【The ORIGIN of the CAMP GEAR】
コンパクトチェアの金字塔、「チェアワン」シリーズを世に送り出した「ヘリノックス」。これまでのアウトドアチェアとは一線を画す、軽量コンパクトな仕上がりに、度肝を抜かれたキャンパーも多いのでは? 私もそんなひとりでした。
今回紹介するキャンプの定番ギアは、同ブランドの「コットワン コンバーチブル」(4万9500円)。チェアワン同様、軽量コンパクトながら、寝心地抜群。しかも組み立てやすいという、アウトドアコットに求める要素が全て揃っているギアと言っても過言ではありません。
▲コットというのはアウトドア用の組み立て式ベッドのことで、昨今のキャンプブームではマストなアイテムのひとつ
日本国内では2014年以前に既に販売が始まっていましたが、2015年からは総合アウトドアメーカーのモンベルが代理店として「コットワン」の取り扱いをスタート。2016年には「コットワンコンバーチブル」にモデルチェンジし、現在まで販売を続けています。
今回はモンベル広報部の長井さんの話も交えつつ、なぜ最強のコットなのか、その理由を見ていきましょう。
【理由①】他の追随を許さない圧倒的組立てやすさ
「コットワン コンバーチブル」の最重要ポイントは、その組み立てやすさにあります。
シート両端にポールを差し込みフレーム(脚パーツ)をポールに取り付ける、というのは他のコットにも共通することですが、そのフレームの取付方法がとにかく画期的。
▲少し体重をかけるだけでしっかりロック可能なフレーム
テコの原理を利用した独自の構造で、フレームをポールに引っ掛けたら、レバーを下げるだけ。“カチッ”と音がなれば、固定完了です。
軽く体重をかけるだけでセットアップできるので、誰でも安心して組み立て可能。片付けも非常に簡単で、レバーを軽く押しながら、両側面にあるパーツを押すだけでロックが解除されます。
▲ワンタッチでロック解除ができるため、撤収時もラクラク
今でこそ、テコの原理を利用したフレーム構造や、簡単操作のフレームロックが当たり前になっていますが、最初に開発したのは私の覚えている限りヘリノックスが初めてです。
また、フレームの強度についても、さすがヘリノックスと言ったところ。
コットもチェア同様、耐荷重が設定されており、一般的なコットの耐荷重は80kg〜100kg程度のところ、「コットワン コンバーチブル」は静荷重での耐荷重が145kg。数あるコットの中でもかなり高水準です。
「DAC社のポールをファニチャー類に使用できる唯一のブランドがヘリノックス。人の荷重を支える安全性が求められるコットというアイテムにおいてDAC社のポールに精通していることに加え、設計上の高い技術を持っているからこそ、ここまでの耐荷重性能が出せるんです」と長井さんは話します。
※DAC社とは、その強度・品質・精度の高さから世界的にも熱い支持を集めているアルミポールの世界的トップブランド。ヘリノックスはそんなDAC社のファニチャー開発から始まったブランド。
▲DAC社のオリジナル合金製ポール「TH72M」を採用。抜群の強度を誇る
この、人を選ばない耐荷重性能の高さもこれほどまでに人気となった理由のひとつではないでしょうか。
【理由②】独自構造と専用開発のシートが生み出す快適性能
快適に眠れるコットか否かはシートの張り具合も大きなポイント。張りが弱いと横になった際に沈み込んでしまい、肩周りが窮屈で圧迫感を感じたり、寝返りが打てずその都度目が覚めてしまったり。張り具合によっては、いっそのことコットを使わずにそのままマットを敷いて寝た方が眠れる...なんてこともあります。
▲一切のたるみなく、ぴしっと張りのあるシート。とにかくよく眠れる秘訣
この点についても、「コットワン コンバーチブル」はとにかく段違いで、軽く指で弾いた時に“ボンッ”とまるで太鼓を叩いたときのような音が鳴るほど。
この寝心地の良さにも、さきほど紹介した独自のフレーム構造が関係しているのだとか。
「テコの原理によりシートにテンションをかける構造と、荷重を受け止めるフレーム形状、そしてポールを含むパーツ類の強度などが全て相まって、沈み込みやゆるみに強いんです」(長井さん)
▲パーソナルマットよりもひとまわり大きいシートサイズで大柄な人でも快適
実際に横になってみるとよく分かりますが、自宅用の高反発マットレスのように沈み込みを抑えてくれます。体重80kgの私ですら快適に眠れるほどの反発力で、寝返りを打っても気になりません。他に比べてきしみも少ない印象。
▲細部に至るまで丁寧に作り込まれている。使用する素材も含めてトータルの完成度が非常に高い
私のコットワンは購入して5~6年ほど経過していますが、シートのヘタリ、たるみを特に感じることもなく、寝心地の良さは変わらず。…気づいていない可能性もありますが。
【理由③】トップクラスの軽量・コンパクトさ
「コットワン コンバーチブル」以前のコットは、大型の組み立て式が6kg前後、小型のものでも4kg〜5kgと、そこそこな重量がありました。ひとり分であれば気にならないけど、人数分揃えるとなると大変です。
それに比べて、コットワンは本体重量が2.19kg、スタッフバック込みでも2.32kgと驚異的な軽さ。収納サイズも幅54×奥行き16×高さ16cmとかなり小さい。
▲一般的な樹脂製パーソナルマットと同程度の収納サイズ
さすがに徒歩や公共交通機関を利用してのキャンプで持ち運ぶには大きいですが、大型コットと同程度かそれよりも少し良い寝心地を、この収納サイズで実現できているのは驚きです。
さて、ここまで褒めちぎるような内容でしたが、一番の難点はその価格。「良い商品なのはわかっちゃいるけど、なかなか手を出せない金額なんだよなぁ…」という方も多いのでは?
その点についても、“一度買ったら買い替えも必要なく長く使い続けられるギア”と考えたらどうでしょうか。ポールやシートの耐久性もさることながら、アフターサービスが充実しているので、長い目で見れば経済的。
「モンベルでは、過去モデルを含めて交換用パーツを準備しています。製品を長く愛用頂くための様々な修理サービスをご用意していますので、ぜひ一度モンベルの直営店までご相談頂ければ」(長井さん)
確かに高価なギアではありますが、長期間愛用できることを考えれば、良コスパなコットと言えるのではないでしょうか。清水の舞台から飛び降りるくらいの心境にはなりますが…。
* * *
余談ではありますが、コットワンの日本上陸以前のコット界隈は、そもそもコットを使うキャンパーがそれほど多くなく、商品の選択肢も少なかった、と記憶しています。
当時のコットといえば大型のイメージで、代表的なものでいえばGIコット系でしょうか。ワイドなシートサイズに、しっかりとしたフレームで、寝心地・安心感はともに十分。しかしその分、収納サイズも大きく重量もあるため、ある程度積載量のあるクルマでないと持ち運ぶのも大変でした。
▲GIコット系との収納サイズ比較。同程度以上の寝心地でこれほどまでにコンパクト
また、このタイプのコットは張りを出すためか、フレームの組み立てにかなり力が要る印象があります。個人的には大好きでしたが、自宅用ベッドとして使用していましたね。
小型の組み立て式コットもありました。3000円程度と非常に安価だったので、一時期愛用していましたが、剛性を確保するためかサイズに反してそれなりに重量があり、足部分の取り付けが大変なものが多かった印象。
▲「コットワン コンバーチブル」の別売パーツ「コットレッグ」(1万3420円)を使用することでハイコットにも。この仕組みもコットワンが初なのでは?
それが今や、軽量で収納サイズもコンパクト、張りも強くて組み立てやすい、そんなコットが当たり前に。私もキャンプを始めてせいぜい10年の若輩者ですが、それでもこの10年、リアルタイムでアイテムの進化を目の当たりにしてきました。
少なくともコット界隈の大きな変化は、「コットワン コンバーチブル」の影響が非常に大きかったなぁと感じますし、そもそもコットを使うキャンプが当たり前になったというのも、時代が変わったんだなぁとなんだか感慨深い気持ちになります。
>> ヘリノックス
>> [連載]The ORIGIN of the CAMP GEAR
<取材・文/山口健壱>
山口健壱(ヤマケン)|1989年生まれ茨城県出身。脱サラし、日本全国をキャンプでめぐる旅ののち、千葉県のキャンプ場でスタッフを経験。メーカーの商品イラストや番組MCなどもつとめる。著書に「キャンプのあやしいルール真相解明〜根拠のない思い込みにサヨウナラ」(三才ブックス)
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- Original:https://www.goodspress.jp/columns/578990/
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