小割作りからフェザースティックまで! 小さな手でも扱いやすい小ぶり鉈

【アウトドア銘品図鑑】

焚き火初心者にとって、薪割りはかなり大きなイベントです。

なにせ身近な刃物は包丁くらいで、手斧や鉈みたいに重くて大きな刃を持つ機会なんて滅多にないんですから。

キャンプの場合、丸太ではなくあらかじめ割られている薪をさらに細く割る“小割”作りですから、とてもじゃないけど刃を振り上げたところで“的”に当たる気がしないし、薪を支えるのもちょっと怖い。

▲「鍛造バトニング鉈 スタンダード」。ほかに名栗、マルチカラー、などハンドル違いがありいずれも全長24.5cm、重量約300g

FEDECA「鍛造バトニング鉈」(1万3870円〜)は2022年秋の発売以降、完売を繰り返す人気製品。この秋、漆黒ハンドルのブラックモデルが登場してこちらも注目されています。

ご存じのとおり、名前に付いている“バトニング”は刃を薪に当て、別の木の棒で刃の背をたたいて割り進める方法で小割作りにぴったり。ただ、キャンプ動画なんかではナイフを使ってバトニングをしていて鉈や斧を振り下ろすより簡単そうなのですが、見よう見まねで適切ではないナイフで挑戦すると刃が折れる危険があるわけです。

「鍛造バトニング鉈」は大人も子どもも安全に薪割りを楽しんでほしいと願いを込めて設計されたプロダクト。

キャンプでは刃渡り20cm前後、重量600g程度の鉈が選ばれる傾向にありますが、「鍛造バトニング鉈」は刃渡り10cmで重量も半分ほどの300g。

手の小さな人や力の弱い子どもも持ちやすい大きさですが、人気の理由は大きさだけじゃないはず。その謎に迫ってみました。

■分厚い刃と石突きのおかげで刃こぼれしにくい

「鍛造バトニング鉈」というだけあり、バトニングに最適化した刃を採用しています。

▲刃厚6mm。黒色フッ素樹脂塗装を施している

最低でも刃厚3mm以上でコンベックス(蛤刃)またはスカンジグラインドのフルタングナイフ選びではこれらがバトニング向きとされています。

「鍛造バトニング鉈」はどうかというと、刃厚6mm。

振り下ろして薪を割る鉈では重さを利用して楽に割れるよう刃厚10mmほどのものがありますが、バトニングなら6mmでも十分と言えるでしょう。

もちろんハンドルの端まで伸びているフルタング。

▲ぐいぐい木の繊維を押し分けて進む蛤刃

次はグラインドをチェック。

刃先にかけてわずかに丸みを帯びてふっくらしているコンベックスグラインド、蛤刃です。刃こぼれしづらく、薪の繊維に沿ってぐいぐい押し分けていく形状なんですね。

通常、力が地面に逃げるとなかなか薪が割れないので、厚めの板や専用の台に薪を載せて作業します。多少なりとも高さがあるので、慣れた人であれば刃先が地面につかないようにコントロールできますが、まれにタイミングをはずして地面や薪割り台に突き刺してしまうことがあるわけで。不慣れな人はなおのことそうなりやすいんです。

いくらタフな刃でも石など硬いモノに当たったり、食い込んだ刃を無理に引き抜こうとすると欠けてしまうことも。

その点「鍛造バトニング鉈」は刃の先に石突を装備しているので石から刃を守ってくれるし、台に食い込むことはありません。

先端が丸みを帯びたデザインなのもケガのリスクを低減しているとのこと。刃長わずか10cmですが“家族みんなでバトニング”の知恵が詰まっています。

■市販の薪をバトニング

市販の針葉樹と広葉樹の薪を割ってみました。

板を薪割り台替わりにしましたが、石突があるので思いっきり背をたたけます。

自動車の板バネや耕運機のツメに採用されるシリコンマンガン鋼を、600トンもの力でたたきあげた刃は強靱で、ガンガンたたいても大丈夫。

針葉樹は気持ちよくスパッと割れ、節ありだと厳しいですがナイフでは厳しかった広葉樹も割れました。爽快!

▲刃先の角度は包丁と同じ30度。薄く削る作業もしやすい

小降りで扱いやすい「鍛造バトニング鉈」は、ナイフ的な作業も得意。

木の繊維に沿って表面をスーッと滑らせることで薄く削れるし、反対にぐいっと力を込めると木に食い込んで厚い羽根を作れます。ちょっと感動。

「鍛造バトニング鉈」はフルタングですが重心がだいたい真ん中にあります。これがコントロールしやすく、繊細な作業ができる理由。

疲れにくいので木工の荒削りに使ってもよさそう。

▲真鍮のネジがFEDECAっぽい

ちなみに、FEDECA「折畳式料理ナイフ」は隙間に入った汚れを落とせるよう、真鍮製ネジをゆるめられるようになっています。

「鍛造バトニング鉈」にも似た真鍮製ネジが付いていますが、緩み止め剤を使っているので取り外し不可。カスタム好きは残念な気もしますが、そもそもゴミや汚れが入り込む隙間がないので外れないのが正解です。

▲鞄職人が手がけたフルベジタブルタンニンレザーのケースが付属

切れ味に不満を持つようになったら自分で研ぐことができるし、研ぐのが苦手な人はFEDECAに連絡すれば無料で研いでくれるサービスを実施中。研げなくなったら買い替える人が増えていますが、ずっと使い続けてほしいというメッセージなんですね。

親子で焚き火を楽しむために生まれた「鍛造バトニング鉈」なら、研ぎが苦手でも10数年後、成長した子どもに「最初に使った鉈だぞ」と贈ることもできるわけ。扱いやすさとともにちょっとロマンを感じるプロダクトであることが、多くのキャンパーを魅了するのでしょう。

撮影協力/神沢鉄工

>> 神沢鉄工

>> [連載]アウトドア銘品図鑑

<取材・文/大森弘恵

大森弘恵|フリーランスのライター、編集者。記事のテーマはアウトドア、旅行、ときどき料理。Twitter

 

 

 

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