衝突安全性や空力性能を高めた現代のクルマ。プレス技術が向上し、ライトも凝った造形が可能になったことで、複雑な表情をデザインできるようになっています。ただ、「もっとシンプルなデザインが好き」「今のクルマは顔が怖い…」などと思っている人もいるでしょう。近年の旧車ブームは最新モデルよりも昔のクルマのデザインが好きという人が支えていたりもします。
ヘリテージカーの祭典である「オートモビルカウンシル2023」の会場には、「このカタチで現代に蘇ってくれたら絶対に買っちゃう!」というモデルがたくさんありました。
ここでは筆者と&GP編集部E氏で「これ、復刻してほしいよね」という話になったモデルを紹介します!
■色使いも愛らしい!ホンダ初の量産市販四輪車
▼ホンダ T360
ホンダ黎明期の四輪車というと、乗用モデルのN360やスポーツモデルのS500やS600を思い浮かべる人もいるはず。しかしホンダが初めて世に送り出したのは、1963年8月に発売された軽トラックのT360でした。
実は同時期、ホンダはスポーツモデルの開発を進めていて、1962年6月に行われた展示・試走会では本田宗一郎氏が軽スポーツのS360で鈴鹿サーキットを走っています。しかし社内で「需要が高いのは乗用車ではなく商用車だ」という意見があり、まずはT360を発売、同年10月にS500が発売になったそうです。
軽スポーツのS360が発売されることはありませんでしたが、ホンダはT360に日本初となる直列4気筒DOHCエンジンを搭載。エンジンは荷台の下に配置するミッドシップレイアウトになっています。これは後のアクティ・トラックでも継承されました。
セミキャブオーバースタイルのボディ、ボンネットに大きく描かれた“H”のロゴ、淡いブルーと白のコントラストなど、今どきのアウトドアフリークからも「かわいい!」と人気が出そうなルックスは、ぜひとも復刻してほしい!
さすがにT360を復刻するのは簡単ではありませんが、ホンダは2018年にT360の誕生55周年を記念して、アクティ・トラックにT360をイメージさせるカラーリングを施した特別仕様車“スピリットカラースタイル”を発売しました。新車時価格は113万5080円〜126万4680円でしたが、現在は170万円以上の価格で取引される、マニアックな一台となっています。
■旅をテーマにデザインされたパイクカー第二弾
▼日産 パオ
1987年に登場したBe-1からスタートした日産のパイクカーシリーズ。第二弾として1989年に登場したのが、このパオです。
初代マーチをベースに、アドベンチャーをテーマにしたデザインを盛り込んでいるのが特徴で、上下二分割で開閉可能なリアクォーターウインドウ、ヒンジを強調したバックドアのガラスハッチ(ラゲッジは上下二分割式になっています)、外ヒンジのドア、スーツケースを連想させるボンネットやドアのキャラクターラインなどでワクワク感を演出しています。
展示されていたパオはオーナー車で、ダッシュボードやトノカバーの上にオーナーの遊び心を感じされるカスタムが施されていました。
パオは現在も人気があり、専門店も存在します。選んでいるのは旧車好きだけじゃなく、「このカタチが好き!」と初めての1台で選ぶ人もいます。
日産のパイクカーは2000年まで製造されたラシーンを最後に発売されていません(マーチにクラシカルなデザインのボレロが設定されたりはしましたが)。今このようなモデルが出てくると受ける気がしますが、みなさんはどう思いますか?
■“ヨタハチ”の愛称で親しまれたスポーツモデル
▼トヨタ スポーツ800
1962年に開催された第9回東京モーターショーに展示されたパブリカスポーツの市販モデルとして1965年に登場したスポーツ800。“ヨタハチ”の愛称で親しまれた本モデルは大衆モデルであるパブリカをベースに開発されています。
搭載エンジンは790ccの空冷水平対向2気筒ツインキャブ。最高出力は45psに達しました。ベースとなったパブリカは697cc水平対向2気筒を搭載していましたが、スポーツ800は排気量を拡大して搭載。パブリカも1966年のマイナーチェンジで800ccエンジンが搭載されました。
スポーツ800はモータースポーツでも活躍。ホンダ S600とは名勝負を繰り広げたことでも知られています。
空力性能を重視した流線型のボディ、2000GTのフォグランプを彷彿させる大きなヘッドライト、着脱式ルーフにより気軽にオープンエアを楽しめる構造など、現代のクルマでは味わうことができない個性が凝縮されたモデルとして現在でも人気があります。
■デジタルメーターにナビコンを装備したプレミアムスポーツ
▼トヨタ セリカXX
アメリカで日産フェアレディZに対抗するために開発された初代セリカXX(北米ではスープラの名称で発売)は、セリカリフトバックをベースに開発されたプレミアムスポーツモデルです。
1981年に登場した2代目はリトラクタブルヘッドライトを採用し、よりスポーティさが強調されました(ラグジュアリー路線はソアラが継承しました)。
搭載エンジンは2Lと2.8Lの直6が用意され、後に2L SOHCターボ、2L DOHCターボが追加されました。
デジタルメーター、カーナビの前身機能とも言えるナビコンなど、若者を引きつける装備が数多く盛り込まれているのも特徴で、エンジンルームには整備時に役立つ照明が用意されています。
展示車両は希少なワンオーナー車で、室内にはレースのシートカバーが。そこから察するに、スポーツ走行や旧車ブームとはまったく関係ないところでごくごく普通の方が大事に乗っていた“天然モノ”だと思われます。
日本車では2002年まで製造されたマツダ RX-7が最後のリトラクタブルヘッドライト採用車(輸入車では2005年まで製造されたシボレー コルベットが最後の採用車種)。安全面や空力などを考えると廃止は必然だったのでしょうが、今見てもリトラクタブルヘッドライトにはロマンがあるなと感じます。
<取材・文/高橋 満(ブリッジマン)>
高橋 満|求人誌、中古車雑誌の編集部を経て、1999年からフリーの編集者/ライターとして活動。自動車、音楽、アウトドアなどジャンルを問わず執筆。人物インタビューも得意としている。コンテンツ制作会社「ブリッジマン」の代表として、さまざまな企業のPRも担当。
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- Original:https://www.goodspress.jp/features/528249/
- Source:&GP
- Author:&GP
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