Appleは2020年の世界開発者会議(WWDC20)以降、新製品発表イベントや世界開発者会議の基調講演を、事前録画した映像の配信で開催していますが、映像の完成度の高さにも注目が集まりました。Appleが配信する基調講演の映像に用いられている撮影・編集技術を、YouTuberが分析しています。
■3行で分かる、この記事のポイント
1. Appleの新製品発表イベント動画の撮影・編集技術をYouTuberが分析。
2. Apple Parkというロケーションの美しさを活用しているのが特徴的。
3. 高度な撮影・編集技術が使われている一方、技術に走りすぎないのも重要。
オンラインイベントのあるべき姿を定義したApple
映像制作に関する動画を数多く公開しているYouTuberのアダム・グラッソ氏は、Appleの発表イベントで流れるビデオについて、撮影や編集技術の物凄さに圧倒される、と語っています。
特に、シームレスなトランジション、Apple ParkというSF風の魅惑的なロケーション、ハイエンドなVFXとCGは、オンラインイベントのあるべき姿を定義した(任天堂も見習うと良い)と高く評価しています。
1. ディープフォーカスとHDR撮影による美しい映像
Appleの動画では、Apple Parkという魅力的なロケーションを際立たせるために、ディープフォーカスと、ハイダイナミックレンジ(HDR)が用いられています、そのため、背景の細部まで鮮明に見ることができます。
ディープフォーカス(パンフォーカス)では、背景や手前をぼかさず、手前の被写体にも奥の被写体にもピントが合います。
Appleの動画の美しさを際立たせるもう一つの要因は、HDRです。ガラス張りのApple Campusでは、室内でも自然光を利用できる一方、露光を一致させる必要があります。Appleの動画では、説明者に十分な光が当たるようキーライトの光を当てています。
撮影には、フレームごとに複数の露光を組み合わせて、ハイライトとシャドウのディテールを保持できるHDRカメラを使用しているのではないか、とグラッソ氏は推測しています。
HDRもディープフォーカスも、映画の世界では一般的でなく、Appleの広告でも使用されていないため、発表会の映像の背景は合成ではないか、との指摘もありました。
しかし、床に反射するLEDスクリーンの光と説明者の動きが一致していること、
クレイグ・フェデリギ氏が手にしたiPhoneのカメラがLEDスクリーンの映像を表示していること、
Apple WatchにLEDスクリーンの光が反射していることから、撮影場所には実際に大型のLEDスクリーンを設置していると考えられます。
2. 視聴者を引き込むカメラワーク
Appleの基調講演映像には、スイープドローン、ジブ(クレーン)、ドリー(台車)、ステディカム(スタビライザー)といった機材が使用されています。滑らかで計算され尽くされた、変化に富んだカメラワークで、私たちを引き込み、退屈させません。
Appleの基調講演の撮影場所は、床が平らで天井が高いので、クレーンや台車の使用に適しています。
また、階段など建物の構造を活用して、次の場面へとシームレスに誘導する技法も用いられています。
3. 編集とVFX技術の活用
Appleの基調講演には、カットから次のカットへの変化を自然につなぐ技術であるトランジションが巧みに使われています。完璧に自然なトランジションを実現するために、綿密に計画を練り、膨大な作業が行われています。
Appleの基調講演では、地上から地下への垂直移動や壁を通過するような横移動、ライトと太陽光のフレアなどが、映像と映像をつなぐマッチカットとして用いられています。
CGと製品や建物のデザインといった既存の要素を融合することで、印象的な映像が作られています。
グラッソ氏が特にお気に入りなのは、2021年9月の基調講演における、iPhone13 ProのカメラとApple Parkの建物を融合した、以下のシーンだそうです。
4. テクニックに走りすぎない
あまり意識が向けられることはありませんが、Appleは、派手なトランジションやVFXといったテクニックに走りすぎず、シンプルなカット割もよく使っています。
高度なエフェクト、CG、ロケーションを組み合わせることで、基調講演の主役である新製品の魅力を損なうことなく、魅力的なプレゼンテーションに構成されているのです。
Appleの新製品発表イベントが2倍楽しくなる動画はこちら
グラッソ氏による、Appleのオンライン基調講演の映像分析動画は、こちらでご覧ください。動画が公開されたのは2022年6月と約1年前ですが、最近のイベントである世界開発者会議(WWDC23)でも、同様の技術が盛り込まれていることが確認できます。
なおグラッソ氏は、Appleがこれらの映像制作の舞台裏について、秘密主義を貫き通しているのは注目に値する、とコメントしています。
Appleは今後も製品発表イベントを動画配信形式で開催するとの推測もあります。製品に注目して動画配信を見た後に、映像技術に注目して見れば、発表イベントの楽しさが2倍に増えそうです。
Source:Adam Grasso/YouTube via 9to5Mac
(hato)
- Original:https://iphone-mania.jp/news-542662/
- Source:iPhone Mania
- Author:iPhone Mania
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