近年、注目されている歯科矯正の方法として、「マウスピース矯正」という言葉を聞く方も多いと思います。歯科矯正と言えば、これまではワイヤーを常に歯に装着する治療法が主流だったため、いまでも聞きなれない方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、アジア9拠点で展開するデンタルケア企業の日本法人「Zenyum Japan」の代表取締役社長 伊藤祐氏に、日本におけるマウスピース矯正についてご寄稿いただきました。
マウスピースのトレンド化
「矯正」という言葉を聞いたとき、ほとんどのみなさんは歯に金属の装置を付け、動かしていく「ワイヤー矯正」をイメージするのではないでしょうか。小中学生のとき、痛い思いをしながらワイヤー矯正をしていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
現在、アメリカでは「ワイヤー矯正」ではなく、透明で目立たないマウスピースを用いて矯正を行う「マウスピース矯正」の人気が徐々に高まっています。
アメリカに住んでいる友人に矯正について聞いてみたのですが、「特に15歳以上になると、ほとんどの人がマウスピース矯正を選択している」とのことでした。
「目立たない」「痛みが少ない」「着脱可能」というメリットは非常に大きく、適用可能であるならワイヤー矯正よりマウスピース矯正を選ぶ方が大半だそうです。
アメリカだけではなく、その流れはアジアにも来ています。多数のマウスピース矯正ブランドがしのぎを削っており、日本でも徐々にマウスピース矯正が流行しています。既存のワイヤー矯正に比べてメリットが大きく、日本においてもより主要な治療方法になっていくでしょう。 Zenyum(ゼニュム)はアジア9拠点で展開しているデンタルケアブランドであり、コア事業としてマウスピース矯正サービスを提供しています。LVMHと戦略的提携関係にある投資ファンド「Lキャタルトン(L Catterton)」や、世界最大規模のベンチャーキャピタル「Sequoia Capital」などから総額5600万ドル(約61億3000万円)の資金を調達し、LinkedInによる「シンガポールのトップスタートアップ企業」に3年連続で選出されています。
ゼニュムの日本法人「Zenyum Japan」では、コア事業であるマウスピース矯正サービスを2021年9月から提供しています。
マウスピースが支持を得られないのはなぜ?
私が日本法人代表としてゼニュムを日本で展開していく際、「このサービスは素晴らしい!」と興奮した一方、「すでに似たようなサービスを展開している企業がたくさんあるな…」とも思いました。
ゼニュムは2018年にシンガポールで立ち上がり、その後急速にアジア各国に展開していたのですが、日本での展開は2021年から開始したので、すでに似たコンセプト、価格帯でマウスピース矯正を提供している企業が数多くありました。
また、日本矯正歯科学会が2022年6月に 「マウスピース矯正には重大な懸念がある」という異例の声明発表もしているなど、業界自体がまだ支持を得られていません。
これは冷静に考えるとおかしなことです。
・マウスピース矯正自体は、非常にメリットが多い革新的な矯正サービスである
・さらに、マウスピース矯正サービスに参入している企業が多いということから、価格/機能両面でサービスの改善はされているはず
・それにもかかわらず、業界全体として信頼を得るに至っていない
なぜマウスピース矯正が支持を得ることができないことができないのか。私としては、大きく2つの可能性があると考えます。
1点目は、歯科医の介在がない状態でマウスピース矯正を進めてしまうケースがあること。2点目は、リーズナブルなマウスピース矯正における歯の可動本数が少なく、満足のいく結果を出せていないケースがあることです。
1点目については、日本において、そのようなケースはほぼないはずです。もし本当に歯科医の介在がない形でマウスピース矯正を進めてたら、それは本当に危険ですし、怪しまれるのも無理はありません。
ただ、私が知っている限り、「完全に歯科医をシャットアウトし、マウスピース矯正を進める」というコンセプトのマウスピース矯正サービスブランドは、日本においては存在しません。
私は、マウスピース矯正が支持を得ていない理由の2点目として挙げた「リーズナブルなマウスピース矯正における歯の可動本数が少なく、満足のいく結果を出せていないケースがあること」が、「マウスピース矯正はメリットが多い」「すでに多数の企業が参入」という状況にもかかわらず「業界の信頼度が低い」の答えではないかと考えます。
マウスピース矯正について興味を持ち、調べたことのある方は、「月額XXX円からできる、安い」「通院回数は最小限」「比較的痛みが少ない」「いつでもチャットで相談可能」など、正直「どこも似たような感じだな…」という印象を持たれるのではないでしょうか。
ただ、いくら安かろうが、便利だろうが、そもそもの使用理由である「歯並びを安心安全にきれいにしたい」という問題が解決できなければ、顧客として満足することはできません。
マウスピース矯正において重要なポイントの1つは、「歯の可動本数」です。歯の稼働本数が多ければ多いほど、きれいな歯並びを実現できる可能性が高くなります。そのため、歯の可動本数が多いと治療計画が複雑になり、工数やコストが増していきます。
ゼニュムはすでに創業から4年半以上経過し、かつ9つの拠点でビジネスを展開しています。その結果、多数の症例データが集まっており、非常に精密かつ予測可能性の高い治療計画を作成することができます。
また、内部に矯正専門医のチームを抱えており、内製化によってコストを抑えることにも成功しています。
そのため、弊社では32万4,500円というリーズナブルな値段にも関わらず、「上顎10本、下顎10本の合わせて20本」を動かすことができる革新的なマウスピース矯正サービスを導入し、お客さまから好評を博しています。
また、「合わせて20本を動かす場合」でも治療が難しい場合、矯正専門医と提携し「すべての歯を動かせるサービス」を提供することで、歯並びに悩む方に、「リーズナブルで便利なだけではなく、圧倒的に結果を出せるサービス」とすることができました。
マウスピース矯正自体は非常に革新的なサービスであり、日本でもアメリカ同様にどんどん増えていってほしいと考えています。一方で、「本当に治るのかわからない」「怪しい」という現状のイメージのままでは、せっかくの良いサービスが広がらずに終わる可能性もあります。
マウスピース矯正は多くのメリットがあり、今まで歯並びに悩んでいた方々を救える意義のあるサービスだからこそ、日本でも確実に結果を出し続ける企業が増えることを心から望んでいます。
<著者プロフィール>
伊藤佑
Zenyum Japan
代表取締役社長アクセンチュア株式会社およびフロスト&サリバンジャパン株式会社において、約9年コンサルタントとして経験を積んだ後、OYO Japan株式会社において戦略企画室長を務める。その後、現職に就任。
- Original:https://techable.jp/archives/187852
- Source:Techable(テッカブル) -海外・国内のネットベンチャー系ニュースサイト
- Author:はるか礒部
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