「居抜き」ってラクなようでラクじゃなかった!放置キャンプ場で直面している現実問題

【放置キャンプ場開拓日誌 #02】

いろいろなご縁があって、かつてキャンプ場だった場所をお借りして、自分たちのキャンプ場「-be-北軽井沢キャンプフィールド」として開く準備をしております。

開業に向けて2022年9月より場内整備をスタートし、この記事を執筆時点ではや2ヶ月が立ちました。

居抜きの物件ならぬ、居抜きのキャンプ場。そもそもキャンプサイトとして使われていたフィールドに、管理棟やトイレ、シャワーなどの設備。さらにはユンボや刈払機といった、整備作業に必須な重機や道具たちも一緒に借り受けました。

このあたりの話だけ聞けば「楽にスタートできていいね」「すぐにキャンプ場オープンできるじゃん」といった声も聞こえてきたりこなかったり…。実におっしゃるとおりで、手っ取り早くキャンプ場をはじめるにはもってこいの環境ではあります。

▲キャンプ場の管理棟。受付や売店、トイレ、シャワーが集約されている。ここに住みながら整備を進めている

ただしあくまで、「全くのゼロからキャンプ場を作ることに比べたら」という注釈付きで。

というわけで今回は、2年半放置された居抜きのキャンプ場の現実を少しご紹介できればと思います。

ちなみに、すでに解決できた問題や、地元の方の協力もあり解決策が見えてきている問題もあるので、前向きに進めています。

▲車道の排水路の復活はマストで行った。友人たちとツルハシ片手に掘り起こした

あんまりネガティブな感じになってしまったり、不幸自慢というか大変自慢をしたいわけでもありませんので、「へー。案外キャンプ場ってやることあるんだなぁ」くらいの、ワイドショーをなんとなく眺めるくらいの気分で読んでいただけると幸いです。

 

■2年半で自然に戻ったキャンプサイトたち

▲見事になにがなんだかわからない自然の姿に戻ったキャンプサイト。全エリアでほぼこの状態だった

キャンプ場といえば、宿泊する場所「キャンプサイト」抜きにはキャンパーを迎えることはできません。言わずもがなキャンプ場にとって最も重要な要素です。

そんな大事な大事なキャンプサイトが、放置されていた2年半の間で大自然に戻りつつありました。

▲友人らに助けてもらいながら片っ端から刈払機で草刈りを進めた

草は2年半分が折り重なりボサボサ、そこかしこに謎の細い木々が鬱蒼としている有様。枯れた細枝に、雪の重みで折れたであろうと太枝がそこかしこにあり、その多くは雑草に埋もれて姿も見えず。

▲落ちた枝を地面に縫い付けるように根をはる芝や雑草が草刈りの邪魔をする

まずはこのボサボサの草を刈り、細い木を刈り取り、枯れた枝たちを処理しないといけません。

キャンプ場の備品として乗用の草刈機も借り受けましたが、ここまで伸び放題だと刃が止まってしまって仕事にならず…。ほぼすべてのエリアを刈払機(エンジン付きの草を刈り取るための機械)を用いて行うという修行が待っていたのであります。

 

■畑の土にするには一番いいコンディションかもしれない林間エリア

▲木々に囲まれつつも開けた様子の中央エリア。本オープン時には人気が出そうな雰囲気を感じている

be場内をざっくり分けると、見通しがよく青空が気持ちよい芝生エリアと、さまざまな樹種に囲まれた林間エリアになります。

林間エリアも草や枯れ枝問題は芝生エリア同様なのですが、それに加えて、路面のコンディションがどっちかという畑寄りな箇所も多くありました。流石に畑は言い過ぎですが、どういうことかというと、落葉がたまりにたまって、腐葉土になっている箇所もあるのです。

▲下刈りが終わったことでようやくフィールドの状態が確認できるように。落葉の影響でふかふかしている

フカフカで保水しやすい腐葉土なので、車で走れば轍(わだち)はできるし、テントの底面は汚れるし、湿気も感じやすい。キャンプを楽しむのにあまりよい路面状況ではないので、これもどうにか対策を立てなければいけません。

また、それだけ落葉がある土地なので、毎日毎日落ち葉吹きをしなければいけません。全体の土地の広さは約1万坪(もともと100サイト程度で運営されていたキャンプ場だったようです)。

▲背負式ブロアーを使って落ち葉や下刈りした草を吹き続ける毎日

落ち葉を吹く道具としてはブロアー(原動機で風を起こして葉っぱを吹き飛ばす機械)がありますが、場内があまりに広いのでキャンプ場に置いてあった手持ちのブロアーでは話にならず、背負式のハイパワーなものを購入する必要があります。

 

■枯れ枝や立ち枯れ、倒木の処理も必要

▲途中で折れてしまった枯れ枝がところどころに見られた。これもすべて処理が必要

これは長いこと営業されているキャンプ場さんにとっては年間の整備業務として普通のことですが、木の高いところにある枯れ枝や立ち枯れしている木の処理が必須です。さらに言えばこの2年半の間で倒れてしまった木々もところどころに見受けられます。

▲立ち枯れの木はすでに林業のプロに頼んで伐採済み。8本ほどの太く高い木を半日で倒してしまう職人芸に圧倒された

すでに倒れてしまった木はチェーンソーで玉切りにして運び出せばいいだけですが(それでも重労働なのですが)、枯れ枝や立ち枯れした木はそんな呑気な話ではありません。

万が一、枯れ枝や立ち枯れした木が、テントや車、キャンパーさんの上に落ちてきてしまったら、最悪命の危険もあります。

だからこそキャンプ場オーナーたちは日々場内の様子を確認して、危ない場所があれば高枝用のこぎりや道具を駆使してメンテンスをしたり、高所作業車などを入れてガッツリと整備をいれたりしています。

▲荒れてはいるが、それでも自然の美しさをみて「ここでキャンプできないのはもったいない!!」と-be-でのチャレンジを決めた

僕たちのフィールド「-be-」もその例にもれず、キャンパーさんを安全にお迎えするために絶対必要な整備と言えます。

ただ、落ち葉問題や木々の処理の問題は多くあれど、その代わり、春先は新芽の薄緑色を楽しみ、夏は木陰で涼しく、秋は紅葉が美しく、冬は冬枯れの見晴らしの気持ちよさがあって、だからこそしっかり整備を進めたいのであります。

 

■落ち葉と雪解け水で埋まった排水路

▲場内を走る排水路は2年半の間に降り積もった落葉によって行く手を阻まれ、機能不全に陥っていた

「人の手が入ったところは人の手を入れ続けなければだめだよ」と言ったのはご近所住む、この土地で生まれ育ったおじいちゃん。

まさに仰るとおりで、上述の落ち葉問題などもあり、場内を通っていたあらゆる排水路が機能不全となっていました。

腐葉土や雪溶け水で流されてきたであろう土などが、もともと設置されていたU字構やサイトの間に作られていたあらゆる暗渠や明渠を塞いでおりました。

一部のサイトに水が染み出してしまっていたり、本来クルマが通る道にも川ができている始末。

そもそもクルマを通す道に水が流れてしまっているので、キャンプサイトに乗り入れもできない。この問題を解決せずしてオープンできず。喫緊の大きな課題といえます。

 

■万事順調とは言えない現状だけれど、それでも前進中!

▲地味に大変なのが折れた枝や剪定した木々の処理。運び出しも処分も手間がかかる

このように、キャンプサイトについて言えば、現状でもさまざまな問題があります。他にも書き出せばキリがないくらい、考えることはたくさんあります。管理棟・受付の清掃リノベーションも必須。冬が厳しいエリアなのですべての水道に巻かれた凍結防止帯の確認と養生し直し。電気系統が途中で切れて漏電していないかなど。電源付きのサイトもあるので、その確認も必要ですね。

冒頭に述べたとおり、“居抜き”キャンプ場は、全くのゼロから始めるよりは間違いなくお金も手間もかかりませんが、これだけの問題や作業を抱えているのでありました。

ただ、これらの問題が問題のまま依然としてそこにあるかというと、まったくそんなことはありません。

▲友人らの手助けもあり、10月末にはほぼすべてのエリアの下刈りが完了。2カ月におよぶ長い戦いだった

2022年9月上旬から整備をスタートして、この記事の執筆時点が2022年11月1日。
フィールドの草刈りは2ヶ月弱かけてほぼ全エリアの下刈りが終了しました。落ち葉問題も、いいお値段はしましたが背負式のパワーのあるブロアーを購入し、日々落ち葉を吹き飛ばしています。

▲腐葉土で流れがとまり淀んでいた排水路は復活し、今後はよりきれいに整えていく予定

倒木もチェーンソーで少しずつ処理できていますし、立ち枯れの木々も林業のプロにお願いして危ない木々は順に伐採していっています。

▲一緒に借り受けたユンボ。キャンプ場整備の三種の神器のひとつ

排水路も落ち葉をかき出したり、ユンボで掘ることで機能を回復できてきているので、じきに水位も下がってサイトも落ち着くだろうと予想しています。

腐葉土のエリアもユンボを使って上部を薄くすくい、転圧機で踏み固めることで対応可能。

今後は下記が年内にすべき大きな場内整備でしょうか。

・下刈りが終わったサイトの刈った草を寄せて、本刈りできれいに整える
・一部のサイトを平らに造成
・残りの排水路を復活させて車道を回復させる
・春先にローラー車を借りて転圧し、地盤を固める

何にせよ、雪が降って地面が凍るまでには完了させねばなりませんので、時間との勝負ではあります。

確かにしんどいことも多いですが、それでも今のプレオープン期間中に沢山のキャンパーさんが遊びに来てくれて、「静かで気持ちよかった」「久しぶりにゆっくりキャンプができました」なんて言っていただけるものですから、毎日頑張れちゃうのであります。

2022年シーズンは11月末までになりそうではありますが、来るたびに様子が変わっていく「-be-北軽井沢キャンプフィールド」を楽しんでいただけると幸いです!

「-be-北軽井沢キャンプフィールド」
〒377-1411 群馬県吾妻郡長野原町応桑1984-160

 

>> [連載]放置キャンプ場開拓日誌

<文/山口健壱>

山口健壱(ヤマケン)|1989年生まれ茨城県出身。脱サラし、日本全国をキャンプでめぐる旅ののち、千葉県のキャンプ場でスタッフを経験。メーカーの商品イラストや番組MCなどもつとめる。著書に「キャンプのあやしいルール真相解明〜根拠のない思い込みにサヨウナラ」(三才ブックス)

 

 

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