとは思えないようなインパクトのある頑丈そうな車体は、今見ても斬新。こういうバイクにキャンプ道具などを積んでツーリングに出かけたいと思う人も多いのではないでしょうか。
大型の前後キャリアはフレームマウントとされ、重い荷物を積んでもハンドリングに影響がないように配慮。ミッションは3速ですが、さらに低速向けのサブミッションを備え、約23度の登坂力を持つ本格的なレジャーバイクでした。125ccエンジンで復活させれば、さらに高い走破性を実現できそうです。
■デザインの完成度が高かった「ソロ」
▲2003年式「ソロ」
21世紀になって登場した「ソロ」も個人的には復活を期待したいモデル。「エイプ」や「ズーマー」などの人気モデルを開発したホンダ「Nプロジェクト」の第4弾モデルで、クラシカルなシルエットが記憶に残っています。前後18インチホイールにシングルタイプのサスペンションを採用し、125ccエンジンにディスクブレーキで蘇ったら走りも期待できそう。ほかに似たもののない完成度の高いデザインだと思っているので、ぜひ復活を検討してもらいたいところです。
■アメリカンタイプの「ジャズ」にも期待
▲1986年式「ジャズ」
レジャーバイクとはちょっと違いますが、復活を期待したいのがアメリカンタイプの「ジャズ」です。1986年に発売され、50ccながら、長くキャスターの寝たフロントフォークとティアドロップ型のタンク、それにワイドなタイヤを履くリアのミラードホイールなど、本格的な装備を誇っていました。最高出力は4PSで非力な印象は拭えませんが、現代の125ccエンジンで復活したら面白そう。近年は「レブル」シリーズが人気を集めているので、「レブル125」として登場したら人気を集めそうです。
* * *
かつては50ccクラスに多くの面白いモデルが揃っていたんだと実感させられるホンダのレジャーバイクシリーズ。現在は125ccクラスに舞台が移っていますが、このクラスだからこそ復活したら面白そうなモデルがいくつもあります。かつてのように個性的なモデルが増えてくれば、125ccクラスはさらに盛り上がることは間違いありません。
<文/増谷茂樹>
増谷茂樹|編集プロダクションやモノ系雑誌の編集部などを経て、フリーランスのライターに。クルマ、バイク、自転車など、タイヤの付いている乗り物が好物。専門的な情報をできるだけ分かりやすく書くことを信条に、さまざまな雑誌やWebメディアに寄稿している。
【関連記事】
◆タフで荷物が積める頼れる乗り物!奥深い「商用バイク」の世界
◆「ディオ」「ジョグ」「セピア」一世を風靡した原チャリは今どうなった?
◆「ZOOMER」「BW’S」「VOX」いま見ても乗りたくなる個性派原チャリ5選
- Original:https://www.goodspress.jp/columns/443298/
- Source:&GP
- Author:&GP
Amazonベストセラー
Now loading...