2023年は宇宙開発競争が激化した年だった。世界のロケット打ち上げ数は212回で過去最高を記録。2024年2月にも米国のスタートアップIntuitive Machinesの「Nova-C」が民間企業として初めて月面着陸に成功するなど、宇宙開発のニュースが絶えない。McKinsey & Company, Inc.によると、宇宙産業は2030年には1兆ドル規模に成長するとのこと。
こうした状況で注目したいのが、衛星用のイメージング・ソリューションを提供する南アフリカのDragonfly Aerospace社だ。同社が開発したハイパフォーマンスなイメージング衛星や観測機器は、時間・コスト・リスクを最小限に抑えながら軌道上で運用することができる。
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Image Credits:Dragonfly Aerospace
高スペックを誇る小型衛星用観測カメララインナップ
Dragonfly Aerospaceの主力製品はキューブサット用のカメラである。キューブサットとは「キューブサテライト」の略で、キューブ状で数キログラム程度の小型衛星を指す。現時点では一般的にリモートセンシング、宇宙気象測定、通信技術の実証などの用途に地球低軌道で使用される衛星だ。
キューブサットに搭載されるカメラは上空から広範囲を観察できること、画像解析のために高精細であることが重要となる。Dragonfly Aerospaceのラインナップの中でも最も高性能な「Gecko」は1U (65ミリ×90ミリ×105ミリ)で重量0.5キログラム以下というサイズながら空間解像度(地上サンプル距離)39メートル、観測幅80キロメートルとなっている※1。
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Geckoの製品画像。Image Credits:Dragonfly Aerospace
SWIRイメージング技術は科学や産業、軍事などさまざまな場面で重要なツールだが、特に環境モニタリングや農業分析で普及が進んでいるものだ。
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Chameleon SWIRの製品画像。Image Credits:Dragonfly Aerospace
宇宙空間は大混雑?衝突回避のカギとなる「SSA」にも貢献
Dragonfly Aerospaceは、上記製品のうち2023年11月にローンチした「Chameleon SWIR」および「Komodo」を活用すれば、衛星運用者であるクライアントは地球観測およびSSAアプリケーション向けのデータ提供を強化できるとしている。
SSA(Space Situational Awareness)は日本語で「宇宙状況把握」。宇宙開発競争の過熱にともない地球周辺の宇宙空間が混雑するようになり、物体同士の衝突回避が重要な課題となっている。 SSA技術は物体の軌道を追跡、衝突の可能性を予測、衛星運用者が情報に基づいた意思決定を行うための貴重なデータを提供するうえで重要な役割を果たすものだ。
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地球周辺の宇宙空間は衝突の危険性が高い状態。Image Credits:Dragonfly Aerospace
自社製品としてカメラだけでなく衛星バスも開発
同社は衛星用カメラだけではなく、衛星プラットフォーム自体も自社開発している。現時点で展開されているのは150キロクラスの「Dragonfly Bus」およびさらに小型の100キロクラス衛星「µDragonfly Bus」の2モデル。前者は農業・地質モニタリングに、後者はワイドスペクトラムの地表観測で活躍する。
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Image Credits:Dragonfly Aerospace
衛星の観測技術が進展すれば、自然災害の予測や無人輸送システム、農業の効率化などさまざまな社会問題の解決につながると言われている。また、低軌道で使用されてきたキューブサットは、技術の進歩と共に地表観測だけでなく低コスト宇宙探索でも大きな役割を果たすようになった。Dragonfly Aerospaceも含め、今後の宇宙スタートアップの発展と技術推進が待望されるところだ。
※1:隣り合う2つのピクセルの中心間の地表面上で測定された距離。数字が小さいほど高精細
※2:一般的なRGBカメラは、3バンド(RGB)の波長情報を取得する。マルチスペクトルカメラの波長情報は10バンド程度、ハイパースペクトルカメラのバンド数は10万バンド以上の波長情報を取得する
(文:Takasugi)
- Original:https://techable.jp/archives/229271
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:Techable編集部
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