2022年6月30日(木)、アイウェア企業のOWNDAYS株式会社は、インドのテック系スタートアップで、同国のアイウェア市場で大きなシェアを占めるLenskart Solution Private Limitedとの経営統合を発表しました。
日本ブランドの高い信頼性と、海外の先進的なテクノロジーの融合に、注目が集まっています。
OWNDAYS株式会社は、これまでも、スマートグラス「OWNDAYS×HUAWEI Eyewear」や遠隔視力測定など、テクノロジーを活用した商品やサービスを積極的にリリースしてきました。同社のテクノロジーに対する考えについて、代表取締役の田中修治氏に伺いました。
テクノロジーの活用で人々の生活を豊かに
――まず、御社の事業内容について教えてください。
田中:OWNDAYS株式会社は、「日本発でグローバルに通用するアイウェアブランドをつくる」ことをめざしているメガネ販売チェーン店です。自社ブランド商品の企画から製造、販売までを一貫しておこなうSPA方式を採用することで、コストを抑えたメガネをお客様に届けています。
国内よりも海外店舗の方が多く、シンガポールやタイ、オーストラリアなど13の国と地域で450店舗以上を展開しています。
日本の小売業のチェーン店は、グローバル展開といっても、東南アジア中心になることが多く、南アメリカや中東、アフリカにまで進出している企業は多くありません。弊社は、今後東南アジア以外の地域の展開にも力を入れるなど、本当の意味でのグローバル展開をめざしています。
――御社では、最近、テクノロジーを活用した商品やサービスをリリースしていますね。これらもグローバルで通用するブランドを目指すための取り組みのひとつなのでしょうか。
田中:そうですね。プロダクトの魅力だけでなく、カルチャーや資金力など、グローバルで通用するためにはさまざまな要素が必要です。そのひとつとしてテクノロジーの力は重要だと考えています。
たとえば、今年6月にはファーウェイ・ジャパンとコラボし、聴こえるメガネ「OWNDAYS×HUAWEI Eyewear」を発売しました。このメガネは、視力矯正だけでなく、耳を塞がない新しいスマートオーディオ体験も提供しています。
――度付きレンズが入ったスマートグラスですね!
田中:テンプルに搭載されたセミオープンスピーカーには、128mmの大型振動板を搭載しているため、高解像度の音楽を楽しめます。
スピーカーが搭載されていると重そうというイメージを持つ人もいるかもしれませんが、メガネフレーム部分の軽量化を追求したため、長時間装着していても疲れにくくなっています。
指向性スピーカーによって音漏れを最小限に抑えているので、アウトドアやオンライン会議など、幅広いシーンで使っていただけます。
田中:また、沖縄県の久米島に島内で唯一のメガネ店を出店しました。
久米島は高齢化が進み、潜在的なメガネユーザーが増えているにもかかわらず、これまで島内にメガネ屋が1店舗もありませんでした。弊社のようなメガネチェーン店は、人件費などコストのことを考えると、人口が2万人を超えない地域にはなかなか出店できない現状があります。
久米島の人口は、約7500人(2022年2月時点)です。過去2回ほど出張販売をおこないましたが、メガネの見え方やフレームに不具合が生じた際、お客様に沖縄本島の店舗まで来てもらう必要があるなど、購入後のサポート体制に課題がありました。
――お客様のために常設したい。でも、コストのことを考えると難しい……。そんな課題を解決するためにテクノロジーを活用したということでしょうか。
田中:そうです。久米島店のお客様の視力測定は、店頭に設置している弊社独自の遠隔視力測定機を使い、東京本社のコントロールセンターからリモートでおこないます。
そのため、久米島店に専門スタッフがいなくても、いつでも経験豊富で高度な技術をもつ専門スタッフの測定を受けることが可能です。見え方に不便が生じた際にもリモート測定機を使って、ご相談いただけます。
久米島のような状況の地域はたくさんあります。メガネを買うために遠方までいかなければならない、もしくは出張販売を待たなければならない“メガネの買い物難民”をゼロにするため、今後は沖永良部島や屋久島にも出店する予定です。
――「OWNDAYS×HUAWEI Eyewear」も久米島への出店も、テクノロジーの活用によって、コストが抑えられ、便利になるだけでなく、人々の生活を豊かにすることもできるのですね。
外注ではなく、自社開発を大切にしている理由
――久米島店では、御社独自の遠隔視力測定機を使っているとのことですが、システムの自社開発に力を入れているのでしょうか。
田中:エンジニアの採用を増やすなど、積極的に投資しています。
テクノロジーに関するノウハウを社内で蓄積し、自社でシステムを作れば、外部要因に左右されにくいほか、自分たちのビジネスに合わせて柔軟にカスタマイズすることができるからです。
たとえば、POSについて。以前は他社システムをライセンス契約をして使っていたのですが、今は自社で開発したものを使っています。
ライセンス契約をしている場合、会社が大きくなると、自前でシステムを作れるぐらいの金額を払うことになります。しかし、専門外ということで、ほとんどの会社はそのまま外注し続けています。
弊社では、自社で開発することで、予算を抑えるだけでなく、自分たちに必要なデータをタイムリーに、カスタマイズして入手できるようにしています。
ホームページも同様です。今やホームページは重要な集客ツールです。自社でホームページを作らず、他社が運営する口コミ・レビューサイトに集客を頼っていると、外部要因に左右されやすく、リスクがあると思います。
このようにホームページやPOSを作ることから始まり、その後は店舗のお客様のカルテ管理システム、遠隔視力測定と、「じゃあ、あれもこれも」と発展して今に至ります。
――会社が生き残っていくためにも、テクノロジーへの投資は避けて通れなさそうですね。また、社内にテクノロジーに関する知見が蓄積されていれば、新しいことにも挑戦しやすいという印象を受けました。
田中:社内の例になりますが、弊社では独自の社内通貨システム「STAPA(スタパ)」も開発しました。仮想通貨がブームになる前の2017年のことです。
社員は売上を達成したり、企画を出したりすると、「オンデーズマイル」が貯まり、旅行券や景品と交換できるなど、社内制度として今も運用しています。
ゲーミフィケーションにより、社員のモチベーションアップに役立っていると感じます。
多くの人に受け入れられる商品を作るために必要なこと
――「OWNDAYS×HUAWEI Eyewear」をはじめ、多くの人たちの生活を変えるような商品を出されていますが、話題になって終わりではなく、人々の生活に定着するための商品やサービスを作るために必要なことは何だと考えますか。
田中:正直な話、どんな商品が多くの人に受け入れられるかは、誰にもわからないと思います。リリースしてみなければわからないことは、たくさんあります。だからこそ、新しい、面白そうなことを見つけたら、まずは試してみるという姿勢が大切です。
たとえば、インターネットは今では私たちの生活に欠かせないものになりましたが、その可能性を最初から確信していた人はそう多くないでしょう。だいたいの人が流行に乗ることから始まり、結果としてビジネスの成功につながっていたのだと思います。
弊社も売れるという確信を持ちながら、商品を開発するわけではありません。まずは、新しい、面白いと感じるものを片っ端から試してみることから始めています。
――柔軟性やフットワークの軽さが大切ですね。
田中:よくないのは、新しいものを目の前にしたときに、「何だかよくわからないから」と距離をとって静観することです。そのようなスタンスだと、どんどんビジネスチャンスを逃していくだろうと思います。
従来の常識を覆すようなイノベーションを
――今後の展開を教えていただけますか。
田中:メガネのあり方や販売の仕方は、今後10年で大きく変わっていくはずです。
メガネの「フレームのなかにレンズがある」という基本的な形は、もうずっと変わっていません。そう考えると、まだまだ進化の余地があるアイテムだと思っています。
かけると自動的にピントが調整されるレンズや、一人ひとりの顔の形になじむようなフレームなど、テクノロジーの力で実現できることがたくさんあるでしょう。そのうち検査機をのぞくだけで、瞬時に視力測定ができるようになるかもしれません。
メガネを取り巻く環境が大きく変わるなか、自ら変化を起こす会社が生き残っていくはずです。弊社としても、アイウェア業界における従来の常識を根底から覆すようなイノベーションを起こしていきたいと考えています。
(文・和泉ゆかり)
- Original:https://techable.jp/archives/182002
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:izumiyama
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