北欧は世界有数のコーヒー消費量が多い地域です。
スウェーデンでは、コーヒーが普及した18世紀には何度か“コーヒー禁止令”が発令されたそうですが、にも関わらずスウェーデンでは現在も毎日、午前と午後に仕事や勉強の手を止め、家族や仲間との時間を楽しむコーヒーブレイク=フィーカという文化を大切にしています。
そんな生活にコーヒーが深く浸透しているスウェーデンでの伝統的なコーヒーの淹れ方が“焚き火コーヒー”。山仕事をする人たちが、フィールドで水をくみ、粗挽き豆をいれたヤカンを焚き火にかけて煮出していたそうで、パーコレーターやドリッパーなんてものがない時代のコーヒーの楽しみ方です。
必要な道具はケトルと焚き火台だけだから、あまり小物を持っていきたくないキャンパーにとって実に魅力的な淹れ方でもあるんです。
スウェーデン式の焚き火コーヒーを現代に復活させたのは「レンメルコーヒー」なんですが、なにも「レンメルコーヒー」の豆とケトルを使わなくても焚き火コーヒーはできるはず。
ただ、期待以上に不安が大きいのも事実。
なんてったって“煮出す”わけですから、パーコレーターに似た味になるのかも? 焚き火にパーコレーターをかけた人ならイメージできるでしょうが、ポコポコがおもしろくて眺めているとあっという間に飲み時を佚(いっ)してしまい、香りもなく苦いだけのコーヒーになっちゃうんです。
そこで&GP編集部のコーヒー好きでコーヒーマイスターの資格持ちである円道が、焚き火コーヒーをおいしく淹れるにはどうすればいいか、試してみました。
■焚き火の熱に負けないケトル
▲THE IRON FIELD GEAR「タキビケトル」(7700円)。容量2.3L
樹脂や木などを使っていない焚き火の熱に強いケトルが必要です。THE IRON FIELD GEAR「タキビケトル」はホーロー製で、名前の通り焚き火にかけても穴があくこともどこかが溶けることもありません。
スウェーデンのちょっとレトロな家庭用ホーローケトルにも似たようなデザインがあり、雰囲気よし。
■円道的焚き火コーヒーの淹れ方
コーヒーにはいろいろな淹れ方があり、自分好みの淹れ方を探求するのが楽しいのはご存じの通り。
焚き火コーヒーも同じで、焚き火コーヒーの伝道師である寒川一さんは沸騰後に冷水を入れたり、ケトルを持った腕を回して遠心力で豆を沈めるし、火にかけたりおろしたりを繰り返す人もいます。要するにお作法は人それぞれなので、まずは円道が思い描く焚き火コーヒーを、好きなように淹れてみました。
①ケトルに粗挽きの豆(中煎り)をたっぷり入れる。シェラカップ半分くらい
②ケトルに水を注ぐ。目分量でおおよそ1L分
③焚き火にかける。焚き火の真上というよりは、脇に置いて時間をかけて沸騰させる
④沸騰したことを確認したら火から下ろして、そっとカップに注いで飲む
「焚き火コーヒー」と聞いて、だれもがイメージする淹れ方です。
「挽いた粉を直接お湯に入れるというのは、豆の品質チェック時に行う“カッピング”と同じなんですが、カッピングの場合は粉にお湯を注ぎます。対してスウェーデンコーヒーは水に粉を入れて沸かすので、沸くまでにある程度コーヒーが抽出されるってことなんですよね。いやー、予想に反してかなりおいしかったです」(円道、以下同)
いろんなお作法で楽しめばいいけれど、やらないほうがいいことは?
「煮出しちゃうとエグみも出ちゃいます。沸騰したらすぐに火から下ろすほうが、おそらくおいしくなるのでは。粗挽きを使っているのは、長時間、粉が水に触れるからでしょう。粗挽きだと粉の表面積が小さくなるので、濃くなりすぎない。濃くて苦味のあるしっかりしたコーヒーにしたいなら、時間をかけて煮出すよりは粉を中挽きとか中細挽きにするといいかもしれません。そしてポイントは沸いたら火から外す」
「ヤカンを焚き火にダイレクトというワイルドさがいいし、面倒なことをしたくないって人にはぴったり。だって挽いた粉を持っていけばいいだけだから。大人数で、大量にコーヒーを淹れたいなんてときにオススメですね」
一見、雑な淹れ方ですが、繊細にもできる。自分が家元になった気分で焚き火コーヒーを追求してみませんか。
<取材・文/大森弘恵 写真/田口陽介>
大森弘恵|フリーランスのライター、編集者。記事のテーマはアウトドア、旅行、ときどき料理。Twitter
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/527545/
- Source:&GP
- Author:&GP
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