正真正銘これが元祖!シアトルスポーツのソフトクーラーがアウトドアマンに愛用され続けるワケ

【The ORIGIN of the CAMP GEAR】

「シアトルスポーツのソフトクーラーボックスが正真正銘のオリジナルです」

そう話すのは、ブームに左右されない気骨のある商品展開で多くのアウトドアマンの信頼を得ている株式会社エイアンドエフ会長の赤津孝夫さん。1977年の創業以来、日本のアウトドアシーンを支え続ける同社は、シアトルスポーツの正規輸入代理店として、40年近く同ブランドの製品を取り扱っています。

赤津さんによれば、「シアトルスポーツのソフトクーラーボックスに出会ったのは1980年後半、アメリカの大型展示会でのこと」だといいます。

「当時、箱型のクーラーボックスのみが市場に出回っていた中で、ソフトタイプで、しかも完全防水の全く新しい設計。これは絶対にアウトドア体験を変えてくれる!」と思い、すぐにアプローチ。1987年にアメリカで発売されると、その数年以内には取り扱いを開始したそうです。

まさに、キャンプギアのオリジナル、ド定番、王道を紹介する本企画にふさわしいアイテムです。今回はそんなシアトルスポーツのソフトクーラーボックス「フロストパック」を紐解いていきます。

 

■“正真正銘”ソフトクーラーボックスの元祖「シアトルスポーツ」

▲「フロストパック」の旧ロゴ。本体のビビットカラーも相まってかわいらしくもスタイリッシュな印象の良デザインだった

シアトルスポーツは、1983年にシアトルで産声を上げたアウトドアブランド。パドルスポーツを愛する兄弟によって設立され、40年以上もの間、ウォーターアクティビティにまつわる商品を開発・製造し続けているブランドです。

そんな同ブランドの主力商品である「フロストパック」は、キャンプに限らずあらゆるアウトドアシーンで活躍するソフトクーラーボックスになります。

独自のインシュレーション(断熱材)で、ソフトタイプでもしっかりとした保冷力を発揮。また、ソロ〜ファミリーまで人数やスタイルを選ばないサイズ展開も人気の理由のひとつと言えるでしょう。

▲RF溶着を用いた製造法で、高い防水性能を発揮するだけでなく、中の冷気を外に逃しにくい

ハードタイプと異なり、折りたためるので、使用後や自宅で保管する際に省スペースな収納サイズになるのも便利です。

他にもクーラーボックスとしてだけでなく、RF溶着による強力な防水機能でアクティビティ中のストレージボックスとしても使用できる点も、多くのアウトドアマンたちに支持されています。

同ブランドのソフトクーラーボックスが登場する以前について、赤津さんはこう話します。

「それまでのクーラーボックスといえば、ハードタイプのみ。カヤックやカヌーで旅をする際にも、ハードボックスをそのまま載せて使っていました。取り回しが悪く、船体の保護にも気を遣いながら使用する必要もありました」

▲キャンプではもちろん、1泊2日程度の川旅のお供にちょうどいいサイズの23QT

「川下りですのでどうしても濡れますし、保冷力や柔軟な使い心地だけでなく、中身をドライに保てる機能が欲しい。そういったウォーターアクティビティでの使い勝手の良いクーラーボックスが愛好家たちに求められていました」

そういった声を受けて、ダウンリバー用品ブランドと共同で企画・開発されたのがシアトルスポーツのソフトクーラーボックスなんです。

 

【愛用される理由1】ソフトタイプ+防水仕様で“普段使いからキャンプまで”をカバー

今でこそ定着したソフトタイプのクーラーボックスですが、そのオリジナルであるシアトルスポーツの起源は、実は防水バッグにあるのだそう。

「シアトルスポーツは元々ダウンリバー用の防水バッグを製造しており、防水技術は彼らの十八番。そもそも完全防水のドライバッグを初めて作ったのも彼らです。そんな防水バッグ製造で培った溶着技術と素材選びの見識に、インシュレーションを組み合わせることで完成したアイテムなんです」

▲完全防水とまではいかないが、ファスナー裏にしっかりとした立ち上がりがあるので、水が侵入しにくい構造になっている

現行品である「フロストパック」も、その最大の特徴は防水機能。本体に水を通さないビニール生地を使用しているだけでなく、高周波によるシーム溶着技術を採用しているため、外からの水をしっかり遮断します。キャンプ中の雨や夜露による濡れを気にせず使える地味に嬉しい機能です。

また、外からだけでなく、クーラーボックス内の水分も外に漏らしません。保冷剤の結露や食材の水分でうっかり濡れがちなクーラーボックス内ですが、中の水が漏れて他の荷物を濡らしたり、汚す心配がなく安心です。

▲19オンスの厚手生地を使用しているので、タフな使用感も◎

もちろんソフトタイプなので、本体重量が軽く持ち運びも楽ちん。折りたためるので、自宅で保管する際にも場所を取らず、何より日頃の買い出しにとても便利。ハードタイプと違って仰々しくないですし、特に現行モデルはカラーも落ち着いているので、気軽に近所のスーパーに持っていけます。

▲日頃の買い物で生鮮品や冷凍品を買ったときに何かと便利。23Qか25Qが普段使いにぴったり

 

【愛用される理由2】クッション機能付き防水ギアストレージとしても活躍

▲12QT、23QTにはラバーストラップを採用。肩掛け時の負担を軽減するスグレモノ

「ソフトタイプだからこそ、クーラーボックス以外の使い方ができるのもシアトルスポーツの魅力なんですよ」と赤津さん。

実はストレージボックスとしても優秀で、インシュレーションがクッションの代わりになるため、クーラーボックスとしてだけではなくキャンプギアの収納にも使えます。

また、防水機能があるので、カメラや着替えなどドライに保ちたいアイテムを持ち運ぶ際にも活躍します。

▲水に強い19ozのビニル素材に、2重構造のインシュレーションで、防水ストレージとしても有能

「フロストパック」は、縦長タイプの12QT(5720円)、23QT(6600円)の2サイズに、横長タイプの25QT(7480円)、40QT(9460円)の2サイズと、計4サイズ展開。どれも使いやすいサイズ感ですが、このサイズ展開にもどうやら歴史があるようです。

赤津さんによると、発売当初のモデルは「現行品でいうと、40Qが一番近いサイズ感」だったそう。

「数日分の食料や飲料を持って川を旅していたので大型のものが求められていました。その後、登山やキャンプ系のブランドの要望もあり、小型のサイズ展開が始まりました」

往年のアウトドアマンに人気の、1900年代前半から今も続くアウトドアブランドがサイズ展開に関わっていたこともあるのだとか。

「非常にユニークで、冒険家たちだけでなく、名だたるアウトドアブランドが注目していましたね」と赤津さんは当時を振り返ります。

▲2019年にアップデートされた「フロストパック」のロゴ。遊び心を感じつつも変わらずクールなデザインだ

「フロストパック」は単体でも十分便利に使えますが、組み合わせて使うのがおすすめ。ソロキャンプであれば、ドリンク用の12QTに食材用の23QTか25QTを組み合わせる。ファミリーやグループであれば、メインに40QTを使い、サブクーラーとして23QTを準備すると大人数にも対応しやすくなります。

ちなみに、23QTは日本のキャンプユーザーの声から生まれたモデルなんだとか。「2Lペットボトルを縦に入れられるサイズがほしい」というキャンパーの声をもとに、シアトルスポーツに専用モデルとして依頼をかけたといいます。

▲食料品はもちろん、2Lペットボトルを縦置きで収納できて便利な23QT。ソロキャンプ時に十分なサイズ感

2Lペットボトルを3本+350ml缶を8本も保冷できる十分な庫内スペースが確保されているので、ファミリーの一泊二日のキャンプにちょうど良いサイズ感で人気のモデルです。

なお、夏場などしっかり飲み物を保冷したい場合は、内容物を少し減らして保冷剤をいれるスペースを作る必要があるのでご注意を。

▲サイズだけでなくベージュ、ブラックのカラーリングも日本のキャンパーのニーズに併せた日本モデル

 

【愛用される理由3】ヘビーオンスで高耐久!ガシガシ洗えて衛生的

素材に19ozというヘビーオンスのビニール素材を使用しているので、耐久性も十分。だから使用後にガシガシ洗ってしっかり汚れを落とせます。また、ソフトタイプなのでハードタイプに比べてもメンテナンスは簡単。キャンプから帰ってきたらそのままお風呂場で洗ってしまうのがおすすめです。

▲内側をガバッと引っ張り出せるので洗いやすい点も◎

クーラーボックスの内部はどうしても汚れてしまいますが、食べ物を保管するので清潔さは重要。その点、洗いやすく、洗うのに気を使わなくて良いというのはそれだけでも十分メリットと言えます。

 

【愛用される理由4】2019年のアップデートで価格DOWNなのに性能UP

元々ソフトタイプの中でも有数の保冷性能で人気だったシアトルスポーツのソフトクーラーボックスですが、2019年に全面アップデートで性能もUPしているのだそう。

赤津さんによると「2019年の大型アップデートの際にインシュレーションを空気孔がついた二重アルミ製特殊断熱層に変更しています。この変更により断熱効果が高まったことで保温効率が向上=保冷性能UPに繋がっています」とのこと。

▲厚手になったからかしっかりと自立するようになり、より使いやすさが増した

確かに、現行品と旧モデルを比べてみると、2~3mmほど厚手になっています。指で押しただけでも明確に厚さの違いを感じられます。

さらに販売価格も見直しが図られ、30~40%ほど安くなっています。最小サイズの12QTが5720円、一番大きいサイズの40QTですら9460円と1万円を切っていて、買いやすい価格に。

性能UPで価格DOWNの理由については「素材や生産工程を見直すことで、性能はそのまま以上にしつつも、価格を抑えた」とのこと。

▲アップデートを果たした現行フロストパック(左)とビビッドカラーが特徴的なかつてのフロストパック(右)

「これまで“BUILT USA”としてアメリカ本国生産を続けていたシアトルスポーツですが、このアップデートで生産国を中国に変更しています。その理由には世界情勢や原材料費高騰など様々な影響がありますが、このままアメリカ本国で生産を続けるとどうしても性能に見合わない価格になってしまいます」

ということで、生産国の変更もアップデートの大きな要因のひとつのようです。

中にものを入れていなくてもしっかりと自立するようになった点が個人的には◎。旧モデルに比べてインシュレーションの厚みが増したのが要因なんでしょうか。地味だけど、かなり使いやすくなったと思います。

▲気になる品質も、“BUILT USA”から変わらない仕上がりなので安心

“BUILT USA”からの変更は、往年のキャンパーからすれば正直残念な気持ちもあるかもしれません。ですが、それ以上に適正価格を維持するどころか買いやすい金額になり、さらに性能向上しているということで、良アップデートと言えるのではないでしょうか。

ちなみに同ブランドの防水バッグなど一部商品については、変わらずアメリカ本国の工場で製造を続けているそうです。

*  *  *

ソフトクーラーボックスのまさに元祖、シアトルスポーツの「フロストパック」。2019年のアップデートで、元々評判だった保冷力もさらに向上し、キャンプシーンだけでなく、自宅でも大活躍してくれます。

▲キャンプでの洗い物や汚れ物のキャリーに便利な「ポケットバケット12L」。ソフトクーラー同様RF溶着加工で水に強い

私の記憶の中でも、確か10年ほど前までは、ソフトクーラーボックスならシアトルスポーツ一択でした。その当時、私のアウトドアのお師匠から「シアトルスポーツのソフトクーラーが一番長持ちするし、邪魔にならなくて便利!」と教えられて40QTを購入した覚えがあります。

使いどころを選ばないのもこの「フロストパック」の魅力。私も友人とのキャンプでは大型のクーラーボックスとして、ソロ・デュオキャンプでは肩がけのギアストレージとして、長いこと愛用していました。

今でこそたくさんのソフトタイプのクーラーボックスが販売されていますが、この機会にぜひ一度、その原点に触れてみては?

>> シアトルスポーツ

>> [連載]The ORIGIN of the CAMP GEAR

<取材・文/山口健壱

山口健壱(ヤマケン)|1989年生まれ茨城県出身。脱サラし、日本全国をキャンプでめぐる旅ののち、千葉県のキャンプ場でスタッフを経験。メーカーの商品イラストや番組MCなどもつとめる。著書に「キャンプのあやしいルール真相解明〜根拠のない思い込みにサヨウナラ」(三才ブックス)

 

 

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