【達人のプラモ術】
ドイツレベル
「1/144 エアバス A300-600ST “ベルーガ”」
01/04
Revell
「1/144 エアバスA300-600STベルーガ」(5480円/ハセガワ扱い)
▲ボックスの裏側のキット解説。必要スキルはLEVEL4(やや難しい)となっているが、ストレートに作るならば難しいキットではない
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」でもレビューを配信中。
■ A300-600STベルーガとは
今回は、一目見たら忘れられない強烈なインパクトの輸送機を製作します。それがエアバス A300-600ST “ベルーガ”です。
双発ワイドボディ旅客機エアバスA300-600Rをベースに開発されたベルーガは、胴体上半分に極めて太い直径の円筒形の貨物室を備えており、上方開閉式の大型貨物ドアを装備していて、最大47トンの搭載が可能です。貨物ドアの開口部を大きく取るためにコックピットは胴体下側に移設されています。
機体の全長は56.15メートル、翼幅が44.84メートルと普通のエアバスA300 とさほど変わりませんが、全高は17.24メートル、胴体の幅が7.31メートル、貨物室の全長は37.7メートルもあります。
見た目がシロイルカに似ていることからシロイルカの別名「ベルーガ」の愛称がつけられました。主翼はA300をそのまま流用していますが、水平尾翼端に垂直安定板が追加されており、巨大な貨物室と併せて、外観上の特徴となっています。形式名はA300-600ST(STはスーパートランスポートの略)。
あまりも奇異なスタイルから本当に飛べるの?と疑ってしまいそうになりますが、コンピュータ解析や模型を用いた風洞実験が繰り返され、空力面や操縦性も悪くないのだそうです。
1995年に初飛行したベルーガは5機作られて、現在4機が運航中(5号機は予備機)。日本には2021年12月と2023年5月に飛来しています。
▲大容量を誇るベルーガの胴体内部には、同じエアバス社の旅客機の胴体や主翼の輸送、あるいはヘリコプター等をそのまま積み込んで空輸できる。重量物を積んでいない場合の運動性や操縦性能は、一般の旅客機とさほど変わらないという
▲ベルーガ3号機のリアビュー。驚くほど太い胴体に小型の垂直尾翼が増設された水平尾翼と特徴的なスタイルがよくわかる
■もしかしたらスーパーフリッパーの名がつけられていた…
A300-600STは開発中には非公式に「スーパーフリッパー」という愛称で呼ばれていたそうで、これはテレビドラマ「わんぱくフリッパー」(1964年から放送され人気を博したアメリカのテレビドラマ。日本でも放送された)に登場するイルカの名前に由来するという説があるんです。1号機の完成発表と同時に「ベルーガ」という愛称が発表されたのですが、エアバス社本体は当初はこの愛称を気に入っていなかったそうで、広く浸透しちゃったので仕方なく認めて使用するようになったそうです。
■キット解説
エアバスA300-600STベルーガはドイツレベル社が1997年にキット化しました。発売から26年となります。人気の高いキットですが、長らく生産が休止されていたこともあり、模型店でも見かけなくなっていましたが、2023年7月、久しぶりに再販。達人的にも速攻で購入した次第です(モデラー教訓:買わずに後悔するなら買って後悔)。
基本的は旅客機のバリエーションといったキットなので、パーツも少なく、シンプルな構成のモデルとなっています。
とは言うものの、なにしろシロイルカのフォルムです、巨大なカーゴベイをしょってます。なので1/144スケールでも完成時のモデルサイズは全長382mm×翼幅316mmにもなります。
▲パーツは少な目、これにデカールが付属する。できればディスプレイスタンドが欲しかった
▲1/144スケールだが胴体はこのボリューム! ベルーガの特徴的スタイルをよく再現している
▲垂直尾翼裏側にRevell社と1997年製造の刻印が打ってあった
▲今回の再販にあたり、デカールは、運用されているベルーガの最新塗装仕様にアップデート。1号機から3号機までを選べる
■カーゴベイドアを開けて製作!
先にも書きましたが、キットはエアラインのモデルではよく見られる、外観のディテールを重視したプロポーションモデルです。なので機体内部やコクピットなどは再現されていません。ディスプレイスタンドと組み合わせてデスクトップモデルとして製作しても良いかもしれません。
しかし胴体パーツの裏側を見ると、機首のカーゴドアに沿ってカットラインがモールドされています。インスト(組み立て説明書)に目を通したら「ここをカットすればカーゴハッチを開いた状態も作れます(選択式)」となっていました。ベルーガは輸送機ですからね、これは開けて作らなくちゃモデラーの名が廃ります。
▲インストでは、選択式でカットすればカーゴハッチを開けることができると説明されているのだが…
しかし! しかしですよ。機体内部は何も再現されていないんですよ。貨物室内部のリブどころか、床もありません。切り離したハッチの裏側もしかりです。なにも再現されていません。
まぁメーカーとしては、切り離しのガイドをモールドしておいたから、あとは自作ということでヨロシク! って感じなんでしょう。なので、カーゴハッチは閉状態で作るのが良いかと。しかし気が付いたらカーゴハッチを切り離しておりました…。
切り離しちゃった以上は、カーゴルームの内部(床とか隔壁とか)を再現しなくちゃいけません。頑張ります。
■1ミリ角のプラ棒をひたすら貼り付けていく
さて、カーゴハッチを切り離したのち、カーゴルーム内部は、まず床を0.5ミリプラ板で自作します(剛性のある1ミリではなく0.5ミリを使ったのは加工のしやすさを優先したため)。
胴体の内壁に沿って、細かく補強のためのリブが取り付けられています。これを1ミリ角のプラ棒を使い再現します。指でしごいて曲がりグセをつけた1ミリ角のプラ棒を10ミリ間隔で内壁に接着していきます (これが結構大変)。
▲航空ショーでハッチを開けたベルーガ。こういう画像を見るとやはりはカーゴハッチを開けた状態で作りたくなる
▲機体塗装が白なので、まずは光の透過を防ぐために胴体裏側をMr.サーフェィサーのブラックで塗装しておく
▲胴体カーゴハッチの裏側にはカット用のガイドラインがモールドされていた
▲機体外側カーゴハッチ部分(スミ入れで描いたライン)
▲カーゴハッチを開けることにして、カットラインに沿ってハッチを切り離した状態
▲切り離しはしたものの、胴体内部のディテールは一切再現されていないので、自作することになる
▲0.5ミリプラ板でカーゴルームの床を自作
▲床を胴体内部に入れるとこうなる
▲胴体内側の補強リブを再現するため1ミリプラ角棒を10ミリ間隔で接着していく
▲タミヤ「プラ材1ミリ角棒(10本入り)」(369円)
* * *
というワケでドイツレベル「1/144 エアバス A300-600ST “ベルーガ”」の製作第1回はここまで、次回は機体内部を完成させます。お楽しみに!
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/560470/
- Source:&GP
- Author:&GP
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