使ってわかったPixel 8とPixel 8 Proの違い。ではどっちを買うのが得策なのか

グーグルの最新スマートフォン「Google Pixel 8」と「Google Pixel 8 Pro」が10月12日に発売されました。

スマホの売れ行きが鈍化していると言われる中、Pixelだけは好調に出荷台数を伸ばしています。2023年第2四半期(4月〜6月)における国内のスマホ出荷台数で、グーグルはアップルに次ぐ2位(Androidでは1位)。5月に発売された「Google Pixel 6a」からドコモも取り扱い、大手3キャリアが揃ったため、さらに勢いを増すと予測されます。そんな中で発売された注目の2モデルをいち早く使ってみました。

▲左がGoogle Pixel 8、右がGoogle Pixel 8 Pro

 

■Pixel 8とPixel 8 Proのスペックの違いは?

Pixel 8とPixel 8 Proは、どちらも「Google Tensor G3」というチップを搭載するハイエンドモデル。機能やスペックに共通する部分も多いので、まずは主なスペックの違いを押さえておきましょう。

上の表でわかるように、両モデルの最大の差分はカメラにあります。そして、Pixel 8 Proには「温度計」という新機能も搭載されています。それらについては、あとで詳しく触れるので、まずはスタンダードモデルのPixel 8の使用感を紹介しましょう。

 

■前モデルよりも小さく軽くなった「Google Pixel 8」

Pixel 8は、2021年に発売されたPixel 6、昨年発売されたPixel 7に続く、Pixelのスタンダードモデル。画面は小さめで、カメラのスペックは控えめですが、それらを除けば、上位モデルに引けを取らないモデルです。

▲左がGoogle Pixel 8、右がGoogle Pixel 7

最大の注目点はサイズ感。前モデルのPixel 7から画面が小さくなり、ベゼルを細くしたことで、横幅70.8mmという持ちやすいサイズを実現。前モデルは197gとやや重いのが難点でしたが、Pixel 8は187g。軽いとまでは言えませんが、画面サイズに対して妥当な重さになりました。

サイドフレームと、そこから背面に繋がるカメラバーには再生アルミニウムを用いて、サテン仕上げが施されています。背面パネルはガラスで光沢仕上げ。キズがつきにくい強化ガラスを用いて、指紋もつきにくいので、スマホケースに入れずに使うのもアリでしょう。

▲サイドフレームはアルミで、サテン仕上げが施されている。右側に電源ボタンと音量ボタンを搭載

▲指紋センサーは画面内に搭載。フロントカメラによる顔認証にも対応

▲背面パネルはガラスでツルツルとした手触り。サイドフレームから繋がるカメラバーはやや出っ張っている

▲純正のケースに収めると、出っ張りが相殺される趣向

 

■望遠はないが、超解像ズームやマクロフォーカスを搭載

カメラは広角(50メガピクセル)+超広角(12メガピクセル)の2眼。有効画素数だけを見ると、前モデルから変わってないようですが、レンズやセンサーは一新されているとのこと。広角カメラはより明るく撮影できるようになり、超広角カメラはマクロフォーカスに対応。いちいち撮影モードなどを切り替えなくても、被写体に近づけるだけでマクロフォーカスに切り替わり、最短で3cmにまで近づけて撮影できます。

▲超広角(0.5×)で撮影

▲広角(1×)で撮影

▲2倍(2×)にはワンタップで切り替えられる

▲超解像ズームは最大8倍で、画質劣化はさほど気にならない

▲室内で料理を撮った作例

▲夜景もきれいに撮れる

▲被写体に近づくと、自動でマクロフォーカスに切り替わる

 

■AIを用いた画像編集機能が進化

「消しゴムマジック」や「ボケ補正」など、AIを用いた画像編集機能も進化。Pixel 8、Pixel 8 Proのどちらのモデルでも使えるのが「ベストテイク」「編集マジック」「音声消しゴムマジック」といった機能です。

「ベストテイク」は、複数人で撮った写真の個々の顔を検出し、みんなの顔を一番いい表情にできる機能。複数枚撮影しておけば、1人がまばたきをして目を閉じていたとしても、目を開いて笑っている顔に替えてくれるわけです。

▲メディア向けの説明会で行われたデモの撮影画像を用いて「ベストテイク」を試してみた。写っている人数が多くなり、参照する類似写真が多くなるほど処理に時間がかかるが、合成したとは思えないほど、自然に仕上がる

「編集マジック」は、写真に写っている人や物を指定して、動かしたり、大きさを変えたり、消したりできる機能。クリエイター向けの画像編集アプリなどを使うことなく、「フォト」アプリだけで誰でも簡単に編集できることが魅力です。

▲「編集マジック」は短時間で簡単に編集できる

筆者が最も驚いたのが「音声消しゴムマジック」。動画の音声を分析し、「音楽」「声」「周囲の人」「ノイズ」などに区分し、不要な音を消したり、小さくしたりできる機能。SNSに動画をアップする際に、不要な音が入っているために消音したり、BGMをつけてごまかしたりしている人は少なくないでしょう。そんな人に重宝すること請け合いです。

▲グーグルから提供された素材で試してみた。街頭で演奏するミュージシャンを撮影した場合、周囲の人の声やノイズを消して、音楽だけを残すように編集できる

 

■「Google Pixel 8 Pro」は視認性の高い大画面を搭載

上位モデルのPixel 8 Proは、6.7インチの見やすい大画面ディスプレイが魅力。最高輝度が1600ニト(ピーク輝度は2400ニト)と明るいので、太陽下での視認性も良く、1〜120Hzの可変リフレッシュレートに対応していることも利点。

▲左がPixel 8、右がPixel 8 Pro。画面の視認性はPixel 8 Proが勝る。なお、前モデルのPixel 7 Proのディスプレイはエッジが曲面だったが、Pixel 8 Proはフラットになった

▲ボタンなどの搭載位置はPixel 8と共通しているが、Pixel 8 Proのサイドフレームとカメラバーは光沢仕上げ

Pixelはホーム画面のカスタマイズ性が高いことも特徴。ウィジェットを使って、自分が使いやすいホーム画面を編集したい人にもおすすめです。

▲ホーム画面を編集するための素材が充実している

 

■Pixel史上最高のカメラを搭載。Pixel 8と比べた優位性は?

スタンダードモデルのPixel 8との最大の差分となるのがカメラ。広角(50メガピクセル)+超広角(48メガピクセル)+望遠(48メガピクセル)の3眼カメラを搭載し、それぞれのカメラが前モデルからの性能向上が図られているとのこと。

Pixel 8と比べた場合の優位性は3つ。まず、高倍率で撮影できること。光学5倍ズームで撮影でき、デジタルズームを組み合わせた超解像ズームでは最大30倍での撮影が可能。30倍でも、かなりクッキリと写るので、遠くに見える物の正体を確認したいといった時にも役立ちそうです。

▲超広角(0.5×)で撮影

▲広角(1×)で撮影

▲2倍(2×)にはワンタップで切り替えられる

▲望遠(5×)で撮影

▲最大の30倍ズームで撮影

▲室内で料理を撮った作例

▲夜景の作例

次に、新たに追加された「プロ設定」で細かい撮影設定を行えること。実はPixelには、マニュアルの撮影モードはなかったのですが、「プロ設定」によって、デジカメと同じようにISO感度、シャッタースピード、ホワイトバランスなどを設定でき、手動でのフォーカス設定も可能に。デフォルトの設定でもきれいに写りますが、撮りたいイメージに合わせた設定にすることで、表現の幅が広がりそうです。

▲撮影者任意の細かい設定ができる「プロ設定」が追加された

▲高解像度で撮影したり、レンズを手動で選択したりすることも可能

3つ目は、動画の画質はグンと向上しそうなこと。Pixel 8にはなく、Pixel 8 Proだけに対応する「動画ブースト」という編集機能があり、今後のアップデートで使えるようになります。動画の鮮やかさが向上し、夜景をきれいに見せる「ビデオ夜景モード」も含まれているそうです。スマホカメラの動画の画質はまだ発展途上にあります。「動画ブースト」によって、次なるフェーズに入ることを期待したいものです。

 

■新機能「温度計」をどう使うかはユーザー次第

Pixel 8 Proは背面に温度センサーを搭載。「温度計」アプリを使って、さまざまな物の温度を計ることができます。アプリで材質を選択し、センサーを5cm以内の距離に近づけて、画面をタップすると、すぐに計測された温度が表示されます。

▲カメラバーの右下にあるのが温度センサー

▲「温度計」アプリの使い方は簡単。材質を選んでタップするだけ

筆者が身近にある物の温度を計ってみたところ、計測結果は信用してよさそうな印象。-20°〜150°までを計れるので、料理をする際に役立つことがあるかもしれません。ですが、ほかにどのような場面で役立つかは疑問。

▲氷を入れたお茶の温度を計ってみた

▲淹れて間のないコーヒーの温度を計ってみた

 

■普段使いの便利機能も充実。気になるのは価格のみ!?

Pixel 8、Pixel 8 Proともに、便利で安全に使える機能が充実していることも魅力。例えば、プリインストールされている「レコーダー」アプリは自動文字起こしが可能。日本語を含む6カ国語に対応していますが、Pixel 8から言語設定が不要になり、自動で言語が判別されるようになります。

▲「レコーダー」アプリの自動文字起こしは、英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、日本語に対応。グーグルの英語での説明会を録音してみた。まだ、言語の自動認識には対応していなかったようだ。近い時期のアップデートで対応することだろう

AIを用いた「リアルタイム翻訳」は多くの言語に対応しており、海外出張や旅行、訪日外国人との会話で役立つこと請け合いです。

▲「リアルタイム翻訳」は簡単に使えるのが魅力。ただし、言語によって使える機能に制約がある

従来から搭載されている機能では、電話を着信した場合に、用件を確認してから応答できる「着信スクリーニング」が便利。「緊急SOS」や「自動車事故検出」など、安全のための機能も充実しています。

▲安全のための機能が充実していることもPixelの利点

*  *  *

価格はPixel 8が11万2900円〜、Pixel 8 Proが15万2900円〜と、やや高め。性能や機能、昨今の円安傾向などを考えると妥当な価格と言えそうですが、Pixelは約半年後に性能に大差がない廉価版がリリースされるのが常。それを待つのも一考でしょう。

>> Google Store

<取材・文/村元正剛(ゴーズ)

村元正剛|iモードが始まった1999年からモバイル業界を取材し、さまざまな雑誌やWebメディアに記事を寄稿。2005年に編集プロダクション「ゴーズ」を設立。スマホ関連の書籍・ムックの編集にも携わっている。

 

 

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