簡単フィニッシュ塗装で化石のリアルな質感を再現【達人のプラモ術<恐竜骨格模型>】

【達人のプラモ術】
バンダイスピリッツ
1/32 ティラノサウルス&トリケラトプス
03/04

ティラノサウルスの“スタン”とトリケラトプスの“レイン”の組み立ても終わり、対決をイメージしたポージングも完了して、いよいよ塗装に入ります。さて今回は塗装なのですが…ここで難問。恐竜の化石って何色なんだろう? レインの化石を見ると、いかにも石化した重厚な骨って感じなんですね。これを塗装で再現するのはなかなか大変だなぁ…。というワケで今回は、誰でも手軽にリアルな仕上げを得られる簡単フィニッシュで塗装を進めていきましょう!(全4回の3回目/1回目2回目

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!「@Modelart_MOVIE」も配信中。

 

■キットの素材色を活かした塗装にチャレンジ

キットはティラノサウルスとトリケラトプスどちらも、見た目チョコレートといった感じの暗いブラウンで成形されています。このままで塗装しなくても、それなりに雰囲気はあるのですが、やはりプラスチックな質感が否めません。

インスト(説明書)にはMr.ウエザリングライナーを使った塗装のテクニックが紹介されています。今回の作例は、キットの素材色を活かしつつ、使い慣れたタミヤ製のスミ入れ塗料を使って、化石に刻まれた複雑な陰影を再現。さらにドライブラシを使って、よりディテールを際立たせてみました。ある意味手間のかかる全塗装をせずとも、リアルな仕上がりを得られます。

▼Before

▲キットを組み上げただけの状態。細かなディテールは分かるが、やはりプラスチックの質感(光沢感)が気になってしまう

▼After

▲全塗装することなく、プラの素材色を活かしたままの簡単フィニッシュで、スミ入れ、ドライブラシ、フラットクリアーのみで仕上げた状態。化石の重厚な雰囲気が大いにアップ!

 

■スミ入れ塗料使用時の注意

キットの素材は、スミ入れ塗料(エナメル塗料)が浸透すると細いパーツや関節のつなぎ目などが破損しやすくなる傾向があります。そこで破損を防ぐために、作例ではスミ入れ塗装の前にラッカー系塗料のフラットクリアーでオーバーコートしています。ラッカー系は匂いが苦手という場合は、水性のトップコートでも構いません。これでパーツの破損を防げます。

▲スミ入れの前にフラットクリアーで全体をオーバーコート塗装しておこう

▲GSIクレオス「Mr.ウエザリングライナー」(3本セット:各550円)AFVモデル泥汚れや錆の表現に使用する。イメージとしては水彩色鉛筆。鉛筆状なので細か表現もやりやすい。薄く伸ばしたりグラデーションをかけるには水性ホビーカラー用薄め液が必要。ただし定着しないので、仕上げとして水性トップコートでのオーバーコート塗装が必要

▲タミヤ「タミヤスプレー TS-80フラットクリアー」(770円)使用することで均一な艶消し塗装面を得られる。今回はスミ入れ塗装の下地と仕上げで使用

▲フラットクリアーでオーバーコートしたトリケラトプス。プラスチックのツヤがなくなりこれだけでも質感がぐっとリアルになる

 

■スミ入れ塗装のコツ

スミ入れ塗料はもともと希釈されているので、そのまま筆で塗装すれば良いのですが、今回のような化石に刻まれた凹凸では、強く陰影を付け過ぎると逆に不自然になってしまいます。なので、使用に際してはスミ入れ塗料のビンを15分程度置いて、含まれている顔料を沈殿させ、あえて上澄みを使用します。そうすることで、必要以上に色が濃くならず自然な仕上がりを得られます。塗装後濃くなりすぎた場合は、エナメル溶剤を含ませた綿棒で拭き取ればOKです。

▲トリケラトプスの頭へのスミ入れ塗装。左側が未塗装の状態、右側がスミ入れをした状態。パーツの凹部分に暗い色が入ることで、陰影が強調されているのが分かる

▲スミ入れ塗料は攪拌しないで上澄みを使用するのがリアルに仕上げるコツ

▲濃くなり過ぎた場合やはみ出たスミ入れ塗料は、乾燥前に綿棒で拭き取ればOK

▲スミ入れは、塗るというよりパーツの凹部分に塗料を置いていく感じでやると、よりリアルな仕上がりとなる

▲タミヤ「スミ入れ塗料」(各396円)▲適度に希釈されたエナメル塗料で、パーツのモールドや凹部分に流し込める。今回はブラックを使用。グレイの他にブラウン、ダークブラウンなどもある。拭き取りにはエナメル溶剤を使用する

 

■ドライブラシで陰影を強調

スミ入れ塗装が完了し、しっかりと乾燥させたら、いよいよドライブブラシでパーツのディテールに陰影をつけていきます。ドライブラシは以前制作した戦車「タイガーⅠ」でも紹介していますが、あらためて紹介していきましょう。

ドライブラシとは、パーツの凸部分に明るい色を塗装することで、よりパーツのディテールを強調する塗装テクニックです。筆に濃い塗料を含ませてからウエスなどで拭い、筆についた生乾きの塗料を利用してパーツの凸部分に塗料を擦りつけるように塗る技法です。

▲スミ入れが完了したらドライブラシで骨格のディテールを強調していく。使用する色は特に決まっていないが、基本明るい色を使う。作例ではライトグレイを使用

▲ドライブラシを施したトリケラトプス。恐竜の重戦車的なイメージなので、3本の角と特徴的な襟にドライブラシがよく映える

▲ドライブラシは、塗料を拭き取った筆の腹部分でパーツの凸部分に塗料を擦りつけるのが上手く仕上げるポイント。スミ入れで陰を、ドライブラシでハイライト入れることで骨格の陰影を強調していく

▲塗料のフタでドライブラシの理屈を説明。凸で刻まれた文字のエッジ部分に塗料が付くことで文字がより見やすくなってくる。筆は穂先を使うと凹部分にも塗料が付いてしまうので、腹の部分を使いゴシゴシ擦りつけるように塗料を乗せていくのがコツだ

 

■化石骨格の塗装が完成!

▲仕上がった2体を塗装中のベースに配してみた。簡単フィニッシュでも充分リアルな雰囲気に仕上げられる

全塗装をせず、スミ入れとドライブラシだけのシンプルな技法で、見ての通り雰囲気マシマシな仕上がりとなりました。手軽に恐竜化石の模型を仕上げたいウィークエンドモデリングにも最適なテクニックだと思います。もちろん自分はリアルな質感を追求するのだということであれば全塗装もありです。カタにはまらず塗装や仕上げを自由に楽しむ、だからプラモデルは楽しいんです。

これにてティラノサウルスとトリケラトプスの塗装が完成! 次回はベースの塗装を仕上げて、スタンとエレンの格闘シーンの完成を目指します! 乞うご期待!

 

■今週のオマケ

『アノマリカリス解体新書』

▲『アノマロカリス解体新書』(ブックマン社)土屋健 著

アノマロカリスとは、恐竜が誕生するずっと以前、5億2000万年前のカンブリア紀に生息していた最強の捕食動物。なんだけど、最初に発見された化石が当初エビの一種と間違われたりと、なかなか謎の多い生物だったんですね。この本では、最新の研究をもとにアノマロカリスの生態がリアルに紹介されていて、ともかく面白い。一気に読んじゃいました。まぁこんなヤツが海にいたら絶対にイヤ! 絶滅してくれて良かった系の変ないきものです。

以前実物大のリアルなソフビ模型のアノマロカリス(全長約30センチ)を持っていて、水中モーターつけて市民プールで泳がしてみようと思ったことがあるんですが、奥さんに「それはやめろと真顔で怒られました」。

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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