イスラエルの自動車部品の新興企業「Carrar」は10月7日にイスラエル南部で1,200人が死亡したテロ組織ハマスによる攻撃に巻き込まれたにもかかわらず、自動車大手「Volvo」との最初の大型契約を締結したと発表した。
熱管理に優れた電気自動車用バッテリーを提供
Carrarは、イスラエルのスデロット市に拠点を置く、熱管理に優れた電気自動車用のバッテリーを提供する会社である。同社の熱管理システムは、EVバッテリーの優れた冷却能力を提供し、どんな天候下でも安定したバッテリー温度を維持できる特徴がある。同社は、使用時や充電時、または暑い駐車場でのアイドリング時に発生する熱をより効果的に放散することで、EVバッテリーを自動的に冷却する新しい方法を開発している。これにより、極端な状況では車が発火する可能性さえあるバッテリーの損傷を防ぐことを可能としているという。
バッテリーメーカーの課題“EVバッテリーの冷却”
現在、EVバッテリーを冷却するためにいくつかの方法が使用されているが、最も一般的なのは液体冷却だという。これには、水やエチレングリコールなどの液体冷却剤をバッテリーセルの周囲に配置し、熱の方向を変える必要がある。
ところが液体冷却の欠点の一つは、パイプ間の接続が時間の経過とともに劣化し、冷却剤の漏れにつながり、バッテリーの性能と寿命に悪影響を及ぼし、潜在的な安全上の問題を引き起こす可能性があることだ。
そのため、多くのEVメーカーはEVメーカーがバッテリーを完全に充電するプロセスを意図的に遅くし、バッテリーの損傷を防ぐことをしている。しかしそうすることによりバッテリーを完全に充電するには10時間以上かかるものであった。
一方でCEOのAvinoam Rubinstain氏によると、Carrarのバッテリーパックを搭載したEVは完全に充電するのに約20分しかかからない、と述べている。
ハマスの標的となったが幸い工場は大きな被害を免れた
Carrarの24人のチームのほとんどがスデロットまたはその近くに住んでいる。そして、ほとんどの人々と同じように、イスラエルが攻撃の衝撃に動揺する中、彼らも自分たちの生活と仕事が保留になっていることに気づいたという。
実際、ハマスのテロリストはロケットや手榴弾などで同社の施設を標的としたが、幸いなことに工場は大きな被害を免れた。
攻撃により家族を亡くした従業員も
Carrarの研究開発エンジニアであるTom Balestra氏は、キブツ・ニル・アムの自宅で妊娠中の妻とともにベッドの下に13時間隠れた。ハマスの攻撃を撃退した民間警備員のおかげで、ここはハマスのテロリストが侵入できなかった数少ないコミュニティの一つであった。
また、同社のプロジェクトマネージャーは襲撃当日、新婚旅行で海外にいたが、後に家族2人が殺害されたことを知った。その後、彼は帰国して最初の週に11件の葬儀に出席したという。
戦争の中、大型取引の締め切りに間に合う
「10月7日、全員がまだ生きているかどうかは夜遅くまでわかりませんでした」とAvinoam Rubinstain氏は振り返る。一方でVolvoとの大型取引の締め切りである11月に間に合わすために、締め切りに間に合う可能性が低い状況であったが、同社のメンバーは仕事に戻り、懸命に働いたようだ。
社員は目標を達成するために週末を返上しただけでなく、ドイツへの往復飛行を繰り返し、そこでバッテリーパックのテストを行っていたという。そして、チームが経験していたあらゆる心配、恐怖、悲しみにもかかわらず、無事に期限を守り抜いた。
参考・引用元:
Carrar 公式サイト
NoCamels ニュース
(文・よし @yoshibizcom)
- Original:https://techable.jp/archives/224597
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:Haruka Isobe
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