美しい光沢仕上げを目指して流麗なボディを研ぎ出し【達人のプラモ術<ジャガーEタイプ>】

【達人のプラモ術】
レベル
1/24 JAGUAR E-TYPE (COUPE)
02/04

さて今回は、前回キャンディメタリックグリーンで塗装したジャガーEタイプのボディの研ぎ出し(磨き)と、エンジンや足回りの製作を進めていきます。(全4回の2回目/1回目

*  *  *

ジャガーEタイプですが、世界一美しいスポーツカーと言われたボディのフォルムは、現在でも古さを感じないというか、流麗でセクシーなデザインはクラクラするほど美しい。

そして昨年、誕生60周年を記念して『Eタイプ60コレクション』と名づけられたクーペモデルとロードスターの2台ペアが6セット(合計12台)が、ジャガー・ランドローバー・クラシックによって復刻生産されています。

復刻されたのは1961年のジュネーブモーターショーでデビューした最初のEタイプと言われているモデルで、当時搭載されていた3.8リットル直列6気筒自然吸気エンジンも、リビルドではなく50年ぶりに再生産(できることがスゴい!)したそうです。価格は公開されていないのですが、クーペとロードスターの2台を同時に購入しないといけないのだそうで、年末ジャンボが…(以下略)。

▲復刻生産された60周年記念モデル。ガンメタグレ―のクーペとブリティッシュレーシンググリーンのロードスター。どちらも美しい!

 

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!@Modelart_MOVIE」も配信中。
 

■ボディの中研ぎ(磨き)

さて復刻生産されたジャガーEタイプのオーナーにはなれませんが、プラモデルならば貴方もEタイプのオーナー! ということでキットの製作を進めます。

前回はボディをラッカー系塗料で調色したキャンディメタリックグリーンをエアブラシを使って塗装しました。その後、ボディは乾燥ブースで3日ほど乾燥(常温ならば1週間)させています。しっかりと乾燥時間を取ることで、塗膜内の溶剤が抜けて塗膜が硬く強くなります(←これ大事)。

塗装は、サーフェイサーによる下地塗装→メタリックグリーン塗装→クリアーグリーン塗装と塗り重ねています。下地処理(サーフェイサー面の研磨処理)をしているので塗装面は一見すると平滑に仕上がっていますが、よく見ると部分的にゆず肌(塗膜がザラついている状態)となっていました。

作業行程的には、このあとクリアーでオーバーコート塗装することで、より光沢仕上げとするのですが、塗装面がざらザラついていては、クリアー塗装後も美しい光沢仕上げになりません。そこでざらついた塗装面を研磨して、より平滑に仕上げるにする作業(研ぎ出し)をおこないます。

▲塗装を乾燥させたボディ。光沢は出ているが、エンジンフードに写り込んだ撮影用のライトが歪んでいる(矢印で示した部分)ことから、表面が若干ゆず肌になっているのが分かる

▲まず細目コンパウンドを使って指を使い、ボディの凸部分には力を入れないよう注意しながら塗装面を研磨していく

▲研磨は直線(ボディの前から後へ)を意識しながら進めていく、円を描くような研磨は基本NG

▲エンジンフードはルーバーなど凸部分が多いので削りすぎないように注意しながら作業を進めたい。凹モール内に貼り込んで白くなったコンパウンドは、研磨後にぬるま湯でボディを洗いながら筆で落としてやればOK

▲コンパウンドを使って中研ぎが完了したボディ

▲エンジンフードに写り込んだ撮影用ライトの歪みが消えているのがわかる。研磨作業は焦らず根気よく行いたい

 

■コンパウンドって何?

この段階での研磨作業は、クリアーによる仕上げ塗装をより平滑に仕上げるための中間研磨(中研ぎ)となるのですが、研ぎ出しは目の細かい研磨シート(2000~3000番)とコンパウンドを使います。

コンパウンドはペースト状の研磨剤で、要するに液体のヤスリだと思ってください。塗装面を研磨して表面のキズを消すことで、艶を出すことができます。 ただしコンパウンドは塗装面の凹凸を削って平滑にすることにより艶を出すため、ボディのエッジ部分など研磨の際に力が集中する部分は、塗膜を削りすぎて下地が出てしまう場合があるので注意が必要です。

またコンパウンドによっては艶を出すためにワックス成分が含まれているものがあり、研磨後に塗装する場合、そのままだと塗料を弾いてしまうことがあるので、一度ボディを水洗いしてワックス成分を洗い落とす必要があります。

 

■研ぎ出し(中研ぎ)のコツ

コンパウンドを使った研磨はポリッシングクロス(極細繊維の研磨用布)などを使用するのが一般的ですが、達人は指で使ってコンパウンド研磨を行っています。

クロスでももちろん良いのですが、指を使うことでボディの凹凸部分でも研磨する力加減を調節できるので、凸部分を削りすぎてしまうといったトラブルを減らせます。

ちなみに指紋は、3000番相当の研磨シートと同じだそうです、また指を使った研磨はやりすぎると指紋がすり減っちゃうので要注意です。

 

■コンパウンドを使い分ける

コンパウンドは用途に応じて多くのメーカーから発売されています。用途に応じて、目の粗さの違いによって粗目、細目、仕上げ用など種類も数多く発売されています。メーカーは変わっても、基本的には粗目→細め→仕上げ用の順番で使用するのが基本です。

今回はタミヤとMr.ホビー、ハセガワトライツールのコンパウンドを併用して、細め→極細→磨き上げ用(セラミックコンパウンド)の3種類を使用しています。

また「実車用のコンパウンドは使えますか?」と質問を受けることがあるのですが、粒子の粗さが違うのでプラモデルの研ぎ出しには使えません。

▲「Mr.コンパウンド細目FINE」(770円)。塗装面のクリーニング用と表記されているように、粗目と仕上げ用の中間的な役割のコンパウンド(サンドペーパー3000番相当)。今回のようなゆず肌(塗装面の微細な凹凸)の研磨処理に適している

▲「タミヤコンパウンド(仕上げ目)」(660円)。細めコンパウンドの次に使用。粒子が非常に小さく均一な研磨材が使われており、研磨面にみがき傷を残さずに鏡面仕上げを得られる

▲今回中研ぎの仕上げに使用したハセガワ「セラミックコンパウンド」(1320円)。セラミック超微粒子が使われており、光沢とその仕上げや透明プラスチックの研磨にも使用できる。少量でも高い効果が得られる。使用に際しては同じハセガワの「スーパーポリッシングクロス」が推奨されているが、指を使った研磨でも問題はない
 

■エンジンの製作と塗装

ボディの中研ぎ作業を進めつつ、エンジンの製作を進めてきます。キットは3.8リットル直列6気筒自然吸気エンジンを少ないパーツでよく再現しているので、指定に沿って塗装を進めます。残念ながらプラグコードが省力されているので、次回車体にエンジンを組み付ける際に追加していく予定です。

作業を進めていくと、エンジンルームの隔壁やフレームなどがボディカラーで塗られていることが発覚したので、改めてメタリックグレーン×クリアーグリーンで塗装(インストをちゃんと読み込んでおけばボディの塗装の際に一緒に塗れたんですよ…反省)しておきます。

今回のようなキャンディメタリック塗装では同色であってもパーツ塗装を個別に行うと、微妙に色味が変わってしまうことがあるので、可能な限り同じタイミングで塗装することが望ましいですね。

▲キットのメッキパーツは質感がイマイチなので、メッキを落としてリペイントすることにした。メッキパーツは家庭用漂白剤(キッチンハイター等)に漬けこむと簡単に剥離できる

▲ランナーから切り出したエンジン、デフ、エキゾースト関係のパーツ。赤いカムカバーはメッキを落としたため

▲塗装を施したエンジン本体

▲カムカバーのバンクに収まるプラグコードが少量されているのが残念

▲インストの指定どおりに塗装したエンジン、デフとブレーキ、エキゾーストにリアサスペンションといったパーツ

▲完成後はほとんど見えない部分だが丁重に塗り分けておきたい

▲エンジンルーム内の隔壁などはボディカラーだったので、改めてメタリックグリーンで塗装。ここからボディと同様にクリアーグリーンを重ねていく

▲車体下側もセミグロスブラックでシャシー部分を塗り分ける

 

■今回のまとめ

ジャガーEタイプのボディは曲線で構成された美しいスタイル。それをさらに引き立てるのがキャンディ塗装です。曲面で美しくメタリック感が強調される塗装です。

そしてさらにクリアーを塗り重ねて鏡面仕上げとすることで、高級感が映える仕上がりを得られます。カーモデルやガンプラなどでも人気が高い塗装でもあります。ぜひチャレンジしてみてください。

次回はエンジン、そしてインテリの製作を進めつつ、さらにボディを美しく仕上げていきます。お楽しみに!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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