大判デカールをキレイに貼って超大型輸送機「ベルーガ」完成!【達人のプラモ術<エアバスA300-600ST ベルーガ>】

【達人のプラモ術】
ドイツレベル
「1/144 エアバス A300-600ST “ベルーガ”」
04/04

■天高くホビー肥ゆる秋…

秋はホビー関係のイベントが数多く開催される季節。先週は大阪で開催されたホビーイベント参加のためお休みを頂きました。と言うワケで、おまたせしました! 今回がエアバス・ベルーガの完成編になります。

さて、前回塗装を完成させたベルーガの機体ですが、今回はデカール貼りがメインの作業となります。

ベルーガは垂直尾翼にブルーのストライプが入ったグラフィックが描かれており、キットでは大判のデカールで再現されています。デカールは質が良く、機体にも凹凸がほとんどないので、基本貼りやすいのですが、垂直尾翼から胴体にかけての大判デカールは曲面部分に馴染ませる必要があるため、キレイに貼るためにはコツが必要になります。(全4回の最終回/1回目2回目3回目

▲キットには質も良く、貼ったあとも色の透けなどもない良質のデカールが付属。主翼の細いラインや機体各部のコーションマーク(注意書き)も再現されている

長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube
モデルアート公式チャンネル」
でもレビューを配信中。

 

■いざデカール!

さて塗装した機体にデカールを貼っていきましょう。

ベルーガの機体は凹凸も少なく、パネルラインも彫りモールドで再現されているので、デカールは貼りやすいのがありがたいですね。デカールは、機体の完成後に貼るよりも、組み上げた胴体と主翼、尾翼、カーゴベイハッチ、エンジン×2をそれぞれ単体で貼っていく方が効率的です。胴体側面のロゴマークなどは問題なく貼ることができるので、サクサクと作業を進めましょう。

胴体に『AIRBUS BELUGA』のロゴが入るとイッキにモチベーションがアップします! ここガンガンいきましょう!

本キットのデカールで唯一の難所といえば、垂直尾翼の付け根からぐるりと胴体に巻き付ける左右分割された帯状のデカールです。

垂直尾翼全面に大判のグラフィックを貼ったのち、位置を合わせながら帯デカールを貼っていくのですが、Ω断面の胴体の曲面に馴染ませつつ、位置決めしなくてはいけないので、なかなか大変です。

帯は左右対称になるように注意しながら貼っていきます。位置が決まったら水分を拭き取り、デカール内に残った気泡を綿棒で内側から外に押し出してデカールを密着させて作業完了です。

▲難易度が高い大判デカール4枚の組み合わせで再現する垂直尾翼と胴体の帯デカール

 

■知っておきたいデカール貼りの基本

①水に浸けたままにしない

デカールは水溶性の糊が使われており、水に漬けることで台紙上で糊が溶けて、台紙からデカールフィルムを剥がして使用できるようになります。デカールを水に漬ける時間は30秒前後でOKです(古いデカールだと、台紙に水が浸透しにくいため、1分以上水に漬けておく場合もある)。

ちなみに水に漬けたデカールは、台紙から浮き上がってくるまで水に浸けておくのはNGです。先にも書いたようにデカールには水溶性の糊が使われています。水に漬けたままにしてしまうと、デカールフィルム面の糊が水に溶け出してしまうため、乾燥後に剥がれてしまうトラブルの原因になってしまいます。

▲デカールが台紙から浮いてくるまで水につけておくのはNG。デカールの糊成分が水溶性なので水に溶け出してしまい、乾燥後の着定性が悪くなってしまう

②指で貼るのはNG! 貼る面には水を塗っておく

デカールフィルムは薄く繊細なので、取り扱いは注意が必要です。貼る際に指でデカールに調節触るのはNG。指に着いてしまう、折れ曲がる、破れるといったトラブルの原因になります。基本は、デカール専用のピンセットを使うようにします。

またデカールは、貼った後に位置を微調整するのですが、糊が強いデカールは、水分抜けてしまうと位置修正ができなくなってしまう場合があります。無理に動かそうとすると破けてしまうので、必ず水をたっぷり含ませるのがポイントです(貼って完全に乾燥定着したデカール位置修正は基本不可)。

▲大判のデカールでは貼ったあとの位置修正の際に、部分的にデカールの糊が乾燥してパーツ表面に張り付いてしまい動かせなくなることがある。その際にデカールを無理に移動させようとすると破けてしまうことも。貼る際や、デカールの位置修正の際には、筆を使いパーツ表面にたっぷりと水をつけておくことで、デカールの部分乾燥を防げる

③デカールがスライドマークと呼ばれる理由

水転写デカールは別名スライドマークとも呼ばれています。水に浸けたデカールの糊が溶けて台紙上でデカールが動くようになったら、台紙ごと貼る部位に持っていき、台紙をゆっくりと引き抜く(スライドさせる)ことで、デカールが丸まる、折れ曲がる、切れてしまうといったトラブル防げます。また気泡が貼る面との間に入ることも減らせます。大判デカールや細いストライプデカールを貼る際に有効です。

また小さなコーションマーク(注意書き)や細いストライプなどは、台紙から持ちあげた際に、デカールが丸まったり、ねじれてしまうことがよくあります。この際にピンセットなどで無理に元に戻そうとすると、大抵の場合、破れて泣くことになります。丸まったり二つ折りになってしまったデカールは、そのまま水に漬けてやれば、水中で広がって元に戻ります。ただし広がったデカールをピンセットでそのまま持ち上げると再び丸まってしまい元の木阿弥なので、ここは慌てず水中で使用済みのデカール台紙の上に乗せてやります。こうすることでデカールが丸まるのを防げます。

▲垂直尾翼の大判デカールは、貼る位置を決めてデカールの台紙をゆっくりと引く抜く(スライドさせる)ことでパーツとの間に気泡が入ることを防ぐ

④軟化剤には気を付けたい

デカール貼りをサポートしてくれるマークセッターやマークソフター(Mr.ホビー)、マークフィッター(タミヤ)といったデカール軟化剤は、上手く使いこなせば、ありがたい味方になってくれます。しかしこうした軟化剤はデカールとの相性があるので、使用に際しては事前に不要デカールでテストしてから使うことをオススメします。

強い軟化剤を使用した場合、デカールが溶けてしまう、あるいはデカール表面にシワが寄るといったトラブルが起きる場合があるので注意が必要です。

今回の作例ではMr.ホビーのマークセッターを使用していますが、デカールとの相性が良く、曲面にデカールを馴染ませるのに効果を発揮してくれました。

▲Mr.ホビー「Mr .マークセッター」(308円)/Mr.マークセッターは、密着性を良くするノリ剤で、デカールを軟化させる成分も含まれている。塗装面にしっかりとデカールを貼り付ける際に使用する。特に古くなり密着性が落ちてしまったデカールや、接着性が強くないデカールなどに使用すると効果的だ

 

■乾燥時間は最低でも24時間必要

デカールを貼り終えたら。クリアー塗装のためにしっかりと乾燥時間を取る必要があります。

小サイズなら乾燥も早いのですが、大サイズとなるとなかなか水分が抜けてくれません。デカール内側に水分を残したままクリアーでのオーバーコート塗装をしてしまうと、蒸発できなくなってしまった水分がクリアー層の下で気化、膨張してしまうためデカールの表面に気泡ができたり、あるいはシワの原因になったりしてしまいます。

乾燥機に入れることができれば乾燥も早いのですが、ベルーガは胴体が30センチを超えるため、乾燥器に入れることができず、常温で48時間乾燥させています。

 

■機体番号は2号機をチョイス!

現在5機が就役しているベルーガで、作例は2号機(MSN751 F-GSTB)をチョイス。カーゴハッチ全面と左右の補助垂直尾翼に「2」の機体番号デカールを貼りました。

なんで2号機?と聞かれれば、そりゃアナタ巨大な胴体を持つ汎用性の高い元祖輸送機といえば…思い浮かぶのはサンダーバード2号ですよね! というワケでTB-2号に敬意を表して、機体番号を2にした次第であります。実際このキットを緑に塗装してTB-2のイメージに仕上げたベルーガを製作した強者モデラーもいるようです。

▲キット付属のデカールは1号機~3号機を選ねる。今回は迷うことなく2号機をチョイス

▲カーゴドアと増設された垂直尾翼に2のデカールを貼っている

▲青島文化教材社「超特大サンダーバード2号」(6600円)/ノンスケールモデルだが、完成すると全長345ミリにもなる大型プラモデル。オジサン世代が大型輸送機と言われて思い描くのは、やっぱりサンダーバード2号だろう。

 

■クリアー塗装は缶スプレーで

デカールが乾燥したら、クリアーでオーバーコートをしてデカールの保護と機体を光沢仕上げします。今回はモデルのサイズが大きいこともあり、クリアー塗装は、効率と仕上がりのを考慮してエアブラシではなく缶スプレーを使用しました。塗装は、塗装→乾燥を3回重ねています。また今回はカーモデルのような鏡面仕上げのための砥ぎ出しはしていません。

▲デカールの保護と機体の光沢を出すために、今回は缶スプレーのクリアーを使用

▲タミヤ「タミヤスプレーTS-13クリアー(透明)」(770円)

 

■機体の組み立て

クリアーによるオーバーコートを24時間乾燥させたのち、胴体と主翼、尾翼とエンジン、脚といった各パーツを組み上げて機体を完成させます。

開状態にしたカーゴハッチは、キットに付属している開閉用アクチュエーター(ディテールのみ可動はしない)と組み合わせて接着固定しています。

▲主翼と尾翼、脚も取り付けた状態のベルーガ。エンジンを取り付けていないこの状態でカーゴ内をマスキング、機体のクリアー塗装を行っている

▲機体裏面の状態。まだエンジンは取り付けていない。タイヤは全輪が正しく接地するように削って面出しをしている

▲キットにはカーゴハッチを開けた際のアクチュエーターのパーツ(可動はしない)が付属している。ハッチは金属線で補強して開いた状態で接着固定

 

■せっかくだから何か積んでみる

機体が完成。大きく開いたカーゴハッチが際立ちます。カーゴルーム内部やハッチ内側の工作など手間はかかりますが、開けて正解だったと思います。

このままでも良かったのですが、もうひと捻り欲しいなぁということで、エフトイズの1/144スケール・ヘリボーンコレクションで発売されている「ユーロコプターEC-145」をカーゴベイに載んでみました。

ドイツ自動車連盟仕様の黄色い機体が白いベルーガの機体によく映えて、ワンポイントになりました。クルマや、同じエアバス社の旅客機の主翼や胴体でも面白いと思います。

▲エフトイズ「1/144ワークショップ ヘリボーンコレクション4」(購入価格:1500円)

▲エフトイズのヘリモデルは塗装済み完成品の食玩だが、イメージは悪くない。ベルーガに搭載するにあたってはメインローターを取り外した

 

■これにてエアバス A300-600ST “ベルーガ”完成!

今回は異形の大型輸送機エアバスA300-600STを製作しました。見た目のインパクトは絶大ながらどこか愛嬌のあり、そして大型の輸送機なので、1/144スケールモデルとはいえ存在感がスゴイ!

実機のベルーガは、残念ながら2025年で全機の退役が決定しているそうで、後継機となるA330をベースにした、さらに大型のベルーガXLと順次置き換えが進んでいるそうです。ベルーガXLのプラモ化も大いに期待したいですね。

▲A330をベースに開発された新型「ベルーガXL」

ということで今回はここまで!

さて次回は何を作りましょうか? お楽しみに!

>> [連載]達人のプラモ術

<製作・写真・文/長谷川迷人>

 

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