容量やハンドルの長さを見直した「山岳飯盒弐型」はバックパック旅にいい感じ

【アウトドア銘品図鑑】

キャンパーの間でじわりと注目度が高まっているのが飯盒です。アルミ製で持ち歩きや調理しやすさを考え抜かれたちょっとレトロなデザイン、年月とともに小傷ができて深い味になるなど、キャンパー好みの要素が詰まっています。

丸形やそら豆型の兵式、角形などいろいろな飯盒がありますが、注目は“戦闘飯盒弐型”と呼ばれる自衛隊官給品の小ぶり飯盒! ソロやデュオにちょうどいい2合炊きで、この春、EVERNEW(エバニュー)が発売し評判を得ている「山岳飯盒弐型」(1万2100円)も弐型をベースに細部を見直した山岳仕様。野営のプロともいえる自衛隊、そして70年以上山岳用品を手がけてきたエバニューの技術が融合した「山岳飯盒弐型」の魅力を探りましょう。

 

■浅型だから底まで手が届く

林間学校で使われていた飯盒は4合炊きですが、「山岳飯盒弐型」は2合炊き。4合炊きの6割ほどの深さで鍋底のごはんもきれいに食べられます。

▲168×H80mm、フタは180×H45mm、写真手前のナカゴは165×H38mm。重量370g

学校キャンプで使われている兵式飯盒はおおよそ180×H140mmですが、「山岳飯盒弐型」の場合、幅はほぼ同じでも高さ80mm。6割程度なので、しゃもじの操作をしやすく、鍋底の端っこのごはんもきれいによそえるんです。指が鍋底まで届きます。これならすみずみまで洗えて、いつまでも気持ちよく使えます。素材は軽いうえに熱伝導率が高く、調理向きといわれるアルミ製。

新品は写真のようにピカピカですが、焚き火にかけていくうちにだんだん小さな傷ができ、煤が付着して黒くなってきます。これがまたいいんです。

ちなみにそら豆みたいに片側がへこんだ楕円形なのは米軍の鍋を参考にしたそうで、腰に取り付けやすく複数個を並べて一度に持ち運べるなど、いろいろな理由があるようです。

▲本体のハンドルを伸ばし、フタのハンドルをおろした状態。ハンドルを下げ、フタのハンドルを引き起こしたまま固定することだってできます

「山岳飯盒弐型」には三脚などに吊したときに安定するハンドルのほかに、フタにもハンドルが付いています。

本体のハンドルは両端が細長い輪っかになっているので伸ばせば吊るし料理、縮めればパッキングしやすいという親切設計。

▲ソロキャンプでもなんだかパーティー気分!?

ソロやデュオならフタとナカゴを食器とすることもあるでしょう。

フタのハンドルにナカゴを引っかければこんな風に2皿を一度に持てます。なくてもいいっちゃいい機能ですが、アルミ皿に熱々のごはんやおかずを載せると熱くて持てません。ハンドルひとつで2つの熱々の皿を扱えるのは案外便利なんです。

 

■飯盒で炊くごはんはうまい!

スタンダードにごはんを炊いてみました。クッカーと同じ手順で焚き火にかけたのですが、不思議においしく炊き上がるんです。

▲ナカゴは容量400ml

米2合は約360mlなので、ナカゴにある段の部分くらいまで。写真は2合よりも少し多いくらいです。水はナカゴ1杯分が適量ですが、硬めのごはんが好きな人は米と同量にします。米にたっぷり水を吸わせたら、焚き火にかけます。

バーナーでもいいんですが、飯盒は全方位から熱をかけられます。側面が全体に丸みを帯びているため下からの熱でも米が踊りますが、炎に包まれてお釜みたいに側面からも熱が加わるようにすると不安定な焚き火でもより対流がおきやすく、ムラなく米に火が加わるというわけ。

中火にかけて湯気が出始めたら強火に。水分が噴きはじめたら薪を散らして弱火にして約12〜15分かけて水分を飛ばします。水分がないのに火にかけ続けると焦げるのでご注意を。火から下ろして15分ほど蒸らして完成です。このあたりの手順はいつもの鍋と同じ。ふっくら炊き上がりました!

載せるだけのフタとは違い、飯盒のフタはしっかりかみ合わせられるので水分が飛びすぎることはありません。沸騰直前にしっかり対流するのでムラもなし。

▲ナカゴには本体に通じる小さな穴があります

「山岳飯盒弐型」は兵式飯盒弐型にならい、ナカゴに穴があり水蒸気を利用できます。

本体で湯を沸かし、ナカゴに水と米をいれて加熱する“水蒸気炊飯”も可能です。だれでも焦げ付かずにごはんができると評判の炊き方で、下段の湯をレトルト食品の温めやカップスープに使えば無駄になりません。

ただ、水蒸気炊飯はどうしても普通の炊き方よりも時間がかかることを覚えておきましょう。薪やガスの消費を抑えたいときは注意が必要です。反対に、炊飯時の水蒸気を利用して、蒸し料理ができます。1合でもソロでは多いので、翌朝は汁物を作りつつナカゴでごはんの温め直しをするなんてことができるのも効率がいいですね。

*  *  *

エバニューによると、「山岳飯盒弐型」は自衛隊官給品を作り続けてきた工場の技術と良質な材料を融合させた“お米が喜ぶ飯盒”なのだとか。

正直、アルミの鍋に1万円オーバーは高価です。けれどもかみ合わせ等がしっかりしていて質感よし。同時調理ができるなど料理好きソロキャンパーのツボを押さえた製品といえるでしょう。

なによりも焚き火の熱に包まれて炊いたごはん=ごちそうだと実感できる鍋! ごはんにこだわる日本人にとって、これ以上の説得力はありません。

>> エバニュー

 

>> [連載]アウトドア銘品図鑑

<取材・文/大森弘恵

大森弘恵|フリーランスのライター、編集者。記事のテーマはアウトドア、旅行、ときどき料理。Twitter

 

 

 

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