【&GPゆく年くる年ー2024年先取り情報】
ワイヤレスイヤホンで例年、ヒットを生むのは実勢価格で3~4万円クラスのハイエンド機種。2023年に登場した完全ワイヤレスイヤホン四天王を選ぶなら、ソニー「WF-1000XM5」、ボーズ「QuietComfort Ultra Earbuds」、アップル「AirPods Pro(第2世代)」(USB-C版)、テクニクス「EAH-AZ80」の4機種でした。
2023年を振り返ると、特に語られることが多かったポイントは次の5点でした。
1. 様々な方法による高音質の追求。そして空間オーディオ対応
2. ノイズキャンセル性能の最強競争と外音取り込みの自然さ
3. 装着感の向上。小型化と、耳にフィットする形状
4. Bluetooth接続の安定性の向上とマルチポイント接続の普及
5. アプリによるカスタマイズ対応
僕自身、先に挙げた4モデルすべての新製品レポートを担当。実機も所有しています。そこで、2023年のヒット機でもある四天王を、発売の熱狂も収まった今、発売順に振り返っていきましょう。
■高音質でじわじわ評価を上げたいぶし銀モデル
テクニクス「EAH-AZ80」(実勢価格:3万6600円前後)
6月15日発売
2023年完全ワイヤレスイヤホン四天王で先陣を切ったのがテクニクス「EAH-AZ80」。業界最高クラスのノイズキャンセリング性能とテクニクスで培った音響技術の機構・回路により臨場感あるサウンドを実現。“LDACコーデック”にも対応。“3台マルチポイント対応”というユニークな機能性と共に登場しました。
特徴ですが、個人的には“3台マルチポイント対応”以外の訴求がやや弱かったように思えます。さらに7月25日にはソニーが「WF-1000XM5」を発表したため、発売間もない頃は「EAH-AZ80」に対しては様子見ムードもありました。
しかし、テクニクス「EAH-AZ80」の評価は、ソニー「WF-1000XM5」の発表後に高まりました。ライバルのレビューが出回り始めると、「EAH-AZ80」の有線イヤホンのようなモニター系高音質も比較対象に。“コンチャフィット”と名付けられた形状による装着感も知れ渡り、発売後しばらくしてから市場在庫が切れるほどのヒットモデルとなりました。
>> 2023年完全ワイヤレスイヤホン最強候補、テクニクス「EAH-AZ80」レビュー。アップル、BOSE、ソニーと比較も
実機をレビューした僕の評価は、高解像度系の音質と装着感の良さ。100段階で調整可能なノイズキャンセルも優秀です。一方、空間オーディオ等の流行りの機能はなく、派手さには欠けるところも。ただ、そんな質実剛健な部分が良いと思う向きもあるし、音質と装着感を重視する人には2023年で最も推薦したいモデルです。
■2023年の話題度トップモデル
ソニー「WF-1000XM5」(実勢価格:4万900円前後)
9月1日発売
四天王の筆頭とも言うべきモデルが、2年ぶりのソニー完全ワイヤレスイヤホンのハイエンド機種となる「WF-1000XM5」です。発表時点で市場推定価格4万2000円とこれまでにない高価格になり、さらに7月25日に発表してから一般発売は9月1日と待たされ、その間にさまざまなレビュアーやYouTuberの評価が飛び交うという、毀誉褒貶の激しいモデルでした。
諸手を挙げて好意的に受け入れられたのは、イヤホン本体の小型化。一方、評価の分かれるポイントは多数ありました。まず、ソニーが自称した“世界最高のノイキャン”の性能。他社よりも高額な市場推定価格4万2000円という値付け。大ヒットとなった前作の後継となるソニーのハイエンド完全ワイヤレスイヤホン。最高音質への期待が高すぎたのかもしれません。
>> 2023年完全ワイヤレスの主役が遂に登場!? ソニー「WF-1000XM5」実機レビュー
僕の評価としては、音質は臨場感と空間の広さはソニーらしい実力を発揮しているし、全ての面で最高ではないがトップグループという総合力に優れたモデル。ワイヤレスイヤホンにさまざまな性能や機能が求められる今では、選ぶ十分な理由になります。発売から約3カ月の間に、セールもあってライバル機種との価格差も縮まり購入しやすくなったところもポイントですね。
■やっぱり定番はアップル
Apple「AirPods Pro(第2世代)」(USB-C版/実勢価格:3万9800円前後)
9月23日発売
アップルは9月23日にiPhone 15シリーズの発売とタイミングを合わせてアップル「AirPods Pro(第2世代)」(USB-C版)を発売。2022年9月発売のLightning端子をUSB-Cに置き換えたモデルです。ただ発表に際して“「Apple Vision Pro」との組み合わせで20bit/48kHzのロスレス再生を実現”とも発表。それでは中身も別モノなのでは…? と思いきや、音質もノイキャン性能もLightning版と同じモデルです。
新鮮味はなくても、アクティブノイズキャンセルの強力さ、外音取り込みの自然さは優秀。iOS 17の更新時には“適応型オーディオ”も利用可能になりました。そして新機能ではないですがアップルは“空間オーディオ”の先駆者でもあります。
>> iPhone15と同時にUSB-C化した「AirPods Pro(第2世代)」レビュー。音質やノイキャン性能の違いは?
アップル純正“H2”チップ搭載で、iPhoneに近づけるだけでペアリングできる使い勝手も便利。USB-C版になったおかげという訳でもないですが、2023年発売の大ヒットモデルとしてアップル「AirPods Pro(第2世代)」は外せません。
■ノイキャン最強&空間オーディオで高評価
Bose「QuietComfort Ultra Earbuds II」(実勢価格:3万6300円前後)
10月19日発売
年末となった現在もホットな話題を集める人気モデルがBose「QuietComfort Ultra Earbuds II」。ノイズキャンセル最強ブランドであるBoseの新製品であり、約2カ月前に登場し世界最高のノイキャンを謳ったソニー「WF-1000XM5」の発売後というタイミングが絶妙でした。Bose自身は新機能“Boseイマーシブオーディオ”の空間オーディオを一番のセールスポイントとしていました。
製品が出回り始めると、“やはりノイズキャンセルはBoseが凄い”という評価が定着。Boseらしいパワフルなサウンドと新機能の空間オーディオのサウンドも臨場感抜群で、どんな曲でも立体音響になると大好評。
>> Bose vs. Apple イヤホン対決!「QuietComfort Ultra Earbuds」と「AirPods Pro(第2世代)USB-C版」を比較レビュー
総じて言えることとしては、前評判よりも実機を体験したユーザーの評判が良く、期待値の性能で人気に繋がっているということ。Boseらしいパワフル指向のサウンドに、aptX adaptiveコーデックによる音質面アップ。強力なノイズキャンセルと空間オーディオがお気に入りです。2023年発売の四天王の締めくくりに相応しい1台です。
■2024年の完全ワイヤレスイヤホン市場はどうなる?
2024年の完全ワイヤレスイヤホンは、いくつかのトレンドが見え始めています。
主役の高音質やノイズキャンセルの性能アップは、個人最適化(パーソナライズ)に注目。音質やノイズキャンセル効果を個人の耳の形に応じて調整する技術で、現在はAppleやBoseが先行しています。また「Apple Vision Pro」登場の後押しもあって、空間オーディオもトレンドとして再浮上。初物としての評価だけでなく、その完成度や汎用性が問われる1年になります。
他方で、耳を塞がない外の音が聞こえるワイヤレスイヤホンも2024年のさらなる勢力拡大を予想しています。これは、音質やノイキャン重視の本格派ワイヤレスイヤホンに対して、取り回しのラクさを重視するという真逆のトレンド。従来はShokzに代表される骨伝導イヤホンの独壇場でしたが、2024年はイヤホンに近い技術による高音質なサウンドを聴ける製品や、1万円以下のコスパ重視の製品など価格レンジも広がっていきそうです。
技術的には、2023年に一部製品で採用されたBluetooth LE Audio、LCコーデックにも注目。従来のBluetoothオーディオ(Classic Bluetooth)から技術転換となるもので、低遅延と低レートでの高音質を実現し、音途切れを押さえられるメリットもあります。2023年は利用可能なスマホが限られていたので、2024年はスマホ側の対応機種拡大に期待したいところです。
こうして見ると、完全ワイヤレスイヤホンは高音質・ノイキャンというサウンド関連の機能だけでなく、新機能や快適さまで、さまざまな方向へと進化しています。2024年も完全ワイヤレスイヤホンがオーディオ&ビジュアルの主役になることは間違ナシですよ。
<文/折原一也>
折原一也|1979年生まれ。PC系出版社の編集職を経て、オーディオ・ビジュアルライター/AV評論家として専門誌、Web、雑誌などで取材・執筆。国内、海外イベント取材によるトレンド解説はもちろん、実機取材による高画質・高音質の評価も行う。2009年によりオーディオビジュアルアワード「VGP」審査員/ライフスタイル分科会副座長。YouTube
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/577212/
- Source:&GP
- Author:&GP
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