キャンプ場の場所選びをする際に必ず見ておきたい“土地の要素”とは

【放置キャンプ場開拓日誌 #05】

“居抜き”キャンプ場を復活させて自分たちの夢のキャンプ場に! ってな感じで来春オープンに向けてキャンプ場整備をせっせと進めております、ヤマケンと申します。

2022年9月から整備を進めて、はや12月。朝晩は氷点下7℃前後、日中も5℃程度の真冬状態に突入しました。

僕たちのキャンプ場「-be-北軽井沢キャンプフィールド」のある北軽井沢には、これまでキャンプをしに何度も訪れたことがあり、5年ほど前にはひと冬だけですが薪割りの仕事をしながら生活したこともあります。

▲10月末には霜が降り、12月には永久凍土か?と思うほどガチガチの場内の地面

その時は20代半ばで、一緒にいる同年代の仲間達もたくさんいたから、「寒いけど全然余裕じゃん!」でしたが、30代半ばでひとり黙々作業する日々だと「寒いけど色々寒いじゃん!!」と、心の余裕がなくなってきます。トライしてみて思うリアルな感想です。

そんな余談は置いておき、今回は「キャンプ場をやる前に見ておきたい、土地の要素」についてお話できたらと思います。簡単に言えば、「キャンプ場の土地選びをするときに、ここは絶対に見ておいたほうが良いかも!」というお話です。

■最高のロケーション…! であってもままならぬ土地もあります

▲どこか北海道のような雰囲気のある「-be-」のキャンプサイトは僕たちの理想的なランドスケープ

「草原の広々した雰囲気がいいなぁ」「林間の静かな空気感が好き」「富士山ドーン!が最高」「夜景が抜群の場所こそ至高」というように、キャンパーの皆さんはそれぞれお気に入りのキャンプシーンというかロケーションを持っているかと思います。

そして、皆さんの中にキャンプ場を始めたいという方がいれば、その「自分の理想のキャンプ像」を元にキャンプ場予定地を探すことになると思います。

その際に、絶対に気をつけたほうが良いポイントがいくつかあります。そのいくつかのポイントを天秤にかけた上で土地を選ばないと、お金も時間も心ももっていかれますから。

実際にこれまで茨城県、栃木県、群馬県、千葉県、静岡県で土地を探したり、「-be-」の整備を始めてから「ここを最初に検討しておくべきだった…」と思ったりしたことをベースに紹介していきます。

 

■人里から離れすぎているとインフラ整備が大変だぞ

▲どうせだったら大自然の中でキャンプ場を!となるが、必然的にインフラ整備が難しい土地も多くなる

せっかくキャンプ場をやるんだったら、人里離れた静かで豊かな自然の環境がいいなぁ。そう思うことでしょう。キャンパー的にもそういうキャンプ場に出合うと「うぉー! キャンプしにきたぞー!」感が高まって非常に気分が良い。

ですが、ここの塩梅を間違えると大変なことになります。

キャンプ場を開くにあたっては、「キャンパーさんが飲める水の確保」や「トイレや洗い物の排水」「何はなくとも電気は必須」で、「管理運営に必要なネット環境」も必要です。

▲場内管理に必須の管理棟にトイレや炊事場。インフラが整わないとキャンプ場は成り立たず…

あまりに人里から離れすぎていると、上下水の確保と処理も、電気を引くことも、ネット環境の整備なんかもかなり高いハードルになります。

上水用に井戸を掘るにしても、飲用可能な水が出るかどうか。下水も浄化槽を設置するにしても排水先も検討しないといけません。電気も遠すぎる場合は自費負担が高くなるし、そもそも建物が建っていないと電気を引いてもらえない可能性もある。

上水・下水・電気・ネットはキャンプ場運営に欠かせない要素ですが、これが確保できる、あるいはしやすい土地かどうかは絶対に確認しましょう。このインフラ整備はキャンプ場の生命線です。

 

■山林をキャンプ場にするなら考えることが山ほどあります

▲「自然の中に身をおいている」感覚にとにかく癒やされる林間サイトはキャンプ場の中でも人気のロケーションのひとつ

キャンプ場の人気のロケーションとして「林間サイト」があります。いいですよね。揺れる木陰の下でコット(キャンプ用のベッドのこと)を出して、お昼寝。最高です。

というわけで、「林間サイトにしたいから森林を選ぶぞー!」という場合は、「木の様子」を慎重に確認しましょう。谷地(やち)はキャンパーさんの快適さにつながる要素が強くありますが、森林の状態はキャンパーさんの安全にも関わってくる重要な観点です。

いろいろな理由が重なって、荒れてしまった里山は日本全国にたくさんあります。よくよくきれいに整備された山林を購入なり、賃貸で使えるのであればいいですが、おそらくはそうではない土地が候補に入りやすいかと思います。

▲立ち枯れした木を何本も伐採した。菌が入り込み徐々に腐りが進行し、終いには倒れてしまう

そういった土地は、木々が混み合って生育していることが多く、背は高いのに細い木が乱立していたり、木の中に菌が入り込んで立ち枯れ(立ったまま枯れた)した木がたくさんあったりします。シンプルに寿命が近い木もあるでしょう。

これらの木々は風に弱いので、強風でたやすく折れてしまう危険性をはらんでいます。実際、数年前の大型台風が来た際、当時働いていたキャンプ場周辺にあった荒れた杉林は片っ端から折れてしまいました。

▲木は元気でも風や雪などの影響で途中から折れる枝も。届く範囲なら処理はしやすいが、10m以上の場合は高所作業車が必要

また、木は元気でも枝が枯れて折れている場合も多い。パッと見では雰囲気が良く、豊かな森林に見えても、よくよく木の上の方を見てみると、折れかかっている太い枝や、すでに折れているけど他の枝に引っかかって落ちていないだけの枝も実はたくさんあります。

このように森林全体の健康状態と、個別の木々の様子、頭上の枝たちをしっかり観察した上での場所選びが必要です。

僕たちは「-be-」を借り受けるにあたって、それ以外の要素(サイトの状態や雰囲気、施設の状態、商圏との距離など)を検討した一方で、この木々の状態の確認が甘かった。

場内作業をしながら状態を観察していると、立派そうに見える木が実は枯れていたり、10m以上高い位置で枯れて落ちかかっている枝を見つけたり、そんなことばかりです。

すでに林業のプロにお願いして伐採してもらいましたが、立ち枯れしている木は8本ほどありました。他にも危なそうな木は春先に順に切ろうと思っています。

▲無料の焚き木として提供しようにも無限に枯れ枝が発生していて何かしらの処分方法を検討しなければいけない現実

他にも荒れた林では倒木の処理も必要になりますし、大量の枯れ枝の処分方法も事前に検討すべきです。割って薪にしたとしても2年ほどは乾かさなければ使えません。キャンパーさんに「無料の焚き木」として開放したとしても、保管・乾燥のための場所を確保しないといけません。産業廃棄物として処理するとしても量が出るので決して安くはありません。

実際に「-be-」でも、切り倒した木や2年半のうちに落ちた枯れ枝は無限にあって、その処理に悩まされています。ウッドチッパーを借りてきてウッドチップにしたいなぁ。

このように、事前に森林状態がどうなっていて、どういう処理が必要になるのかを事前に検討しておくと「うわ、これ考えておくべきだった。まじかー…」というしんどさを回避できます。

▲太い木ほど根も強く張るため、抜根するのにも時間も手間もかかる

ちなみに木は切ったら終わりではなく、根っこも抜かなきゃいけないんですが、これもまた処理が大変なのです…。

■おしなべて注意したい土地の谷地(ヤチ/ヤジ)

また、「谷地」ではないかも注意しましょう。これは簡単に言い換えれば「湿地」です。

普段まちなかで生活していると感じることはほぼありませんが、地下には水脈があります。住宅街になっているようなエリアでは、この水脈は地下深くにあって、そもそも設置された各種排水設備の力もあり、水が急に湧き出て大変! なんてことはほぼありませんよね。

しかしこの「谷地」は、その水脈が地面から浅いところにある土地で、1mも掘ればすぐに水脈にあたってしまうようなことがあります。排水も悪く、地面が保水した状態が続きやすい場所と言えます。

また、敷地内に高低差がある場合、周辺の土地に比べて低い土地には周りの水が集約しやすく、これも谷地になりやすいので注意が必要です。

▲「-be-」ではもともと排水設備が備わっていたがそれが潰されていて水の処理が大変なことに。職人の友人に助けてもらいながら手探りで作業を進めている

谷地の場合は、よっぽど大規模な土木工事をしないと話になりません。

最初から湿地になっているところはそもそも候補に挙がらないとは思いますが、厄介なのが「晴れていると湿地感のない谷地」の存在です。

普段は少し湿度はあるけど、水気は感じないような土地なのに、雨が降ると一気に谷地の性質を全面に発揮してくる土地もあるのです。

▲お隣のおじさんが見るに見かねて半日で道路を仕上げてくれた。「重機だけ借りて自分で…」と思っても道の整地すらままならない

なので、晴れの日だけでなく雨の日もしっかりと観察することをおすすめしますし、不動産屋や地元の方とコミュニケーションを取れるなら、どんな土地なのかを聞いて回ると良いでしょう。

 

■どの都市圏が商圏になりそうかが重要

言わずもがな、商圏となる都市圏がどこで、どれくらいの時間で来られるか、来やすいルートになっているかなどはどうやっても検討すべきポイント。考え方次第ではありますが…。

どれだけいいキャンプ場があったとしても、行くのに4時間も5時間もかかってしまうような場所、整備されていないようなひどい山道を通るような場所だと、それらを覆せるくらいのよほどの魅力がなければ行きにくいですよね。

▲「-be-」は東京から3時間前後、群馬県内だと高崎・前橋エリアから2時間程度の距離に位置している

そもそも近くにどれだけの規模の都市圏があって、どれだけキャンプ需要があるかを事前に情報収集しておかないと、年間の収支計画も見えてこないので、お金を借りるにしても借りるための資料も作れません。

一般社団法人日本オートキャンプ協会が毎年発行している「オートキャンプ白書」をはじめ、キャンプ業界の動向を追える資料は少しずつ増えています。

それらを参考にしつつ、理想の場所選びを進めるのがキャンプ場オープンへの近道です。

▲樹種も多ければ訪れる鳥たちもバラエティ豊富。冬になってはじめてお会いできたフクロウ。寝ているところを起こしてしまったらしい

* * *

というわけで、キャンプ場の場所選びをする際に必ず見ておきたい土地の要素のお話でした。

これまでたくさんの土地を見て回ってきましたが、完全に理想の場所を探すのは難しい。商圏から理想的な距離感だけど、インフラを整えるのにお金がかかりすぎる。ランドスケープは最高なのに立地が悪いなど、あっちを立てればこっちが立たずなことばかりです。

土地をいろいろ見ていると他にも検討すべき要素が見えてくるのですが、それらに予算も含めて多角的に検討した上で、“いい塩梅”がどこかを探り続けるのが、キャンプ場の土地探し。

僕たちの「-be-」も谷地の要素があったり、真冬は寒すぎるので閉場せざるをえなかったり、運営にマイナスになる部分はもちろんあります。

ですが、それ以上にたくさんの鳥達が訪れる樹種の多い豊かなフィールドがあって、静けさの中で眺める満点の星空が最高なんです。ゼロからインフラ整備をする必要がないのが決め手のひとつでもありますが。

いよいよ「誰が読むの?」を極めそうな謎記事になりましたが、次からはキャンプ場整備をしている中で直面したorしているしんどいリアルな話でも少しお話できたらと。

それでは、今回も最後までご覧いただきありがとうございました!!

「-be-北軽井沢キャンプフィールド」
〒377-1411 群馬県吾妻郡長野原町応桑1984-160

 

>> [連載]放置キャンプ場開拓日誌

<文/山口健壱>

山口健壱(ヤマケン)|1989年生まれ茨城県出身。脱サラし、日本全国をキャンプでめぐる旅ののち、千葉県のキャンプ場でスタッフを経験。メーカーの商品イラストや番組MCなどもつとめる。著書に「キャンプのあやしいルール真相解明〜根拠のない思い込みにサヨウナラ」(三才ブックス)

 

 

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