アイデア続出で、より多様化し洗練されたDIYキットに「日曜大工」の未来を見た

自分の暮らしを自分の力でクリエイトするDIY。トイレの棚を作ったり、水漏れした蛇口を修理したりが定番だったのは、すでに遠い昔のこと。機能的で低価格な電動工具や、使いやすく工夫された資材がホームセンターでは多数販売され、すっかり多くの人に受け入れられるホビーとして定着してきました。

そんなDIY業界の一大イベント「JAPAN DIY HOMECENTERショー2022」が、2022年8月25日~27日に幕張メッセで開催され、2万人を超える来場者で会場は大変な賑わいでした。

「JAPAN DIY HOMECENTERショー」は、一般社団法人日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会が開催する、ホームセンター業界最大の展示イベントです。各種工具や建築用資材メーカーをはじめ、日用品やアウトドアギアなど多くのメーカーが出展し、新しいDIYの形を提案をしていました。そんな中から、特に目を引いた商品をセレクトし、紹介したいと思います。

1.ブロック感覚で家具を組み立てられる

木工DIYで家具を作る時、初心者が一番ひっかかるのが、材木同士の接合ではないでしょうか。私も木工家具をよく製作しますが、釘、ネジ、金具のセレクトや、上手な組み付けはやはり難しいですし、失敗して見た目が悪くなることも少なくありません。

しかも、作るのが大きな家具になるとちょっとした失敗が、それを使用する人の安全に関わるので気が抜けません。接合が甘くて棚が倒壊しケガをしてしまっては大変です。

そんな大事な木工用接合パーツで、今回目を引いたのが若井産業が展示していた「ハグブロック」でした。見た目も優しくかわいらしいハグブロックは、特殊な工具を使わずに誰でもブロック感覚で、建築用の板材を組み合わせて家具を組み立てることが可能。

ハグブロックは、六角レンチでネジを締めることで板と板とを接合して使います。2枚連結のL字と3枚連結T字の2種類があり、これを組み合わせることで、アイデア次第でいろいろな家具を作れます。

また面白いのが、素材の板そのものには傷をつけないので、大きさや形を変えたくなったら、いつでもネジを緩めて組み立て直すことができること。これなら家族の成長に合わせて、家具を大きくしたり小さくしたり自由自在ですね。ただし椅子や踏み台など体重がかかる家具は作れないのでご注意を。ハグブロックのカラーは全12色あるので、好みに合わせ楽しくDIYに挑戦してみてください。

>>ハグブロック

2.一生使える自分のイスを自分の手で!

奈良県吉野で高品質な家具を製造する維鶴木工が近年発表した「高品質な家具をDIY」するという提案は、国内外で一大旋風を巻き起こしました。一生愛し続けるイスを自分の手で作れる、維鶴木工の「Do kit yourself」シリーズは、高額ながら高い人気を誇っています。

そして今回のDIYショーで、北海道の材木専門会社昭和木材から、また新たに魅力的なキットが発表されました。先の「Do kit yourself」と、国内外の高品質な材木を取り扱う昭和木材自慢の天然広葉樹木材ブランド「MOOQS Element」とのコラボレーション「Do kit yourself×MOOQS」です。

このコラボによって、これまで奈良のヒノキ一種類だったイス本体の素材に、材木の専門家である昭和木材が吟味したウォルナット、サクラ、オークが選べるようになりました。

キットの価格は4万円以上し、製作時間が8時間以上かかる、なかなか手強いDIYキットですが、作製に難しい手順はありません。動画による製作解説も配信されているので、丁寧に根気よく作業すれば、誰でも自分の手でイスを作ることができるのです。

完成した時の感動と達成感を目指して、あなたも“一生使える自分だけのイス”作りに挑戦してみませんか?

>>MOOQS

3.見た目スマートな車中泊ルームを作れる!

プラスチックで生活用品から工業製品まで手がけるメーカー矢崎化工が提案するDIYシステムが、パイプとジョイントでさまざまなアイテムが作れるイレクターです。

イレクターは、プラスチックがコーティングされたスチール製のパイプをL字やT字、三又などさまざまな形状のジョイントで繋げることで棚や家具が作れるシステムです。もともとはイベント会場の仕切りや飾り、工場の収納スペースなどに昔から使われていました。しかしその組み立てやすく自由度の高い設計と、耐久性の高さ、そして少しシックでインダストリアルな雰囲気から、ここ最近DIY愛好家の間で人気が高まっています。

今回、矢崎化工のブースでは木材と組み合わせて、さまざまなアウトドア向け家具を作る提案がなされていました。無骨な黒いパイプと天然木材との組み合わせは、カッコよく、キャンプシーンでもとても映えそうです。

また注目したのは、ワンボックスカーの車内リフォームにイレクターを使う提案でした。最近注目の車中泊ですが、ワンボックスカーの車内をリフォームする場合、やはり安全性は重要です。その点、工場などでも使われるイレクターなら安心感は抜群。しかも矢崎化工では、通常の曲線パイプの販売のほか、ホームセンターやオンラインショップ経由で“パイプの曲げ加工”を受け付けているので、愛車の車内形状に応じて半ばオーダーメイドパーツのようにパイプを組むことが可能。これなら見た目もスマートで、安心感の高い車中泊ルームを作ることができますね。

>>矢崎化工

4.資格がなくても組める電気配線DIY

電気配線DIYは自宅セルフリフォーム愛好家たちの間でも、最も敷居の高いテーマのひとつでしょう。なぜなら、当たり前ですが電気配線を行うには電気工事士の資格が必要だからです。違反すれば罰せられるだけでなく、工事不良からの漏電、そして火災の危険があることはいうまでもありません。

そんな難しい電気配線を自分で行い、庭に照明をつくるDIYを、まったくの素人でも可能にしたのが、住宅エクステリアの専門企業タカショーが提案する「ひかりノベーション」です。

家と庭をつなぐDIY照明「ひかりノベーション」は、タカショーが持つ商業施設や一般住宅の屋外照明デザインを専門とするグループが開発に参加し、自宅の庭を誰でもプロのようにライトアップできるさまざまなパーツでシステムが作られています。

基本セットの構成は、LEDライトとコントローラー、コード、分岐コネクターからできていて、低電圧12Vのローボルトのため、資格のない人でも安全に組むことができます。

ライトの増設も簡単で、しかも多彩な形状のライトがラインナップされており、照明のプロフェッショナルが公園やイベント会場をライトアップした時のようなシーンを再現可能。

同社のWebサイトでも、いろいろなライティングテクニックが紹介されているので、庭を個性的に演出したいDIY愛好家は、一度チェックしてみるといいのではないでしょうか。

>>ひかりノベーション

5.細いピンだけで壁に家具を取り付け

賃貸住宅やアパートでも、部屋をセルフリフォームすることが珍しいことではなくなりました。そのための便利グッズは色々出ていますが、やはり気になるのは壁や天井への穴や傷が大丈夫かどうかということ。

当たり前ですが、借り物の部屋の壁に大きな釘の穴を何本も開けてしまえば、退出時にトラブルになってしまいます。かといって、壁に素材を釘やネジで固定できない場合は、どうしても突っ張り棒的なアイテムに頼るか、自立できる箱型の家具ばかりになってしまって、いまいちスマートな部屋にリフォームできません。

そんなリフォーム希望者に朗報なのが、なんと細いピンだけで石膏ボードの壁に家具を取り付けられる「STAND BAR」シリーズです。

正直、私も最初は説明されても、意味がわかりませんでした。なぜなら展示ブースの石膏ボードの壁に付けられた棚には大型のテレビが設置されてるのですから!

この驚きのシステムを開発したのは、住宅用の金物などを販売するアイワ金属。ドアの取手や蝶番、フックなどの専門企業の力を結集した「STAND BAR」の要となるパーツには、絶妙な角度が付けられた複数の小さな穴が開いています。

その穴に専用のピンを刺すことで、パーツが石膏ボードにしっかりと固定される仕組み。あとはこのパーツに、DIYでは定番の1×4材を固定すれば準備完了。その1×4材を柱に見立てて棚などを設置していけば自由にアレンジ可能です。

固定用パーツ4個入りのセットを使い、1×4材の柱を2本立てれば、荷重50kgまで耐えられ、パーツを増やすことでより重いものまで大丈夫なのだとか。シリーズには他にも組み合わせて使用できるフックや棚受け用のブラケットもあるので、部屋のリフォームを考えている人は、ぜひ一度検討してみて欲しい。

ちなみに「STAND BAR」シリーズは石膏ボードの壁専用ですのでご注意を。使用するピンの穴は画ビョウなどと同程度の穴なので、アパートなどを退出するとき、壁紙を張り替えるかどうかは大家さんとご相談ください。

>>アイワ金属

※ ※ ※

ここ数年のDIY人気の高まりによって、「ケガが怖い」とか「工作が難しい」というようなイメージもかなり薄まり、DIY自体の敷居が低くなったように思います。そうして新しくDIYを始めようという方も増え、ユーザー側からの「こんなことを実現したい」というメーカーへの要望も、より多様になっているのではないでしょうか。

さてここまで見てきた、DIYキットの新しい形。どれも単純に「素人が簡単に」というだけでなく、優れたアイデアによって「より新しい何かを創る」喜びが得られる商品が非常に多く提案されているな感じました。これをチャンスと見て、どんどんと新しい作品に挑戦していきたいですね!

<写真・取材・文/阪口 克>

阪口克|旅と自然の中の暮らしをテーマに国内外を取材するフリーカメラマン。秩父郡長瀞町の自宅は6年かけて家族でセルフビルド。著書に『家をセルフでビルドしたい』(文藝春秋)、『ビジュアル版焚き火のすべて』(草思社)、『ファイアーサイドクラフト』(山と渓谷社)ほか多数

 

【関連記事】
◆ワークマンでここまで揃う!焚き火に使える七つ道具を試してみた【準備編】

◆材料費3000円で初挑戦!DIYで憧れの焚き火ハンガーを作ってみた

◆素人でもできる!?ステンレス板からカスタムナイフを作ってみた①【切り出し編】


Amazonベストセラー

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA