「iD」「QUICPay」と「Suica」「nanaco」の違いって? ポストペイを知れば「スマホ決済」がより分かる

【これからはじめるスマホ決済②】

スマホ決済を使ううえで、理解しておきたいのが「プリペイド」と「ポストペイ」の違いについてです。また、非接触式の電子マネー決済では「iD」や「QUICPay」といったブランドについても把握しておく必要があります。本稿では、こうした用語に焦点を当てつつ、具体的な決済サービスでの仕組みについて考えていきましょう。

 

■「プリペイド」と「ポストペイ」の違い

前回の記事では、スマホ決済を理解するための最初の一歩を踏み出してもらうために、スマートフォンのアプリが、現金でいうところの「財布」として機能するという話をしました。しかし、実際にはこうした話で単純化することができないサービスもあるのです。これを理解してもらうためには、「プリペイド」と「ポストペイ」という仕組みについて説明しなくてはなりません。なお、これらには「ペイ」という表記が付いていますが、コード決済系のアプリではありません。

まず、「プリペイド(Prepaid)」とは、「前払い」を意味する言葉です。この仕組みを採用するスマホ決済(電子マネー)は、前回説明したようにアプリが財布代わりになるという例え話が、通用します。Suicaや、PASMO(パスモ)、nanaco(ナナコ)、WAON(ワオン)などの電子マネーを使ったことがある人ならば、理解しやすいでしょう。

プリペイド式の決済サービスでは、銀行口座やクレジットカード、現金などを使って、先に残高を増やす必要があります。これを「チャージ」と表現します。

例えば、「PayPayの残高がなくなったからチャージしなきゃ」といった会話は、財布代わりのアプリとして「PayPay」を使っており、そこに入れてあったお金(=残高)が無くなったから、銀行口座などからお金を使って、アプリ内のお金を増やさなければ…。といった意味で使われるわけです。

プリペイドのイメージ ▲財布に現金が入っていないと買い物ができないように、プリペイド式の電子マネーでは、残高が0円の状態では買い物はできない

プリペイドのイメージ ▲なので、3000円分の残高を、プリペイド式のスマホ決済のアプリへとチャージする

プリペイドのイメージ ▲残高の範囲で買い物ができる。例えば、1000円の決済をした後には、2000円の残高が残った状態になる

一方、「ポストペイ(Post Pay)」は「後払い」を意味する言葉です。この方式を採用する電子マネーでは、アプリ内に残高をチャージすることはありません。決済する度に、支払った金額が記録されていき、1カ月分の金額が後日まとめてクレジットカードに請求されます。

ポストペイのイメージ ▲一方、ポストペイ式では、そもそも「残高」という概念がない。基本的にクレジットカードとの紐付けが必要になる

ポストペイのイメージ ▲ポストペイ式では、1000円の買い物をすると、次月の請求額が1000円分増える

ポストペイのイメージ ▲後日、クレジットカードの引き落としとして、スマホ決済で使用した1000円分が加算される

ポストペイ式の決済サービスでは、ついついお金を使い過ぎてしまうこともあるので、浪費には注意しなくてはなりません。しかし、残高をチャージをする手間が省けることは大きなメリットとなります。

※このほかにも、デビットカードと同じように決済時に銀行口座残高から決済金額が引き落とされる「即時払い(リアルタイムペイ)」という方式もあります。かつてOrigami Payではこの方式が選択できましたが、同サービスはメルペイに買収され、すでにサービスを終了しています。一方、支払い手段にデビットカードを登録できるサービスは現在もありますし、銀行が提供するスマホ決済アプリの中には口座からの即時引き落としに対応しているものもあります。ただし、ここに触れると話が広がり過ぎてしまうので、本稿では割愛します。

 

■「iD」と「QUICPay」について知っておこう

面倒なチャージをしなくて良いポストペイ型の決済サービスを利用する場合には、FeliCaチップを搭載したスマートフォンでクレジットカードを登録し、非接触型の電子決済サービスを使うことになります。その際に、スマホ決済で実際に使うことになるのが「iD(アイディ)」と「QUICPay(クイックペイ)」というブランドです。

iDとは、NTTドコモが提供する電子決済サービスでポストペイ型の支払いにも対応しています。

iDの公式サイト画面 ▲「iD」の公式サイト

一方のQUICPayは、JCBが運営しているポストペイ型の電子決済サービスです。どちらのブランドを使うことになるのかは、選択するサービスや登録するクレジットカードなどによって決まってきます。

QUICPayの公式サイト画面 ▲「QUICPay」の公式サイト

iDの非接触決済が使えるように設定した場合は、iDに対応したレジで支払いが可能です。同様に、QUICPayを使えるように設定した場合は、QUICPayに対応したレジで支払いが可能です(※)。iDが使えない店舗もありますし、QUICPayが使えない店舗もあります。どちらが優れているというものではありません。

※厳密に言えば、スマホ決済におけるQUICPayには、1回あたりの利用上限金額がない「QUICPay+」(クレジットカードを登録した場合)と、1回あたり2万円までの利用上限金額がある「QUICPay」(プリペイドカード、デビットカードを登録した場合)に分かれています。
※このほかにもクレジットカードの非接触決済なども存在します。スマホ決済と連携するプラスチックカード、あるいはバーチャルカードを発行している場合には、対応店舗でVisaの「タッチ決済」、Mastercardの「コンタクトレス決済」などが使えることもあります。本稿では詳細は割愛します。

決済時によくあるやりとり ▲決済時によくある流れの一例。●●●の部分には、コード決済ならば「PayPay」や「au PAY」のようなスマホ決済のサービス名が入るが、非接触決済を使う場合には「iD(アイディ)」や「QUICPay(クイックペイ)」など支払い方法を示すブランド名が入ることもあると理解しておきたい

Apple Payに登録したQUICPay対応のクレジットカード ▲例えば、筆者がApple Pay(=「ウォレット」アプリ)に登録したau PAYカード(Mastercard)には、「QUICPay」のロゴが記されているのがわかる。同アプリ内でこのカードを選択し、認証をクリアした状態にすると、QUICPay対応のレジなどにかざして非接触決済での支払いが行える

 

■主要サービスはどれを選んでも3通りの決済方法が使える

それでは、代表的なスマホ決済サービスをピックアップしながら、非接触決済(iD/QUICPay)、コード決済、オンライン決済などの大まかな対応状況を把握しましょう。

ここでは、具体的なスマホ決済サービスとして「d払い」「au PAY」「PayPay」「LINE Pay」「楽天ペイ」「メルペイ」の6つを挙げます。

上記のように、主流のスマホ決済サービスでは、3つの支払い方法に満遍なく対応しているのが分かります。言い換えれば、どの決済サービスを選択した場合でも、大きく3つの支払い方法があると分かっていればいいのです。

※なお、非接触決済に関しては、所定のカードの発行や初期設定手順が必要になります。iDやQUICPay、電子マネー、クレジットカードのタッチ決済などの対応状況は、かなり複雑なので、上記の表では主要な選択肢を表記するに留めました。表中に記載したブランド以外にも、準備次第でクレジットカードのタッチ決済が使えるサービスなどはあると理解しておいてください。

ちなみに、各スマホ決済サービスについて補足しておきます。「d払い」はドコモ系のサービス、「au PAY」はau系のサービス、「PayPay」は関係会社にソフトバンクが含まれるサービスですが、どれも携帯会社との契約がなくても使えます。

次に「LINE Pay」はLINE Pay株式会社が提供するサービスです。LINEを使用しているユーザーならば利用可能です。ソフトバンク傘下のZホールディングスとの経営統合があった関係で、店舗でのコード決済に関するシステムについてはPayPayと共通する部分があります。一方、ユーザー視点ではアプリはそれぞれ独立しています。

そのほか、「楽天ペイ」は楽天ペイメイントが提供するサービスです。「メルペイ」は、フリマアプリの「メルカリ」に備わっている決済サービスです。

*  *  *

次回は、チャージや支払いの方法について、そして実際にスマホ決済を使う手順例について紹介していきます。

>> これからはじめるスマホ決済

 

<文/井上 晃

井上 晃|スマートフォンやタブレットを軸に、最新ガジェットやITサービスについて取材。Webメディアや雑誌に、速報、レビュー、コラムなどを寄稿する。Twitter

 

 

 

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