完成した船体をジオラマベースに仮配置!【達人のプラモ術<しんかい6500>】

【達人のプラモ術】
バンダイ
エクスプローリング・ラボシリーズ

1/48 しんかい6500
04/05

戦闘機やバイク、ロボット、スポーツカーなど、さまざまなプラモデルの作り方・楽しみ方を紹介する、プロモデラー長谷川迷人さんによる【達人のプラモ術】。

4回目となる有人潜水調査船「しんかい6500」の製作もいよいよ佳境! 本体の完成とブラックスモーカーとも呼ばれる深海の熱水噴出孔をイメージしたジオラマベースの製作を進めていきます。

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。

 

■外装の塗装と仕上げ

本キットは色プラ(塗装しなくても実物のイメージに近い色で仕上がる多色成型)なのは前回詳しく解説しましたが、内部のシンタクチックフォーム(浮力材)や外装などはやはり塗装が必要です。

前回、艦橋部分と垂直安定ひれは、よりリアルとなるようにオレンジ色で塗装しました。今回はさらに実物の写真を参考に、半ツヤのホワイトで塗装した外装パネルの船体上部の甲板?にあたる部分をクリーム色に、また船体左右のバラストタンク部分はオフホワイトで塗装しています。

キットは、外装パネルが実物同様に分割されていて、個々に取り外せるため、塗装のマスキングも最小限で済むのがありがたいです。

▲船体上部をクリーム色(使用色はMr.カラーC318レドーム)、艦橋と垂直安定ひれは使用色はMr.カラーC58黄橙色にイエローを30パーセント加えた色で塗装している

▲船体側面のバラストタンクはややアイボリーがかった色(外装パネルと同じホワイトの時もある)をしているので、ホワイトにわずかにイエローを加えたオフホワイトを調色して塗装

▲外装塗装を終えた船体。より実物に近いイメージになってきた

▲船体上部に装備された救難ブイ(海底でトラブルが発生して自力浮上が困難に事態になった際に、ワイヤ付きのブイが50m浮き上がり、そのワイヤーに支援船から降ろされた救難索を引っ掛けて船体を引き上げる)も赤色で塗装しておく

▲ちなみに救難ブイの装備はキットのインスト(説明書)で初めて知った

▲船体裏側には、潜水中に船体の中立トリムの維持、そして浮上時には切り離す鉄製のウエイトも再現されている。ちなみに探査中の深度変更は船体左右に装備されたスラスターで行う

▲垂直安定ひれのJAMSTECのマークはデカールを貼って再現

▲「しんかい6500」の船名もデカールだ

 

■マニピュレータの製作と塗装

耐圧球の前面に取り付けられている2基のマニピュレータをイスントの指示に沿って組み立て、ダークシルバーとブラックで塗装しました。手前の黒い箱は採取した資料を入れるサンプルバスケットです。

「しんかい6500」に装備されている2基のマニピュレータは油浸均圧型電気油圧サーボ方式で持ち上げ力は72kg。そしてモノを掴む際の握力は100kg以上あり、深海の高い水圧下でもスムーズかつ精密な作業がこなせるだそうです。

JAMSTECの公式サイト内『JAMSTEC創立50周年記念動画、しんかい6500運航チームが特別ば操縦訓練に挑む!』において、「しんかい6500」のマニピュレータを使い、やかんからカップヌードルにお湯を注ぐ!という動画が公開されています。なかなか面白いのですよ。

>> JAMSTEC「「しんかい6500」特別ミッション -こぼさずお湯を注げ-」

マニピュレータの操作、ぜひ一度体験しててみたいモンです。

©2012 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology

▲組み立てて塗装をした2基のマニピュレータとサンプルバスケットを船体に取り付けた状態。マニピュレータのアームは可動させることもできる

 

■船体の完成

船体の観測機器、また整体裏側には浮上する際に投棄する鉄製のバラストを取り付けて船体を完成させます。最後に垂直安定ひれと胴体両側JAMSTECのマークと「しんかい6500」のロゴのデカールを貼り、半ツヤクリアーで全体の塗装を整えて「しんかい6500」が完成しました。

▲仕上げに缶スプレーセミグロスクリアー(タミヤ缶スプレーミニTS-79)を船体全体に塗装。デカールの保護と船体の塗装を整える

悩ましいのは、「しんかい6500」が潜水調査船ということもあり、常に整備されており船体に汚れや錆などが見られません。情景模型的には、作品を際立たせるウエザリング(汚し塗装)を入れたいところなんですが、不用意に汚し塗装など入れたら、逆に不自然になってしまいます。なので今回はパネルラインやパーツ凹部へのスミ入れをおこなって船体のディテールを際立たせる程度にしておきます。

深海での調査中に謎の未確認生物に襲われて、マニピュレータで辛くも撃退、船体にダメージを受けた「しんかい6500」なんてのも模型的には面白いとは思いますが…今回はやめておきましょう(実はやりたい)。

▲完成した「しんかい6500」

▲船名とロゴマークが入ったことで、ぐっとモチベーションアップ。仕上げのオーバーコートも、ミリタリーモデル的なつや消しではなく半艶に仕上げしげたことでリアルな質感となった

▲この時点ではパネルラインへのスミ入れはまだ行っていない

 

■ジオラマベースの製作

スタイロフォームを使って製作したジオラマベースは、深海の熱水噴出孔“ブラックスモーカー”をイメージしています。

▲深海で硫化物を吹きだすブラックスモーカー。周囲にはシロウリガイなど独自の生態系が存在する ©2012 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology

今回はスタイロフォームの上からモデリングペースト(アクリル樹脂と大理石の粉末からできたパテ状下地剤)を塗りこんで、より海底らしく下地を仕上げていきます。通常のモデリングペーストとモデリングペーストエキストラコースパミス(灰色・極粗粒子砂目盛り上げ材)を使うことで、堆積物に覆われた海底を再現しています。

モデリングペーストは水性アクリル樹脂なので、厚塗りした場合乾燥に時間がかかるのが難点ですが、硬化後も削る等の加工が可能で、塗料を選びません。ジオラマ製作によく使われる素材です。

ところでブラックスモーカーが存在する海底って何色なんでしょうかね、光が届かない深海ですから、真っ暗な海底の色がよく分かりません。写真や動画見ると、ライト浮かびであがる海底は、ブラックスモーカーの噴出物のせいで茶色や赤、黄色と思いのほか派手なようです。

▲スタイロフォームのベースにモデリングペーストエキストラコースパミスを筆で塗布して24時間乾燥させた状態

▲熱水噴出孔となる岩の柱部分は通常のモデリングペーストを塗布して下地を仕上げている

▲乾燥後、グレーサーフェイサーで下地塗装

▲モデリングペースト塗布しているのでサーフェイサーの溶剤でスタイロフォームが溶けてしまうことはない

▲下地仕上がったベースに完成した「しんかい6500」を仮配置して、ジオラマのイメージを固めていく

▲イメージベースはキットのボックスアート

▲バックを暗くしてキットのLEDを点灯させると、雰囲気アリアリでテンションアップ!

*  *  *

「しんかい6500」の船体は無事完成しました! 次回は噴煙を吹き出すブラックスモーカーのジオラマを仕上げてフィニッシュを目指します。お楽しみに!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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