【iPad Hacks_45】
Appleは5月9日に音楽制作ソフト「Logic Pro(ロジックプロ)」のiPad版アプリを突然発表しました。同月24日から月額700円、または年額7000円で利用できるようになります。
これまで「Logic Pro」といえば、Macのためのアプリで、App Storeで数万円で一括購入するものでした。仕事でガンガン使う人以外は、導入のハードルもそこそこ高く、特に趣味だと「挫折したらもったいないな」という考えが頭をよぎりました。
しかし、今回のiPad版が出てきたことで、iPadさえあれば月700円のサブスクで使えて、半年くらいでもし挫折しても解約できるようになったことで、ハードルが一気に下がりました。
▲iPad版のLogic Proが発表された。写真内の画面は「Quick Sampler」機能を使っているところ
作曲に興味があった皆さん、かつてGarage Bandに挫折した皆さん、GarageBandからLogic Proへの移行に悩んでいた皆さん、もしかするとイマこそ挑戦するタイミングなんじゃないでしょうか?
本記事では、超入門者向け視点で、作曲手順の最初の一歩を説明しながら、新アプリ「Logic Pro for iPad」の基本操作方法について確認していきたいと思います。
■まずは楽器を選んで音を入力しよう
iPadでApp StoreからLogic Proアプリをインストールして起動します。サブスクリプションを購読して、画面を進めると「基本サウンドと音源を入手」という画面が表示されます。「3個のパックをダウンロード」をタップして、画面を進めましょう。
▲「3個のパックをダウンロード」をタップして開始
いろいろなアイコンが表示されますが、ここでは「トラック」をタップ。続いて表示される画面で「MIDI ソフトウェア音源」をタップしましょう。
▲「トラック」をタップ
▲「MIDI ソフトウェア音源」をタップ
次に楽器名が表示されている欄の右にあるスペースをタップします。メニューが表示されるので、「MIDIリージョンを作成」を選択しましょう。
▲何もないスペースをタップして「MIDIリージョンを作成」をタップ
そして左下のアイコンをタップして、楽器を選びましょう。楽器名の頭に付いている音符をタップすると、サンプルが再生されます。また、右下にあるピアノ鍵盤のアイコンをタップすると、画面下部にキーボードが表示されます。ここを触ると選択した楽器の音が出るので、好きな音かどうか確認しながら、選んでみてください。
▲左下のアイコンをタップすると音源の一覧が表示される。「音源パッチ」の画面で、好きな楽器を選んでみよう。右下のピアノのアイコンで弾きながら確認もできる
ここで楽曲のテンポと拍子を決めましょう。画面上部にある「120.0」と書かれた部分をタップして、「100.0」に変えてみます。ここの数字が大きくなるほど、曲がテンポが早くなります。
▲画面上部の数値をタップして、テンポを変更しよう
また、「4/4」という部分もタップしてみましょう。ここで曲のキーや拍子などを変えられます。例えば、ワルツにしたいときには、数値を「3/4」などに変える必要が出てきます。今回は特に変更はしません。
▲「4/4」のところから拍子を変えられる
では、いよいよ音を打ち込んでいきましょう。画面下部中央にあるペンのアイコンをタップすると、ピアノロールの画面が表示されます。スペース上部にある「鉛筆」のツールを選び、画面に触れることで、音を入力できます。
▲画面下部のペンアイコンをタップして、鉛筆ツールを選択。画面に触れると音が鳴るタイミングと時間を指定できる
▲細かい入力は、Apple Pencilがあった方がやりやすい
ピアノロールに入力した線をドラッグすると、高さやタイミングを変えられます。また端をドラッグすることで、長さを変えられます。そして鉛筆ツールのままタップすると削除操作ができます。基本的な入力操作としては、まずここまでを覚えましょう。あとはこの作業を繰り返します。
■4小節でメロディと和音を入れてみる
ここから練習として、4小節の長さで簡単な曲の体裁を整えていきましょう。まず(1)メロディ、(2)コード進行(和音の伴奏)のふたつを作ってみましょう。
なお、曲を入力できるスペースを、4小節の長さにするためには、上部のトリムを選択した状態で、端をドラッグします。
楽器を増やすためには、「+」をタップして、「MIDI ソフトウェア音源」を選びます。
▲画像を参考にしながら、メロディーを入力してみよう
メロディを作るときは、左側に表示されているピアノ鍵盤の“白いところだけ”を使いましょう。黒鍵を使うのは、少し知識がついてきてからでOKです。「C」と書いてあるところが「ド」なので、例えば「ドレミファミレドレミファミレドレミファ」とギザギザに入力してみました。最初は、このくらいシンプルな方が良いです。
▲ふたつ目の楽器を選び、コードを入力してみよう
メロディの入力が完了したら、1小節ごとに和音(コード)を入力してみましょう。和音は白い鍵盤の並びにある「ド(レ)ミ(ファ)ソ」を1つ飛ばしで、ド・ミ・ソのように伸ばして、入力するのが一番基本の形です。最初は、下の6個から選んで並べてみましょう。最後の1小節は「C」にするとしっくりきやすいです。
・C:ドミソ
・Dm:レファラ
・Em:ミソシ
・F:ファラド
・G:ソシレ
・A:ラドミ
なお、だんだん慣れてきたら、4和音や、転回形などについても、調べてみることを勧めます。
入力した音を確認しながら、メロディに不規則な変化を加えてみましょう。音を確認しながら、自分が気持ちよく感じるメロディにしてみます。また、最後の音は「ド」になるようにしてみましょう。
▲上部の再生アイコンをタップして、音を確認しながら、メロディを少し変化させてみよう
■「ループ」でドラムを加えてみよう
ここまでで相当集中力を使ったと思うので、打楽器のリズムは、今回は既存の音源を活用してみましょう。
左下のアイコンをタップして、音源の一覧から「<」をタップして「ブラウザ」の画面を開きます。ここで「ループ」を選択。ここでは、上部にある「ドラム」「アコースティック」から音源を絞り込んで、音源を探しました。
イメージと合いそうなものを、ドラッグアンドドロップで、画面中央の空白の部分に、追加しましょう。
▲「ブラウザ」画面で「ループ」を選択
▲音源を絞り込んで、気に入ったものをドラッグアンドドロップで配置しよう
今回配置した音源は2小節分の音なので、これを4小節分までループさせます。画面上部の「ループ」を選択した状態で、MIDIリージョンの端をドラッグすると、繰り返し再生がされる状態で長さが伸びます。
▲「ループ」を選択した状態で、ドラッグ
▲4小節分まで伸ばす
■余裕があればサブの楽器を加える
メインのメロディ以外に賑やかしのサブのメロディ(副旋律やリフなど)を加えていきましょう。こちらも慣れないうちは白い鍵盤のみで音を配置すると良いです。この辺りは、ここまでの手順を参考に自由にやってみてください。
▲例えば、「マレット」「マリンバ」で検索して、マリンバの音を追加で打ちこんでみた。余力がある人は「対位法」の基礎などを調べてみよう
■パン(音の左右の位置)を調整する
入力した音を再生してみると、そろそろ音楽っぽくなってきたかと思います。ただし、この状態では、全ての音が中央から鳴っている状態です。現実の空間を想像してみると、例えば、2人掛けのソファーくらいのスペースにキーボード2台、木琴、ドラムがぎゅっと集まっているようなイメージです。この状態では、音が窮屈になってしまいます。
▲「パン」を適用するイメージ
そこでバンドがステージ上で演奏しているように、それぞれの立ち位置をズラしてあげる必要があります。そのために調整するのが「パン」という設定項目です。具体的には、画面左下の右側にあるアイコンをタップして、表示された欄のつまみ部分を調整します。
例えば、メロディのキーボードの演奏位置を右に、マリンバの演奏位置を左へ移動させてみましょう。和音とドラムはそのままでOKです。
▲メロディを奏でるキーボードを選択した状態で、パンを右へ調整します
▲マリンバを選択した状態で、パンを左へ調整します
初めてDAWソフトを使うような人ならここまでやれば十分です。こうしたミニ楽曲の作成を繰り替えして、少しずつ練習していきましょう。
■ヒューマナイズ(演奏を自然に)する
初心者のうちは飛ばして良い工程ですが、DAWの扱いに慣れてきた人ならば、打ち込みの不自然な部分を解消したり、アクセントを入れたりすることで、機械的な演奏を、より自然な演奏に変えることができます。今回は割愛しますが、余裕が出てきたら調べてみましょう。
▲例えば、キーボードなら鍵盤を抑える際に指がどのような順で触れると自然なのか、指の位置を変えるときに、鍵盤から離れている時間があるか。などをMIDIのデータとして整えていきます
■オートメーションを設定する
必要があれば「徐々に音量を小さくする」「徐々にエフェクトをかける」といった操作をします。楽器を選び、画面下部のペンのアイコンを選択した状態で、折れ線グラフのようなアイコンをタップ。まずは「パラーメータ」で「ボリューム」を選んである状態で、音量が徐々に変わる制御を試してみましょう。
ただし、膨大な項目数があるので、初心者は変にオートメーションを弄らずに、無視して構わない項目です。
▲折れ線グラフのようなアイコンをタップすれば、オートメーションを設定できる
■イコライザーを調整する
楽器が奏でる音の高さは、高い・低いと周波数で分かれています。この周波数ががっつり重なり過ぎると、それぞれの楽器の音が濁って鮮明に聞こえません。そこでEQ(イコライザー)を使って、重なりがある部分の不要な音を削ります。
具体的には、画面中央下部にあるアイコンをタップして、「Channel EQ」をタップ。画面を開きます。表示されるグラフのような図にある点を操作して、音をおさせていきます。
▲画面下部のアイコンを選んでから、「Channel EQ」をタップ
▲必要に応じて、EQを調整しよう。詳細は本稿では割愛するので、少しずつ調べて試してみよう
■最後に全体のバランスを整えよう
最後に、画面下部中央の右側にあるアイコンをタップしましょう。ここで楽曲のバランスを整えていきます。
なお、ミキシングやマスタリングに該当する工程は、専門職があるほどの職人芸の領域なので、素人がうまくできないのは当然です。まずは、なんとなく音を聞きながら、楽器ごとのパンやボリューム、適用させたエフェクトなどを微調整していけばOK。よくわからなければ飛ばして大丈夫です。
▲ミキシングの画面
慣れてきたら、コンプレッサーなどを活用して音圧を上げる設定操作にも挑戦してみましょう。ここからは中級者向けです。
▲ちなみに、コンプレッサーの調整画面はこんな感じ
■曲を書き出す
作成した楽曲の書き出し操作は、画面左上のプロジェクト名の部分から「書き出す…」を選べばOK。ファイル名を設定して、今回は「圧縮」を選んで、「共有」をタップして、データを出力しました。
▲プロジェクト名の「V」をタップして、「書き出し」を選択
▲「圧縮」を選んで、「共有」をタップして、保存先や共有先を選ぼう
* * *
お疲れさまでした。記事で紹介できる範囲ということで、かなり内容を絞っての紹介となりましたが、このくらいの基本手順と流れを理解しておけば、あとは自力で調べて、知識を増やしていけるだろうと思います。
Logic Pro for iPadを使ってみた印象としては、空間オーディオの調整はまだ未対応のようですが、iPadだけでここまでの操作ができるのは衝撃でした。画面の大きい12.9インチモデルなら、PC向けのDAWを扱っている感覚とほぼ変わりません。
初心者向けには、操作説明のためのレッスンも豊富に用意されていますので、まずは気軽に試してみると楽しいですよ。
なお、今回は初心者向けということで打ち込み前提で話を進めましたが、もちろんMIDIキーボードを接続しての入力などもできますし、サウンドパックの追加やLive Loopsグリッドを使った制作にも対応しています。本稿では手順を紹介しませんでしたが、「Beat Breaker」や「Quick Sampler」といった機能も、音作りの自由度が高まるという視点で魅力的です。中級者以上の方は、ぜひそれぞれの機能を試してみてください。
▲Live Loopsグリッドを使っている画面
▲レッスンツアーのコンテンツも用意されている
<文/井上 晃>
井上 晃|スマートフォンやタブレットを軸に、最新ガジェットやITサービスについて取材。Webメディアや雑誌に、速報、レビュー、コラムなどを寄稿する。Twitter
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