色プラだけど塗装してリアルな質感の船体が完成!【達人のプラモ術<しんかい6500>】

【達人のプラモ術】
バンダイ
エクスプローリング・ラボシリーズ

1/48 しんかい6500
03/05

戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。

3回目を迎えたバンダイ「1/48 しんかい6500」の製作。今回も船体の製作を進めていきます。外装パーツを塗装、さらには耐圧球に装備されたハイビジョンカメラやライトといった観測機材、船体後部の主推進スラスターを取り付けて深海潜水艇らしい姿に仕上げていきます。

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。

 

■色プラだけど塗装でよりリアルを追及する

前回は船体内部のシンタクチックフォームやバッテリーといった内部構造を製作しましたが、今回は外装を製作進めていきます。外装パーツは実物のパネルラインに沿って分割されているので、合わせ目を消すといった作業は不要となっています。

一般的なプラモデル(スケールモデル)は、大抵は塗装を前提としているので白やグレー、もしくは代表的なイメージ色のプラスチックで成型されています。でも本キットは色プラ(バンダイが開発した多色成型機と呼ばれる機械を使い、パーツが実物に近い色に多色成型されている)なので、塗装しなくても実物に近いに雰囲気で仕上げられます。ガンプラモデラーには色プラはお馴染みですよね。色プラは手軽にプラモデルを楽しみたいユーザーにとって塗装というハードルを下げてくれました。

でも、今回は色プラで成形されたパーツを全て塗装しています。

 

■色プラを塗装する意味

塗装というと色を塗る…まぁ実際そういうことなんですが、プラモデルの塗装は質感の再現の手段と思ってください。素材のプラスチックを金属や木のように見せる。以前制作した戦車のウエザリング(汚し塗装)も質感の再現です。要は“らしさ”を再現するためのものだと思っていただければいいと思います。

今回製作する「しんかい6500」の船体を覆う外装パーツは樹脂製なので、質感はぶっちゃけ塗装しなくてもOK!って感じなのですが、そこはそれ、塗装することで、よりリアルな質感と雰囲気を再現できるんです。またカメラやライトといった観測機器のパーツは色プラでも再現し切れていないので、塗装でより細かく塗分けて仕上げています。

▲船体の外装パーツはツヤありの白で塗装。大きめの段ボールなどにパーツをテープ等で固定してエアブラシで塗装している。パーツを別々に塗装すると、同じ塗料を使っていても微妙にトーンが変わってしまうことがあるので、同色パーツはなるべくまとめて塗装する

 

■塗装の天敵は湿度?

外装パーツはラッカー系塗料のセミグロス(半つや)ホワイトで塗装するのですが、今回は塗装面がざらつてしまうカブり現象※に悩まされました。ラッカー系塗料を使用する場合のみ雨の日の塗装はNGがお約束です。ちなみに水性塗料ではカブりはおきません。

※塗料した際に、溶剤の蒸発に伴って気化熱で塗装表面の温度が下がるのですが、そこに凝縮した空気中の水分が塗料表層に混ざってしまうため、塗装表面が曇ってムラになってしまう現象。雨天時など湿度が高いとおきやすい

▲前回船体に取り付けたバラストタンクの塗装が湿度が高かった日に塗装したためカブってしまい、表面がザラついてしまった…

▲乾燥後にザラついた部分の表面を研磨して再塗装

▲船体艦首部分の塗装と組み立て。内部のシンタクチックフォームは外装を取り付けると全く見えなくなってしまうがちゃんと塗装。内部にはちゃんと水中移動用のスラスターが再現(矢印の部分)されている

▲艦橋部分はオレンジイエローで塗装

▲前方の障害物探知用ソナーはシールの重ね貼りで再現できる

▲艦橋に流れ向き流速計など測定機材を取り付けて船体前部と艦橋を合体!

▲組み上げた船体上部を本体にバチッと取り付け

▲塗装した外装パネルもパチパチと取り付ける

▲キットはスナップ仕様ということもあり、パーツのガタや脱落が心配になるが、外装はしっかりと組めるので接着剤は使わなくてもOKだ

▲外装パネルの取り付け後に船体に装備されたハイビジョンカメラやライトといった観測機材を取りつけていく。キットは配線類が省略されているので、追加してカメラ周りの密度感アップを画策中

▲今回製作のしんかいは改修前仕様なので、推進器(スクリュー)は後部に1基のみ

▲主推進器自体が左右に動いて舵の役位割も果たしている

▲2012年に操作性向上のために改修され、主推進スラスターが左右に各1台配置に変更されている。推進はバッテリー駆動のモーターで最高速度は2.5ノット(時速約6.3km/h)

▲垂直尾翼…じゃなくて垂直安定ひれはオレンジイエローで塗装。船体に取り付ける。この垂直安定ひれにはJAMSTECのマークが入る

 

■耐圧球のハッチの直径は50cm!

組み上げた艦橋後部を上から覗くと、耐圧球のコニカルハッチが見えます。ちなみに以前しんかい6500を取材でこの耐圧球の中に入ったことがあるんですが(当然地上ですよ)、ハッチの直径が50cm!しかないため、乗り込みにはかなり苦労した記憶があります。現在ウエストサイズが80cmあるので絶対に乗れませんね(当時は痩せていた)。間違いなくハッチに詰まります。

©2012 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology

実際パイロットはかなりスマートな方でした。取材は直径2mの耐圧球の中でカメラマンとパイロットと3人でまさにひざを突き合わせて1時間。なかなかできない体験でありました。「しんかい6500」をより知りたい方はぜひこちらに。

>> JAMSTEC 国立研究開発法人 海洋研究開発機構

 

■今週の潜水艦ネタ(爆)

「しんかい6500」などの深海潜水艇、はたまた潜水艦は達人の大好物でもあります。そして愛してやまないセンス・オブ・ワンダーの世界でも、潜水艇や潜水艦は欠かせない存在なんですね。というわけでプライベートで少しづつ製作しているのがコチラです。

ジュール・ヴェルヌが1870年に執筆した冒険小説『海底2万マイル』をディズニーが1954年に映画化した際に、劇中で登場するノーチラス号をモデル化したものです。全長約60cm、お値段は最新のスマホ同じくらいする海外製フルレジンキットで、中身は超難物。製作もなかなか進みません、現在艦内をプラ板で自作しています。それでもカッコ良いのは事実。何度見ても惚れちゃいます。

『海底2万マイル』は何度も映画化されて、様々なノーチラス号が登場しますが、このノーチラス号のデザインを超えるものはないですね、なので頑張って完成させたいです。

*  *  *

今回は船体の製作、そして塗装にスポットを当てて製作を進めました。次回はいよいよ海底のジオラマを一気に進めていきたいと思います! またまたお楽しみに!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

【関連記事】

◆古典SF映画の傑作『地球最後の日』に登場する宇宙船を製作【達人のプラモ術<宇宙船アーク号>】
◆映画にもなった宇宙船「アポロ13号」の破損状態を製作!【達人のプラモ術<アポロ13号>】
◆なんと1957年製!古き良きアメリカのプラモデルを作る【達人のプラモ術<パイパー・トライペーサー>】


Amazonベストセラー

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA