自動車好きの間でアイコン的な存在といえば、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIがすぐに思い浮かびます。でも全モデル電動化を謳うフォルクスワーゲン(VW)だけに、この先にどうなることやら……。
やきもきしているファンのために、VWはやってくれました。2023年9月初頭にミュンヘンで開催された「IAA(国際自動車ショーを意味するドイツ語の頭文字)モビリティ」なる自動車ショーで、「ID.GTIコンセプト」をお披露目したのです。
■ VWは「ID.GTIコンセプト」「ID.7」を発表
▲初代ゴルフGTIの再来をめざしたという「ID.GTIコンセプト」
▲太いリアクォーターピラーと存在感のあるタイヤなど、初代ゴルフGTIのイメージをいたるところで使った「ID.GTIコンセプト」
“エキサイティングなGTIの未来”とVWがしたID.GTIコンセプトが代表するように、23年のIAAモビリティは、電気自動車のオンパレードでした。むしろICEといってエンジン車を探すのが至難なほど。
ドイツ勢では、VWがID.GTIコンセプトに加えて、全長5m近く、満充電で621km走るという「ID.7」を正式に発表。
広い室内を持つファストバックで、今回フルモデルチェンジした「パサート」がステーションワゴンのみの設定である一方、従来のパサートセダンに替わるのがこのID.7だと、説明されました。
▲VWでは。最新の「ID.7」も公開
■BMW、ミニ、メルセデス・ベンツ、ルノーの各社も新型車を公開
▼BMW
▲BMWがまもなく量産体制という「ノイエクラッセ」」を一般に公開
BMWでは、次世代セダンとしてすでにウェブなどでは発表済みの「ビジョン・ノイエクラッセ」をショーデビューさせました。
従来の同社のBEV(バッテリー駆動のEV)より効率をぐっとアップさせたのが特徴とされています(走行距離は未発表)。
同時に、デジタライゼーションが進められていて、乗る人とのインタラクティブな関係を追求。例えばフロントマスクにアニメーションが出たり、ドライバーが近づくと照明で合図するという具合です。
▼ミニ
BMWグループのミニは、「ミニ・クーパー」と「ミニ・カントリーマン」をフルモデルチェンジ。オープンスペースといってショー会場とはべつにミュンヘン市内の特設会場では、ともにピュアEVの仕様が公開されました。
▲モデルチェンジする「ミニ・クーパー」にはピュア電動モデルも用意
▲大型化する次世代の「ミニ・カントリーマン」にもBEVが登場する
どんどんシンプルな造型になっていくのが、ミニ・クーパーのエクステリアデザインの特徴。といってもぱっと見での印象は強く、デザイン力の強さを感じさせます。
ミニ・カントリーマンは、全長も全幅も従来よりワンサイズ大きくなりました。過去最大のミニ、という字面だけみるとふしぎな表現がされています。
▼メルセデス・ベンツ
▲あたらしい高効率のプラットフォームを採用し、さらに効率化をはかったメルセデス・ベンツ「コンセプトCLA」
真っ赤に塗られたメルセデス・ベンツのオープンスペース(市内の会場)で公開されたのは、「コンセプトCLA」。
メルセデス・ベンツのエントリークラスで、今回の4ドアセダンのあと、シューティングブレーク(スポーティな外観のワゴン)と2種類のSUVが同じ「MMA」というプラットフォームを使って登場するそうです。
ミニ同様、「若いユーザーにアピールしたい」というだけあって、キラキラとした照明が特徴的です。特設会場はあえて周囲を暗くして、まもなく生産化というコンセプトCLAを中心とした光のショーを楽しみました。
▲メッセ会場とは別に市内各所に「オープンスペース」をつくるメーカーも多数(写真はポルシェでルーフが911のかたちをしている)
▼ルノー
▲ルノーが発表した電気で走る「グランカングーE-TECHエレクトリック」
このサイトをご覧になっているかたが興味を持ちそうなのが、ルノーが公開した新型「グランカングー」でしょう。
メッセ会場では「グランカングーE-TECHエレクトリック」が置かれて、人だかり。車体寸法は公開されていないのですが、現行のカングーよりホイールベースを伸ばして3列シートを置いた7人乗りです。
ルーフも延びて、スライドドアの幅も広がり、乗降性が向上。バッテリーによる走行距離は265kmとのこと。
このクルマの使用目的を想像すると、500kmぐらい欲しいところですが、床下にバッテリーを敷き詰めるなど、BEVの構造を考えると次世代まで待たないといけないかもしれません。
■「デザインによる成功」を標榜するVWグループの提案とは
VWのID.GTIの話題に戻ると、注目すべき発言がありました。VWグループはこれから「デザインをより重視した企業になる」という同グループのオリバー・ブルーメCEOの発言です。
ID.GTIプロトタイプも「車両のデザインは、私たちのブランドの成功を決定する最も重要な要素の1つ」(ブルーメCEO)という方針に合致したもの。VWしか作れないGTIを将来のBEVに活かしたものなのです。
「ドゥカティのライダーからスカニアのトラック運転手まで、幅広いお客様を抱えるフォルクスワーゲン・グループのマルチブランドの世界では、各ブランドが独自の特徴を備えた独自の力強い個性を必要としています」
今回“デザインによる成功"というスローガンを打ち出したフォルクスワーゲン・グループ。もうひとつの例を最後にあげると、バルセロナのクプラが出展した「ダークレブル」でしょう。
フォルクスワーゲン・グループに属するクプラが手がけたショーモデルで、エッジがバキバキにたったボディを特徴とする2人乗りのシューティングブレーク型スポーツカーの提案です。
▲クプラが3Dプリンターの技術など使いながら世界でいちばんとんがったデザインをめざしたクプラ「ダークレブル」
電気モーターで450馬力を目指し、静止から時速100kmまで4秒で加速。「電気自動車は退屈だなんて意見に与するつもりはありません。いままで誰も行ったことのないレベルまでデザインを引き上げるつもりです」
クプラのデザインディレクターを務めるホルヘ・ディエスは、ID.GTIを紹介するVWのヘッド・オブ・デザインのアンドレアス・ミントに続いて、ジャーナリスト向けの発表会の席上で、そう述べました。
<文/小川フミオ>
オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中
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- Source:&GP
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