先進的バッテリー構造搭載の BYD「シール」は、走りも作りも高クオリティ!

EVを私たちにより身近にしてくれそうなのが、BYD。2023年に、200万円台で買える(補助金控除を入れて)フル装備の「ドルフィン」など2車種を投入。いまは、3車種めの「シール」が控えています。

2023年10月26日から開催された「ジャパンモビリティショー2023」にも大きなブースで展示され、来場者の興味を惹いていたのが印象的でした。

▲最高速は180kphに制限されている

▲ドットを使ったコンビネーションランプが美しい

■先進的バッテリー構造“セル・トゥ・ボディ”搭載

▲珠海国際サーキットはかつてF1開催も計画されていたところ

2023年10月に私は、シールがお披露目された「ジャパンモビリティショー」に先立ち、珠海国際サーキットで、もっともパワフルな全輪駆動版に試乗しました。

はたして、走りも作りもクオリティが高いのが印象的でした。車体構造もかなり進んでいます。

もとアウディのデザインディレクターがディレクションしているスタイリングは、奇をてらわず、エンジン車に通じる美があります。古典的な美を大事にした、といいます。

中身は“セル・トゥ・ボディ”という、先進的なバッテリー搭載構造が特徴的。通常、EVの駆動用バッテリーは、セルを組み合わせてモジュール化し、それをまとめてパックにしたものをシャシーに搭載します。

これが新しいんです。セル・トゥ・ボディ、あるいは、セル・トゥ・シャシーと呼ばれ、バッテリーをボディ構造の一部にする設計。メリットは、同じ容量でも、従来のセル・トゥ・パック方式よりコンパクトにまとめられること。

先進的な中国のEVメーカーでもこちらに移行しつつあるところが存在するし、テスラも同様とか。大手メーカーでは、BYDが先んじているといえます。

同時にBYDでは、シールの走りの良さを喧伝しています。先述したとおり、試乗会場はサーキットですし、そこには「Innovation Meets Accelaration」なるスローガン。

先進技術を集めて開発した製品が、いろいろな意味で加速に寄与するってことでしょうか。加速って、性能ももちろん、技術開発のことも意味しているのでは。

というのは、「いまの世の中、半年ごとに製品を出さないと、消費者に忘れられてしまいます」と、試乗会場で話を聞いたアジアパシフィック地域担当の劉学亮(Liu Xueliang)ジェネラルマネージャーが語っていたからです。

24年に日本導入予定のシールは、ツインモーターの全輪駆動とシングルモーターの後輪駆動の2車種になる予定だといいます。安全および運転支援システムはほぼフル装備で、加えて、通信などコネクティビティも充実しそうです(少なくとも本国仕様ではかなり装備は豊富)。

「これまでは、新車の開発に時間をかけるのが常でしたが、その時間を短縮しなくてはと思っています。なぜなら、消費者の好みは短時間で変わるからです。時間をかけていい製品を完成させたと満足しても、すでに市場はない、なんてことも起こりえます」

シールは、公道で乗れなかった(外国人には基本的に許可が下りない)ので、いまの消費者が重視するデジタライゼーションとかコネクティビティに関する装備を味わうタイミングはありませんでした。そこは残念。

▲150kWのチャージャーを使うと10から80%を37分で充電

▲LEDのシグネチャーライトがXのモチーフになっているのがフロントマスクの特徴

■最高出力390kw最大トルク670Nm最大航続距離520㎞!

▲15.6インチのインフォテイメント用モニターはボタンで90度回転して縦にもなる

▲電気信号式の変速機用レバーと左側にドライブモード切り換えスイッチがある

▲スマートフォン用チャージャーは2連

走りに関しても、現代の水準を軽くクリアしている感じです。「今の消費者が重要視する要素のひとつは、性能」と劉GMが言っていたとおりのようです。

なにしろ、82.5kWhのバッテリーを使ったシステムトータルの最高出力は390kW、最大トルクは670Nmに達します(ちなみに最大航続距離は520km)。

▲「3.8S」は静止から100kphまで加速する時間を意味

私は、助手席に座ったBYDのインストラクターに指示されるまま、ドライブモードを「スポーツ」に設定し、走り出したところ、加速は気持ちいい。速いのですが、それより、感覚に合った気持ち良さがあると言ったほうがよさそうです。

アクセルペダルの踏み込み量に応じてスムーズな加速が得られるため、少し踏めば加速もそれなり。踏み込んでいくと、どんどんスピードが上がっていきます。ちょっとエンジン車を思わせる、ナチュラルな感覚なのです。

そのあと「ノーマル」に切り替えてみました。これもいい感じです。スポーツほどの瞬発力は得られませんが、日常使いだとおそらく充分でしょう。(個人的にはより加速がゆっくりして落ち着いて走れる「エコ」を常用しそう)

全長は4800mm、ホイールベースは2920mmあるので、後席も充分な広さです。ファストバックスタイルで、トランクは独立式の古典的ともいえるセダンのため、SUVがイマイチというひとには、かなり好感をもって迎え入れられるでしょう。

▲自動格納式のドアオープナーにもBYDの文字

▲12スピーカーのディナウディオのオーディオ装備

▲車体側面には「BYD DESIGN」の文字


【Specifications】

BYD Seal AWD
全長×全幅×全高:4800x1875x1460mm
ホイールベース:2920mm
車重:2185kg
モーター:電気モーター×2
駆動:全輪駆動
最高出力:390kW
最大トルク:670Nm
バッテリー容量:82.5kWh
巡航距離:520km(WLTP)
価格:未定

>> BYD AUTO「SEAL」

<文/小川フミオ、写真/BYD AUTO>

オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中

 

 

【関連記事】
◆安いだけではない!日本市場によく合うBYDのピュア電気自動車「ドルフィン」の"価格だけ"ではない魅力とは
◆ドイツで行われた「IAA」は電気自動車のオンパレード! 注目したいVW、BMW、ミニ、メルセデス、ルノーのこれから
◆'24年3月には東京で開催決定!電気自動車のF1レース「フォーミュラE」の楽しみ方


Amazonベストセラー

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA