【達人のプラモ術】
タミヤ
1/48 傑作機シリーズ No.125
「1/48 ロッキード マーチン F-35B ライトニングII」
05/06
もう師走だというのに暖かい日が続く今日この頃。タミヤ「1/48 F-35B ライトニングII」の製作もいよいよ佳境の第5回です。9日ごろの発売予定ですが、早々に入荷した模型店もあるようで、ユーザーからの注目度は高いようです。今回は基本塗装が完了した機体の艤装を進めつつ、デカールを貼って完成を目指します。(全6回の5回目/1回目、2回目、3回目、4回目)
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」などでもレビューを配信中。
■模型展示会での注目度高し!
先日、私の所属する模型クラブ(FCMA)の展示会を川崎で開催。製作中のF-35Bを展示したのですが、飛行機モデルがメインの展示会だったこともあり、精密ディテールが再現されたウエポンベイやB型の特徴でもあるエンジンなど、発売間近で見どころの多いキットへのギャラリーの注目度は高かったです。
▲展示会では製作中のF-35Bの他にも、以前この連載「達人のプラモ術」で製作した「サボイア マルケッティS.55」も展示
■機体の塗装
前回は機体全体をメインとなるステルスグレー(タミヤラッカー塗料「LP15」:「LP59」=5:1にて調色)で塗装しました。今回は同じく調色した色調の異なるグレー(「LP14」:「LP59」=7:1)で主翼前縁や水平、垂直尾翼の外板などを塗装していきます。
F-35BではF-35Aの初期型で見られた外板の複雑な塗り分けがないのと、多くの部分がデカールで再現されているので、作業量はさほど多くはありません。
とはいうものの、F-35BはSTOVL性能を持つステルス機ということもあって、開閉するウエポンベイのカバー、リフトファンや偏向ノズルのカバーなどなど、一般的な飛行機モデルに比べて機体を構成するパーツが多く、各パーツ単位でマスキング→塗装→マスキングを繰り返して塗装を仕上げていきます。
悩ましいのは機体色のステルスグレーです(実機のRAM塗装が実にのっぺりとした塗装)。大戦機の迷彩塗装のような退色表現や塗装のメリハリがつけ辛い色なんですね。明度が僅かに違う2色のグレーを使っての塗装&デカール機体塗装を仕上げていきますが、ロービジビリティ(低視認性)塗装ゆえにかなり地味な印象です。
しかしキットは機体外板の微妙な凹凸を持つディテールが絶妙な匙加減で再現されているので、仕上がってみるとグレーのベタ塗りといった印象はほとんどありません。またF-35Bは新鋭機ということで、塗装の退色や汚れなどもほとんど見られないので、機体表面のウエザリングも最低限に抑えています。
海軍型となるC型は艦載機ということもあり、機体塗装の汚れが目立つので模型映えしそうなのですがのですが、RAMコーティングの汚れでステルス性能に影響がないのか気になるところです。
▲垂直尾翼、テールロン(水平尾翼)をはじめ、エンジンカバーやウエポンベイカバー脚カバーなどの外装パーツ。機体に組付ける前に塗装しておく
▲胴体製作時に、サーフェイサーで潰してしまったインテークから機首サイドの明るいグレーも再度塗装し直した
▲脚カバーなどは裏面にコーションマークのデカールが付くので機体に取り付ける前に貼っておくこと。ウエポンベイの縁や脚カバー類の縁部分はウエポンベイの内部塗装で使用したMr.カラーの「316番 ホワイトFS17875米海軍機標準塗装色」で塗装
▲機体下面のエンジンカバーはなぜか左右で違うグレーで塗り分けられている
▲テールロン(水平尾翼)も2色のグレーで塗り分ける
▲機首のレドームは、機体色の2色のグレーとはまた異なるのでインストの指示に沿って調色(LP36:LP59=5:1)したグレーで塗装したのだが、機体のグレーに対してやや明るすぎるようなので再塗装するつもりだ
■ステルス性能を左右するRAM塗装
ちなみF-35では、機体素材のカーボン複合材にレーダー波吸収材を混合するという新技術を採用。さらに外部シールドライン制御と呼ばれる工法を使用して、機体各部の繋ぎ目をほとんど無くすと同時に、RAM塗料の厚みで機体の外板の継ぎ目や段差をなくすことでレーダー反射を防いでいるんですね。
しかしRAM塗装は熱や寒さに弱いためメンテナンスが大変だそうです。機体は恒温恒湿の特殊格納庫に別々に保管する必要があり、定期的に再度塗装または補修が必要だそうで、それがまた恐ろしく高額だそう。F-35Bではだいぶ改善されたらしいのですが、RAM塗装の維持費の高騰がアメリカ議会でも取り上げられるくらい問題になっているそうです。模型の塗装はそうした問題はないので、エアブラシでキッチリ仕上げていきましょう。
▲F-35Aの初期塗装では、機体の外板に合わせて複雑なRAMコーティング(塗り分け)がなされていた。発売中の「1/48 F-35A」ではデカールで再現している。この塗り分けは後期現在廃止されている。タミヤ「1/48 ロッキード マーチンF-35A ライトニングII」(9680円)
▲史上初の艦載型ステルス戦闘機となるF-35C。空母での運用のため脚が強化され主翼が大型化、折りたたみ機能を持つ。ぜひタミヤでキット化してもらいたい。©U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Kris R. Lindstrom
■脚、各カバー類の取り付け
脚の組み立て、塗装はインストの指示(43ページからの垂直着陸状態:工程105~147)で進めます。
驚いたのは前脚。脚収納部を組む際に脚柱を同時に挟みこんでおくのですが、その時点では折りたためるようになっており、塗装中、作業中の破損を防げるようになっています。そして機体塗装を終わらせた時点で引き出して接着固定するようになっているんですね。前脚の強度と作業中の破損を考えてのパーツ構成は作り手視点のタミヤらしい配慮だと感心させられた部分です。
▲破損防止のため、収納していた前脚は機体塗装が完了した時点で固定する
▲脚は垂直着陸状態のスタンドモデルとなるので、加重がかかっていない伸びきった状態のパーツを使用して製作
▲完成した脚を機体に組み込む
▲垂直着陸状態とする場合、機体下面にビスでスタンドをしっかりと固定できる
▲スタンドを使用しない場合、取り付穴はマグネットを組み込んだカバーを取り付けることで隠せる
▲塗装を済ませた尾翼類。接着のタブがしっかりとしているので、位置決めがピタリと決まり強度も確保できる
▲垂直尾翼はデカールを貼り込んだ後に接着する
▲エンジンカバー、脚カバー類を取り付けていく。接着用のタブが大きく強度もあるので位置決めや角度もピタリと決まる。作りやすさを配慮したタミヤスタンダードだ
▲エンジンカバーを取り付けたのち、エンジンを接着する
▲主脚両側にあるこの部分は、エンジンの圧縮機からの抽出空気を噴出させて垂直離着陸時やホバリング時の姿勢安定に使用するロール(=左右方向)ポスト
▲脚およびカバー類の取り付けが完了した機体下面。ウエポンベイカバーはミサイルなどを組み込んでからの取り付けとなる
■機体各部のデカール貼り込み
機体パーツの取り付けが完了したら、デカール貼りに入ります。
まずは機体各部に貼られたコーションマークを貼っていきます。これがグレーの塗装面にグレーの小さなデカールという老眼にはキビシイ作業ですが、頑張って貼っていきます。
コーションマーク(注意書き)は“NO STEP”など小さいサイズが多いのですが、1/48スケールともなるとちゃんと読めます(ルーペで確認)。なので上下などを間違えないように貼っていきましょう。
またサイズが小さいので、ラフに扱うと丸まったり折れ曲がってしまうといったありがちなトラブルが発生します。それを避けるため、デカール専用ピンセットの使用をオススメします。
また小さいので、どうしてもデカール自体の定着力が弱く、貼った後に剥がれてしまうことがあるため、デカールの定着力をサポートするマークフィットとデカールのりも併用します。
▲タミヤ「デカールピンセット」(2420円) デカール(スライドマーク)貼りに最適なステンレス製ピンセット。精密に仕上げられた矢尻型の面で挟むことにより、小さなデカールもしっかり保持してくれる。先端がとがっていないのでデカールを傷つけにくい
▲リフトファンの周りにはデカールで細いラインが再現されている
▲機首周りのコーションマークを貼り込んだ状態。塗装面とデカールで光沢が違っているが、デカールを貼り込んだのちセミグロスクリアーで機体全体をオーバーコートすることでツヤも統一されるので問題はない
▲機体上面へのデカールの貼り込みがほぼ完了した状態。デカールはマーキングを含めてトータルで100枚くらい貼る必要がある(現用機では少ない方)
▲キットには1/48原寸大の塗装及びデカール貼りのカラーイラストガイドが付属している
▲タミヤ「マークフィット・デカールのり」(275円) デカールを柔らかくして、貼りにくい凸凹面や曲面、つや消し面にマークをぴったりフィットさせ、さらに接着力も高める
▲タミヤ「デカールのり(軟化剤入り)」(396円) 水へのつけすぎや、位置の修正などで弱くなったデカールの接着力を補う“のり”の成分と、曲面や凸凹面への密着性を高める“軟化剤”、両方の成分が配合されている。刷毛でデカールを貼る場所にあらかじめ塗り、その上からデカールを貼ることでしっかりと定着する。はみ出した部分は水をつけた布などでふき取る
■こちらも参考になります
毎度手前味噌ではありますが、タミヤ公式のYouTubeチャンネル『タミヤ 基礎からのプラモデル講座』の【デカール編】と【ピンセット編】で詳しい扱いを紹介しています。ぜひご覧ください。
■次回、F-35Bの製作最終回!
今回はここまで、正直キットのディテールに圧倒されております。
まだウエポン類を製作しなくちゃいけませんし、あっコクピットやパイロットも製作しないといけません、いや~スゴいキットです、作り応えありまくりです。でも作って楽しいキットです!
次回、F-35B完成編。お楽しみに!
▲コーションマークを貼り終え、リフトファンカバーとキャノピーを仮り組みしたF-35B
▲まだまだやること多いです(焦)
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
【関連記事】
◆華麗なるアメリカ海軍飛行展示チーム「ブルーエンジェルス」をF-4JファントムⅡで製作!【達人のプラモ術<F-4JファントムⅡ ブルーエンジェルス仕様>】
◆傑作ヘリ「SH-60」米海軍HSL-51“ウォーローズ”所属機を製作【達人のプラモ術<SH-60B シーホーク>】
◆世界最速の戦略偵察機!マッハ3で飛行する”黒き怪鳥”を製作【達人のプラモ術<SR-71Aブラックバード>】
- Original:https://www.goodspress.jp/howto/573443/
- Source:&GP
- Author:&GP
Amazonベストセラー
Now loading...