定番シュラフ「バロウバッグ」もシームレスに!「ダウンハガー」と何が違う?

寝袋の保温性は、中綿の質や量だけでは決まりません。実は縫い目がポイントだったりするんです。

というのも縫い目で中綿が潰れるとあたたかい空気を含むことができません。ふっくら嵩(かさ)があることで、空気という断熱材が機能するんです。

そのため寝袋メーカーは中綿を瓦葺き構造にしたり、二層にしたり、隔壁を設けて厚みをそろえたり、いろいろな工夫を生み出しています。

各社、新構造の開発は頭打ちかと思われた矢先、モンベルが表に縫い目が見えない“シームレス構造”の寝袋を発表しました。2020年デビューの「シームレス ダウンハガー」です。

隔壁でダウンの偏りを抑えるのではなく、スパイダーヤーンという細い糸にダウンをからませるという新発想で業界を湧かせことは記憶に新しいですね。

あれから2年。化繊中綿“エクセロフト”を用いる「バロウバッグ」シリーズにもシームレス化した「シームレス バロウバッグ」が誕生しました。いったい「シームレス ダウンハガー」とは何が違うんでしょうか?

 

■1年を通して使える#2で比較

モンベルの寝袋は番号によって快適温度、使用可能温度がわかります。

同じ番号であれば化繊モデルもダウンモデルもほぼ同等なのですが、公表値の差が少ないのが「#2」なので、これで比較してみましょう。

「シームレス ダウンハガー800#2」の快適温度は0℃、使用可能温度は-5℃で、「シームレス バロウバッグ#2」は快適温度0℃、使用可能温度は-6℃。

どちらも冬キャンプや雪山登山で使えるモデルです。

▲上が「シームレス ダウンハガー800#2」(4万1800円)、下が「シームレス バロウバッグ#2」(1万8150円)

名前のとおり、どちらも表面に縫い目が見えません。

並べてみたところ、バロウバッグのほうが大きくふっくら。触った感じもバロウバッグのほうがコシがあります。一方のダウンハガーはしなやかですがくたっと少々頼りない感じ。

これは中綿の違いもありますが、表生地の違いも関係しています。

バロウバッグの表生地は30デニール・スーパーマルチ・ポリエステル・タフタで、ダウンハガーのほうは10デニール・バリスティック エアライト ナイロン・タフタ 。そもそもの繊維の細さと密度が違うのですから、肌触りの違いは当然です。

また、モンベル独自の中綿“エクセロフト”は繊維を互いに固着させていて、ダウンのように大きくふくらんだりはしませんが、汗などで湿気を帯びてもへたることはありません。

ダウンハガーに封入されているダウンは、あたたかい空気を抱くことで羽毛が大きく広がりふっくらします。写真のように人が入っておらず、冷たい空気の中ではぺしゃんこになるのは当然です。

▲「シームレス バロウバッグ」の内側

ファスナーを開いてみました。内側に糸ゴムを斜めに装備してストレッチ性を持たせているのはバロウバッグ、ダウンハガーどちらも同じ。

ですが、ダウンハガーは生地に糸ゴムを縫い付けただけなので伸縮率は最大135%、バロウバッグは中綿を縫い付けているので伸縮率は最大124%と微妙にストレッチ性能に違いが見られます。

とはいえ、首元のバッフル、ファスナー部分の中綿入りフラップ、勝手に開かないファスナーなど搭載されている機能はほぼ同じ。

 

■収納サイズで選ぶか、コスパで選ぶか

基本的な機能、構造は同じでもやはり中綿の違いはでかい!

▲ダウンハガーの収納サイズはφ15×30cm(容量4.7L)で703g、バロウバッグはφ20×40cm(容量11L)で1479g

バロウバッグはダウンハガーに比べ、収納サイズと重量はほぼ倍です。

けれども価格はダウンハガーの半額以下! 保温力が同等だから、クルマ移動のキャンプではバロウバッグのほうが断然オトクです。家族分そろえるとなると、ダウンハガーでそろえるのはなかなか厳しいものがあります。

コスト面だけでなく、メンテナンスの簡便さ、そして水で濡れても絶望的な冷えとなりにくいという利点も見逃せません。

最後に、廃盤となった旧モデルの「バロウバッグ#2」(φ20.5×41cm、1554g、快適温度2℃/使用可能温度-4℃)と「シームレス バロウバッグ」(φ20×40cm、1479g、快適温度0℃/使用可能温度-6℃)、そしてシームレスじゃない「ダウンハガー650#2」(φ17×34cm、928g、快適温度-1℃/使用可能温度-7℃)を比べてみましょう。

スペックを比較すると、あきらかに軽くなり、シームレスじゃないダウンハガーの保温力に肉薄していることがわかります。

▲モンベルホームページより

新型バロウバッグは中綿が二層になっています。

旧モデルのバロウバッグは瓦葺きのように、中綿をとめた縫い目に別の中綿がかぶさるような構造。素材を見直したこと、そして縫い目が少なくなったことも保温性アップと軽量化に貢献しているのでしょう。

たかが縫い目ですが、されど縫い目。

これまでは多少高くても重量や収納サイズの差でダウンハガーを候補にしていた人も、シームレス化により化繊モデルの性能が高まったことで、バロウバッグも有力な選択肢になってきそうです。

>> モンベル

 

<取材・文/大森弘恵 写真/田口陽介>

大森弘恵|フリーランスのライター、編集者。記事のテーマはアウトドア、旅行、ときどき料理。Twitter

 

 

 

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