Uボートの艦橋に搭乗員を乗せて「吠える北大西洋のジオラマ」完成!【達人のプラモ術<Uボート>】

【達人のプラモ術】
レベル
1/144 Uボート
(映画『Das Boot』40周年記念ムービーセット)

05/05

5回にわたり製作してきたレベル1/144のUボート。映画『Das boot』の劇中で登場する嵐の中での僚艦(トムセンの艦)との邂逅シーンを再現したジオラマがいよいよ完成です。

キットは、ディテールが良いこともあり、ほとんど手を加えずにストレートに製作。スタイロフォームで再現した嵐の海を組み合わせてジオラマに仕立てました。

今回は荒れる北大西洋をイメージして製作したジオラマベースの波の仕上げと、U-96の艦橋に6人のフィギュアを配置することで、より劇中に近いイメージの情景に仕上げています。

大荒れの海上で、降りかかる大波に耐えながらの艦橋での長時間の見張り任務は過酷そのもの。船体が波に突っ込むと艦橋が水面下に没してしまい、見張り員は1分近く水中で耐えなくてはならないこともあったそうです。(全5回の5回目/1回目2回目3回目4回目

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!@Modelart_MOVIE」も配信中。

■汎用のフィギュアを潜水艦の乗組員に流用

艦船模型では、スケールの関係からフィギュアを載せる作品は少ないのですが、今回のジオラマでは、荒れる海上で艦橋に立つ見張りの乗組員が周囲の警戒をするシーンを再現するので、フィギュアが欠かせません。残念ながらキットにはフィギュアが付属していないので、別に用意する必要がありました。

使用したのはトミーテックから発売されている『1/150 ジオコレ・ザ人間111(自衛隊の人々)』のセットです(※本来はNゲージ用)。塗装済みのフィギュア(身長12ミリ程のサイズ)からポーズの違う6体をチョイス。服の色をフィールドグレーに塗り直し(これだけで防水用の合羽に見えてくるから不思議なものです)、一体のみ腕の位置を変えて、さらに自作した双眼鏡を持たせました。

フィギュアは1/150と、キットの1/144スケールより若干小さいのですが、小スケールということもあり違和感はありません。フィギュアはキットのボックスアートを参考に6人を配したのですが、かなり窮屈な感じになりました。それにしてもフィギュアを乗せることで、情景に中にストーリーが生まれて臨場感がぐっとアップするから面白いものです。

▲フィギュアはトミーテックから発売されている『1/150 ジオコレ・情景コレクション ザ・人間111(自衛隊の人々)』(価格858円)を使用。ポーズ違いで12体のセット。本来がNゲージ用なのでスケールが1/150とやや小さいのだが、違和感なく使用できる

▲塗装したフィギュア6体を艦橋に配して接着していく

▲キットのボックスアートを参考に狭い艦橋に6体の乗組員を配したのでかなり窮屈な感じとなった。改めて映画を見直してみたら艦長を含めて4名だった

 

■海面の仕上げ

スタイロフォームをベースにモデリングペーストとヘビージェルメディウムで製作した海面は、改めて白波部分を水性アクリル塗料のホワイトで塗装(筆で描いて)し、メリハリを強調。海面はつや消しで仕上げると絵画調(油彩)のイメージになり、光沢感を持たせるとリアルな雰囲気が出てくるのですが、今回は全体をクリアーでオーバーコートすることで光沢感を強調した仕上げとしています。

最後に、手元あった木製の展示台に完成したキットを固定。U-96のジオラマが完成しました。

▲海面全体と船体の喫水線周りと甲板をクリアーで塗装することで光沢を持たせて濡れた水の質感を強調している

▲木製の展示台に今回製作した海面ベースを接着して完成!

■吠える北大西洋を往くU-96のジオラマ完成!

今回製作した荒海の表現は、Uボートのみならずキットのスケールに応じて波のサイズを変えることで水上艦艇にも応用できるものです。艦船モデルは単体でというイメージがありますが、こうした海面ベースと組み合わせることで臨場感を楽しめるモデルにもなります。ぜひチャレンジしてみてください 。

【完成画像ギャラリー】

 

■色々あるUボートのパーソナルマーク

今回製作したU-96の艦橋に描かれているパーソナルマークの“笑うノコギリ鮫”は実在したもので、第9 Uボート戦隊のハインリヒ・ヴィーレンの乗艦だったU-96のパーソナル・マーキングが、のちに戦隊のマーキングとして採用されたものです。

この他にも有名なパーソナル・マーキングとしては、イギリス・スコットランドの軍港スカパ・フローに潜入してイギリスの戦艦ロイヤル・オークを撃沈したU-47に描かれていた“鼻息の荒い雄牛(スカパ・フローの雄牛)”、さらに連合軍の艦船を19万7460トン沈めたU-552(Uボートエース第3位)に描かれていた“踊る赤い悪魔”があります。

面白いところでは、マーキングではなく幸運のお守りと言われる馬の蹄鉄を艦橋に溶接していたU-99がいます。こうしたマーキングの違いでUボートを製作するのもまた一興かと思います。

▲今回製作したU-96の“笑うノコギリ鮫”のマーキングは第9 Uボート戦隊のマーキングで実在したもの

▲Uボートエースのひとりエーリッヒ・トップの乗艦U-552に描かれていた“踊る赤い悪魔”のマーキング

▲U-47に描かれていた“鼻息の荒い雄牛(スカパ・フローの雄牛)”の横に描かれた数字は沈めた艦船のトン数だ

 

■1/35スケールでUボートを楽しむ!

今回製作したUボートは1/144スケールで、排水量の少ない艦船とはいえ、キットの全長は約40センチになります。

大スケールのキットで今回のようなジオラマを作りたいとも思うのですが、1/72サイズでは約90センチにもなってしまうので、これをジオラマ化するとなると、常に収納スペースに悩まされているモデラー的にはなかなか厳しい。なにしろ製作中のキットの取り回しが超大変(経験あり)。

しかしこの11月に「大スケールサイズでUボート作りたいんだったら見栄えのする艦橋分部分のみを作ればいいじゃん!」的な発想で、ボーダーモデルから1/35スケールで「ドイツ海軍 Uボート ⅦC型(水上航行モデル)」が発売されました。

艦橋と前部甲板の砲を中心船体の前後をカット。喫水線から上の部分が再現されたキットです。リアルなディテールのレジン製のフィギュア6体セットも別売でリリースされており、臨場感のあるUボートジオラマを楽しめるキットとなっています。1/35スケールという事あって艦橋のパーソナルマークも見栄えが良いですし、いやコレは欲しいです!

ボーダーモデル
「1/35 ドイツ海軍 Uボート VIIC型(水上航行モデル)」(1万5070円)
2022年11月以降発売予定(ハセガワ扱い)

▲完全新金型で艦橋と武装およびインテリアを再現。付属の魚雷で積み込みシーンの再現も可能

 

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

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