490Lの荷室容量を持つVW「ID.2all」は実用的なだけでなく“シークレットソース”という遊び心溢れるBEV!

フォルクスワーゲン本社が、2026年に発売を予定している小型で安価なBEV(バッテリー駆動EV)である「ID.2all(アイディーツーオール)」。2023年12月にインテリアが公開され、このクルマへの興味がますます湧いてきました。

■“ID.ファミリー”で最も廉価なクルマ

ID.2allは、日本でも発売されているID.4など、いわゆるID.ファミリーに属するモデル(本国にはID.3からID.7まであります)。当面、最もコンパクトで、最も安価(2万5000ユーロ以下)なクルマとして設定されます(そのあと、さらに安いモデルも開発されるようですが)。

ID.2allのコンセプトモデルが発表されたのは、2023年3月。そのときはエクステリアだけで、12月にコペンハーゲンでインテリアをじっくり見る機会に恵まれました。

なんでそれで興味が湧いてきたかというと、パッケージングがものすごくよくできているからでした。ボディは全長4050mmで、ホイールベースは2600mm。全長に対してホイールベースの割合が長いのはBEVの特長ですが、それを超越した設計だと思いました。

というのは、スペース効率が素晴らしく優れているのです。先述の通り、ボディ外寸はけっして大きくありません。それでも、175cm超の身長の脚の長い欧州人が4人乗っていられます。

▲ゴルフなどVWのガソリン車との近似性を感じさせるエクステリアデザイン

■BEVならではの構造を活かした驚きの荷室容量

▲フラットフロアで使いやすそうな荷室

▲そうとう大きなものまで収納可能な荷室

さらなる驚きは、荷室です。容量は、通常の状態でも490リッター。フォルクスワーゲン(以下・VW)のラインナップでいうと、ゴルフはもとより、T-ROCやT-CROSSよりも大きな荷室です。

秘密は、燃料タンクをもたなくてよい床下にあります。ドライブトレインがすべて前に置かれているので、リアの荷室はうんと深くすることができたのです。

現場では、2リッターていどのミネラルウォーターの瓶1ダースのクレートをなんと3つ、収納するデモストレーションを見せてくれていました。

後席シートの座面を上に跳ね上げると、そこにも広いモノ入れが用意されています。このスペースの使い方はフォルクスワーゲンの設計能力の真骨頂ともいえるもの、と私は感心しました。

▲機能的でありながらデザイン性も高い後席シート

▲後席シートの座面を上げると現れるモノ入れ

VW乗用車部門でヘッドオブデザイン(デザイン統括)を務めるアンドレアス・ミント氏は、コペンハーゲンの会場で、「VWはラブブランド(愛されるブランド)になります」と改めて強調。

「そのために、ID.2allのデザインでは、3つの要素を考慮しています。誰からも好かれること、走りがよさそうなこと、そしてシークレットソースです」

シークレットソースは、今回、初めて、ジャーナリストの前で登場したキーワード。どういうこと? と、みなが不思議そうな顔をしていました。もちろん、私もです。

▲コペンハーゲンでインタビューに応えるアンドレアス・ミント氏

 

■デザイン統括がいう“シークレットソース”とは?

▲液晶モニターを2つ備える

実際にお目にかけますよ、とミント氏は私をID.2allのインテリアコンセプトモデルの車内に誘ってくれました。

私はドライバーズシート、ミント氏はパセンジャーズシートです。ミント氏がセンターコンソールのダイヤルを回すと、私の眼の前の速度計のデザインが、なんと、初代ビートルのものに変わりました。もう一度回すと、今度はゴルフ2のものに。

「デジタル技術を活用した遊び心です。シークレットソースは、かつて多くの人に愛されたVW車の要素を、そこかしこで再現すること。それで乗るひとに笑顔になってもらいたいんです」

▲多機能ダイヤルによってモニター表示選択可能

▲オリジナルビートルをイメージさせる表示も可能

▲ゴルフ カブリオレを思わせる表示も選択できる

みんなが知っているVWというと、スペース効率に秀でた設計、ディテールのビジュアル、それから外観が思いつきます。実際、ID.2allは、ID.ファミリーとは一線を画し、むしろ、ポロやゴルフに近い外観です。

「親しみやすさがとても大事」とミント氏は強調していました。おなじみのハッチバックスタイルでありつつ、どことなく、コロンっとしていて、キュートさすら感じさせます。

「私たちがいま目指していることはーー」。ID.2allについて、VWではプレスに語っています。

「ID.2allを完成させることです。目標は、乗る人が好き勝手に愛称をつけてくれること。また、クルマを分解して改造したりすること。乗る人たちを真っ先に考えて技術を使っていきます。それが満足いくレベルに達しないと完成とはいえません」

2026年発売予定のID.2allの紹介をするのに、1960年代にビートルやブリ(マイクロバスのこと)の映像を使うっていうのが、なんとも愉快です。

家族おおぜいで乗っていたり、サイケなペイントを施したりされたりしたのが、ほかのブランドにはない、VW車のいいところ、とこのメーカーでは考えているのです。

ID.2allはどうなるか。そこ、楽しみにしようではありませんか。そして、GTIやSUVなど、バリエーションも増えるようだし、ID.2allの快進撃を期待しています。

▲フロントシートはヘッドレストレイントにオーディオスピーカーを備える

▲ドア内張りのアームレストにウインドウ開閉やドアオープナーなど機能を集約

 

<文/小川フミオ>

オガワ・フミオ|自動車雑誌、グルメ誌、ライフスタイル誌の編集長を歴任。現在フリーランスのジャーナリストとして、自動車を中心にさまざまな分野の事柄について、幅広いメディアで執筆中

 

 

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