みんな大好き『サンダーバード』の「3号&発射基地」を最新キットで楽しむ!【達人のプラモ術<サンダーバード3号&発射基地>】

【達人のプラモ術】
アオシマ
1/350 サンダーバード3号&発射基地
01/04

今回は、知らない人はいないであろう“サンダーバードメカ”を製作します。なんで今、サンダーバード? と言われるかもしれません。日本で放送が始まった1966年から数えて55年目となる2021年に“サンダーバード55周年プロジェクト”が企画され、その目玉として劇場版『サンダーバード55 GOGO』(2022年1月公開)が話題となり、さらにプラモデルも新作が発売され注目を集めました。もちろん子供時代に数えきれないほど作り倒したサンダーバードメカが大好きだから、というのが一番の理由ではあります。(全4回の1回目)

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTubeでは「プラモ作りは見てナンボです!@Modelart_MOVIE」も配信中。

 

■サンダーバードとは

詳しく解説するとキリがないのですが、あらためて説明すると、1965年にイギリスで放送されたTV番組(日本では1966年よりNHKが放映開始)で、英国テレビ界の名匠ジェリー・アンダーソンの代表作にしてスーパーマリオネーションの最高傑作と言われています。人形の独特な動きと、1号から5号までの主役メカをはじめレスキューメカやゲストメカなど近未来的なマシンのリアルな描写は、いま見ても古さを感じさせません。当然ながら当時日本でも子供たちをTVの前に釘付けにした作品です。TVシリーズとは別に、劇場用長編も2本製作されています。

そして、当時イマイが発売したサンダーバードメカのプラモデルは空前の大ヒットとなりました。またメカデザインや、これでもかというくらい汚されたメカ達のリアルなウエザリングは、のちの国内特撮作品に多大な影響を与えています。

2004年には実写版でリメイクもされ、2015年にはCGアニメーション『サンダーバード ARE GO』として50年ぶりに復活。そして2021年、イギリスの熱狂的ファンによるクラウドファンディングを経て、当時ラジオドラマとして書かれた3つのエピソードをベースにオリジナルの撮影手法を完全再現して映像化したサンダーバードの新作『サンダーバード55 GOGO』が、日本特撮映画の重鎮・樋口真嗣による構成で劇場作品として公開され話題を集めました。

▲サンダーバードと言ったらプラモ! と擦りこまれている子供(現オジサン)は多いですよね。小松崎茂画伯の迫力あるボックスアートに魅せられました。こちらは現在アオシマが発売している「超特大サンダーバード2号」のボックスアート

 

■キットの製作

いやマジでサンダーバード(以下TB)のプラモを語るには、1日じゃ足りない。プラモの歴史ここにあり!なのですが、何はともあれキットを製作していきましょう。

今回製作するのは2023年1月に発売されたばかりの「1/350 サンダーバード3号&発射基地」(6380円)です。1号でも、ダントツ人気の2号でもない、3号! 大気圏外救助活動を主な目的とする再使用型の宇宙往還機。通常はTB-5号への物資輸送および乗員交代を行う機体です。劇中で救救助活動を行ったエピソードは3話のみ。

劇中でもパパに「3号の出番はない」とかよく言われちゃってパイロットのゴードンはやさぐれちゃうし、主役を務めたともいえる第3話『ロケット“太陽号”を救え』では3号自体が危機に陥ってしまうという、悲運の主役メカ(のひとつ)なんですね。

聞けばTBメカのプラモデルの中で最も人気がないのが4号、次が3号だそうです。

そう言われてみれば、旧イマイのプラモだと5号(宇宙ステーション)のオマケ扱い(先端を外すと鉛筆立てになる…って主役メカなのに)だったし、キットにも恵まれていない不遇のTBメカです。

アオシマからはTB-1号発射基地とかTB-2号コンテナセットとか魅力的な最新キットも出ておりますが、1号は最近作ったばかりだし(オイ!)、2号は過去に何機作ったかわからないし超合金もあるし(オイ!×2)、色々考えて…ロケット大好きなので3号にしました。

キットはアオシマによる新金型!で、単体では2014年発売されていたものです。今回は新たに劇中で登場する地下格納ベイが追加され、リアルなジオラマを再現できるというものになっています。劇中では、地下から発進してドーナツ状のラウンドハウスから宇宙に飛び出していくんですよ。

▲完成イメージ。1/350スケールでTB-3号の格納庫がリアルに再現されている。3話で登場する電波発信車は3号に積まれているワケではないが、関連メカということで付属している

ちなみにTB-3号は設定だと全長87.43メートルもありTB-5号に次ぐサイズです。キットはそれを1/350(約25センチ)で再現しています。

いや~いいですね、デカい3号! 新キットなのでディテールもばっちり。発射ベイ内部は劇中のそれを正確に再現しており、製作では一部エッチングも使う本格的な仕様となっています。

▲TB-3号自体のパーツはこれだけ。色プラにはなっているがやはり塗装は必須。ストライプ関係がデカールになっているのがありがたい

▲こちらが格納庫のパーツ

▲格納庫の壁面部分は、印刷された壁面の台紙をスチレンボードに貼り込んで再現

▲細かい手すりやレールはエッチングパーツで再現されている

 

■パーツ数では3号自体がいちばん少ない(笑)

ジオラマベースと比べ、3号自体はパーツも少なく実にあっさり。サクサクと組めば基本塗装を含めて1日で出来ちゃいます。それでは面白くないので、今回はITC(サンダーバードの製作プロダクション)の特徴でもある、リアルなウエザリング(汚し塗装)を機体に施していきます。

▲機体の成形色がオレンジなので、パーツの光の透過を防ぐため内側に黒を塗装

▲機体色が悩ましいところ。成形色はオレンジ過ぎる気がするので、箱絵のプロップモデルを参考に調色した赤みの強いオレンジ色(自身の好み)で塗装している

▲ニンジンの色が近いという説もある

▲調色した赤で塗装後、プロップモデルを参考にトーンの異なる赤でパネル風に各部を塗り分けていく

▲胴体中央の放熱板?は18枚あるので1枚ずつ塗装。塗装指示だとブルーになっているが正しくはグレーだ

▲後端にイエローのデカールを貼り込んでいく

▲基本塗装が完了した各パーツ

▲3基のエンジンを装備した安定板を正確な位置に接着するためのガイドがありがたい

▲機体からエンジンに繋がるパーツの整流板?は別パーツ化されているのでシャープに仕上がる

▲組み上げた機体。このあとさらにデカールを貼り込んでいく

 

■TB-3号の完成

ここまでの製作時間は塗装を含めて10時間ちょっと。ここからさらにウエザリングを施していく。リアルな汚れの再現がサンダーバードメカの真骨頂だ。

 

■サンダーバードプラモデルの歴史(ちょっと長文)

プラモデルが発売されたのは1958年(昭和33年)、そしてサンダーバード(以下TB)が日本で公開されたのが、プラモデル第1次全盛期の冷めやらぬ1966年(昭和41年)ということもあり、TBメカがプラモデルとなるのは当然の成り行きでした。

TBプラモを最初に手掛けたのは、当時キャラクタープラモの最大手である今井科学株式会社です。高額だった正規のライセンスを取得、1966年(昭和41年)末に第1弾となるTB-2号ゼンマイ走行版が発売されました。劇中と同じようにコンテナを外すことができ、中には第1話に登場する高速エレベーターカーが入っていました。これが一大ヒットとなり、以降TBプラモが続々発売されます。

当時のキットはゼンマイ走行、モーターライズに加え、TBメカの特徴をよく再現していましたね。1号はゼンマイ走行に加えて翼が開き、なぜかバネで機首が飛ぶというギミックまで付いていました。

1番人気の2号はモーターライズやさまざまなサイズが発売され、劇中で登場するレスキューメカのミニプラモが付属するコンテナセットも大人気でした(コンテナセットは当時それなりに高価だったので誕生日とか正月でないと買えませんでしたけどね)。

あと高価だったのが1968年(昭和43年)発売の「サンダーバード秘密基地」。モーターライズで1号・3号がスイッチにより自動発射、そして2号はスイッチを入れるとヤシの木が倒れてカタパルトが上がり自動で発進するという夢のようなギミックを持つ豪華さ。当時の価格で2200円は子供のおこづかいでは手が出ない憧れのキットでした。

そしてレスキューメカの中でダントツの人気を博したのがモーターライズ走行とリアルにドリルが回転するジェットモグラでした。完成させてすぐ砂場に持っていき、地面に潜らせようとして、砂がギアボックスに入って壊してしまった子供が多数出たそうです。

TBプラモを発売して大成功した今井科学は1969年(昭和44年)に突然倒産します。TBのあとに公開されたスーパーマリオネーションドラマ『キャプテンスカーレット』の版権を獲得し数多くキットを発売しましたが、これが不発に終わり多大な負債を抱えてしまったようです。1966年(昭和41年)にウルトラマンの放送がスタートしてブームとなり、またキャプテンスカーレットのストーリーが難解で子供に不評だったことも売り上げ不振の要因と言われています。

その後、TBの金型の一部はバンダイが受け継ぎました。1970年(昭和45年)と1974年(昭和49年)には、東京12チャンネル(現在のテレビ東京)でサンダーバードが再放送されており、今井科学も昭和46年に業務を再開。残った金型でTBプラモを発売し、再ブレイクを果たしています。しかし今井科学は2002年に再び営業を停止。現在はアオシマから、旧イマイのキットをはじめ新金型によるTBメカが発売されています。

※参考文献
日本プラモデル工業協同組合編 (著)『日本プラモデル50年史 1958-2008』
伊籐秀明 編著 『今井科学キャラクタープラモ全集 1959~1969』

▲我が家のクローゼットから発掘したイマイ製の「サンダーバード2号(特大)」。ロゴマークを見るに同社が再建した際に発売されたキットだと思われる

▲今回ジェットモグラとどちらにしようか悩んでTB-3号をチョイス。ジェットモグラ(アオシマ旧パッケージ版)は過去3台作っているが、改めて作りたいキット候補

▲こちらもイマイ製TB-2号。ロゴマークが旧イマイのものだが、中身は初版キットのまま(成型色が違う)でゼンマイ走行ギミックが廃されたもの

▲アオシマから2022年発売された『サンダーバード1号&発射基地』

▲こちらも2022年にアオシマから発売された『サンダーバード2号コンテナドック』

次回はTB-3号のウエザリングとジオラマベースの製作を進めます。お楽しみに!

Thunderbirds TM and (c) ITC Entertainment Group Limited 1964, 1999 and 2020.Licensed by ITV Ventures Limited. All rights reserved.

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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