U-96製作は佳境に突入!吠える北大西洋の海と荒れる波を再現!【達人のプラモ術<Uボート>】

【達人のプラモ術】
レベル
1/144 Uボート
(映画『Das Boot』40周年記念ムービーセット)

04/05

前回、スタイロフォームとモデリングペーストを使い、今回のジオラマのテーマとなる嵐の海のベースを製作しました。

劇中でも何日間も北太平洋の強烈な嵐の海を航海するU-96が描かれています。排水量800トン足らず、通常の艦船に比べて細く長い船体のUボートは、荒れた海ではハンパなく翻弄され、船体が45度以上に傾斜することもザラにあったようです。大波の中でローリングとピッチングを繰り返す狭い艦内での乗組員の生活は過酷そのものでした。

というワケで、今回は吠える北大西洋の海の塗装を進めていきます。

▲スタイロフォームで製作した海面ベースを裏側から見たところ。見えなくなるスクリューや舵機といったパーツは取り付けていない

▲モデリングぺーストとヘビージェルメディムで嵐の海面を製作、塗装前の状態

スタイロフォームで海面ベースを作り、モデリングぺーストとヘビージェルメディウムで波を再現したのが前回の作業でした。乾燥に充分時間(最低でも丸一日)を取り、アクリル塗料を使い筆塗りで海の色を塗装していきます(全5回の4回目/1回目2回目3回目

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!@Modelart_MOVIE」も配信中。
 

■ヘビージェルメディウムはどう使う?

スタイロフォームで海面のカタチを製作、完成しているU-96の船体をはめ込み固定。モデリンペーストを盛り付けて海面の表面処理をしたのち、ヘビージェルメディウムを海面全体に塗布。さらに固定した船体とベースに盛り付けて、不自然な隙間ができないようにメディウムのカタチを整えます。

▲今回使用しているのはターナー製U-35ヘビージェルメディウム。リキテックスやホルベインといった画材メーカーから同様の効果が得られるメディウムが発売されている

ヘビージェルメディウムは硬めのメディムなので、筆やペインティングナイフなどを使い、盛り上げたり、エッジを立てることもできるのが特徴です。硬化後は透明感のある白色で軟質樹脂状(分かりやすく言うと固まった木工用ボンドといった感じ)になるので、水の質感の再現に向いています。

波のエッジや、船体を覆う水の流れなども表現することができるんですね。硬化後は塗装も出来るしナイフで削るといった加工もできます。

▲海面ベースと船体の隙間は不自然な隙間が生じないようにヘビージェルメディウムを盛り付けていく。厚く盛り付けるので、メディウムは最低でも丸一日は乾燥の時間が必要だ

▲船体の喫水線の沿ってヘビージェルメディウムを筆を使い盛り付けていく。艦首と艦尾は大波が降りかかるイメージで。メディウムは粘度が高いので波の形を作りやすい。ある程度硬化したらペインティングナイフなどでエッジを立てることもできる

▲乾燥したヘビージェルメディウムは塗装しなくても、透明感はあるので白く泡立つ波のように見える

 

■嵐の海の色って何色?

海と言えば、思い浮かべる色は青ですよね。南太平洋なんかだと鮮やかなブルー、はたまた冬の日本海なんかは鉛色の海なんて言われたりもしますよね。

今回は嵐の北大西洋です。ジブラルタルです。なのでかなり暗い色調で海を塗装していきます。塗装と書きましたが、海の表現は塗装というよりも「描く」と思ってください。青系の色を何色か塗り重ねて深く暗い海の色を描いていきます。

特に決まった色があるわけではなく、今回はブルーを基調にネイビーブルー、ミディアムブルー、スモークグレーを塗装面でブレンディング(塗装面で色を混ぜながらグラデーションを描く、もともとは油彩画の技法)することで、複雑な表情を見せる海の色を再現してみました。

▲今回は北大西洋の海の深い色を表現するためにアクリル塗料の複数の青色を筆で塗り重ねていく。モデリングペースト

▲塗装面上で色をブレンディング(色を混ぜ合わせてグラデーションをつける)することで深みのある表現ができる。ベースに使用したモデリングペースト、ヘビージェルメディウムともに塗料との相性も良い

▲半分ほど青系の色を重ねて、濃淡のグラデーションをつけて塗りあげた海面。うねる波の雰囲気を再現。船体部分はジェルメディウムで打ち寄せる白波を再現しているので、あえ青色は塗装しない
 

■白波はドライブラシ技法で再現

海の青を描いた後、艦を翻弄する大波の波頭を白を使い描いていきます。しかしながらベース全部の白波を描くのは手間と時間がかかってしまいます。

そこでAFVモデル塗装技法でお馴染みのドライブラシで、塗装されたベースの波頭の凸部分に白を擦りつけていくことで白い波頭が再現できます。

▲ドライブラシ塗装を簡単に説明。パーツや、今回で言えば波の凸部分(イラストではギザギザの山の部分)にのみ塗料を乗せることでエッジが際立ってくれる。筆に塗料を含ませていると凹部分にも塗料がついてしまい汚くなってしまう。筆につけた塗料をティッシュなどで拭き取り、ほとんど乾いた筆でディテールの凸部分に塗料を擦り付けるように塗装するため、ドライ(乾いた)ブラシと言うワケだ

さらに乾燥したヘビージェルメディウムは透明感があるので、そこに筆で表面の泡立ちや、船体の排水口から流れ落ちる水を描いていけばリアルな嵐の海を再現できます。

▲手前側の海面は、ドライブラシで白波を再現した状態。船体奥の海面はまだドライブラシで波を白波を描いていない状態。違いは一目瞭然だ

▲海面ベース全体に荒れた海の白波を描き入れた状態。いかにも荒れる大西洋になってきた

▲白波を描き終えた後、全体のバランスをみながら、船体降りかかる大波をヘビージェルメディウムを増し増しに。うねりにもジェルメディウムで波頭にエッジを立てて、より嵐の海感を強調した

 

■船体の張り線を追加

ベースに固定した船体ですが、波の塗装が完了した後、艦首と艦尾から艦橋に張られた空中線ワイヤー(無線送受信用のアンテナ線)を追加しました。これは先に張ってしまうと、船体をベースに固定する際に切ってしまうといったトラブルが起こる可能性が。それを防ぐため、このタイミングで取りつけています。

張り線自体は、昔懐かしの伸ばしランナーで製作しています。キットのランナーをライターやロウソクで熱して、柔らかくなったところを左右に引っ張ると、プラスチック樹脂が細く糸のように伸びます。それを利用してワイヤーを自作する工作テクニックが伸ばしランナーです。40歳以上のモデラーならば、やったことあるな〜という方も多いんじゃないでしょうか、

最近はメタルリギングやストレッチリギングなど、張り線のための素材も多く出ているし、火を使うので危険ということあって、伸ばしランナーでアンテナ線を作ることも減りましたね。

引き伸ばす際の速さ変えることで、太さも自在に調整できます。それこそ昔は熱した釘の頭でパーツの凸部分を潰して履帯を繋ぐとか、戦車のフェンダーを熱して歪ませる、線香を使って飛行機に弾痕を作る、キットに付属していた鉛製の接着剤のチューブを切って伸ばしてシートベルトを作る(鉛なので自由に形がつけられる。現在は接着剤がキットに同梱できない)とかテクニックがありました。

…みんなロスト工作テクニックになっちゃいましたねぇ(遠い目)。話が脱線しました。

さてUボートの張り線はところどころに碍子(がいし)が取りつけられているので、瞬間接着剤を盛り付けて再現しています。艦船モデルの常ですが、空中線を張るとリアル感がぐっとアップしますね。

▲艦首と艦尾から艦橋に張られている空中線を伸ばしランナーで自作して張っている

▲戦艦のように張り線は多くはないのだが、一気にリアル感がアップ

▲今回空中線は、伸ばしランナーで再現。ライターで不要なランナーを熱して一気に引き伸ばして作れる。火を使うので作業には気を使いたい

▲空中線には何箇所か碍子が取り付けられているので、瞬間接着剤を盛り上げて再現

▲さらにリアルさが増した

 

■今回はここまで

▲今回までの完成イメージ

さて今回はここまで。次回は、やっぱりフィギュアを乗せないと作品が活きてこないというワケで、劇中のシーンを再現を目指して、艦橋にフィギュアを乗せていきます。

さらに嵐の海をよりリアルに塗装してU-96ジオラマの完成を目指します、お楽しみに!

>> [連載]達人のプラモ術

 

<製作・写真・文/長谷川迷人>

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