インドネシアの首都・ジャカルタは交通渋滞が深刻な課題となっている。SNSでは渋滞で苦しむ在留邦人の悲痛な声であふれているほか、同国の首都移転の理由の一つとして渋滞が挙げられているほどだ。
そんな中、2021年にPT Astro Technologies Indonesia社(以下、Astro)が24時間いつでも15分以内に商品を届けるサービスをジャカルタ中心に展開。慢性的な渋滞で時間を読むのが困難なジャカルタでは、画期的なサービスだ。24時間対応のほか、「最短15分」ではなく「15分以内」である点も目を引く。
この配達サービスはAstroの名で親しまれ、App StoreやGoogle Playにてダウンロード可能。現在、企業の公式Instagramアカウントは13万以上のフォロワー数を誇る。なお、ユーザー数は公表されていない。
ミッションは「生活をよりシンプルに・より便利に」
AstroのLinkedIn公式アカウントによると、同社のミッションは「時間・お金・エネルギーを節約して生活をよりシンプルに、より便利にする」こと。それを体現するように、専用アプリは直感的に操作ができる仕様になっており、注文や支払い、配達員やカスタマーサービス(CS)とのチャットまで、すべてアプリで完結できる。ECサイトを使ったことがあれば、操作に迷うことはないだろう。
注文方法はいたってシンプル。注文すると最寄りの配達員が商品をピックアップし、15分以内に届けてくれるという。ネットスーパーとフードデリバリーの組み合わせといえばイメージしやすいかもしれない。
予定どおり配達できなかった場合は、配送料が返金されるが、その場合も顧客側からアクションを起こす必要はない。同社のCSにチャットで確認したところ、システムが遅延を検知し、返金まで全て自動で完了するという。ちなみにCSとのチャットは時間帯に関わらず開始から1分ほどでつながり、快適そのものだった。何かトラブルがあったときも、安心して利用できそうだ。
なお、支払い方法はOVOやGoPayといった主要な電子マネーのほか、クレジットカード・デビットカード、さらに銀行振込にも対応している。完全キャッシュレスだ。
このように、Astroはミッションを徹底的にアクションに落とし込んでいるところが注目すべきところでもある。
同社のCEO兼共同設立者であるVincent Tjendra氏は、過去にインドネシア大手ECのTokopediaでデータアナリスト兼プロダクトマネージャーを務めていた人物だ。その経験をフル活用するのに、Astroはもってこいの舞台だろう。
「15分以内に配達」のカギは配達員の確保
注文から15分以内での配達を実現する鍵の一つは、物流だ。たとえば商品をピックアップする場所(ピックアップポイント)や配達員の確保は欠かせない。
ピックアップポイントの数についてAstroにチャットで問い合わせたが、回答できないとのことだった。
一方、配達員の確保はさほど難しくないと考えられる。応募のハードルが低く、掛け持ちができるからだ。
配達員募集ページの職務要件に「男性(35歳まで)」「配送サービス分野で1年の経験あり」「ワクチンを接種していること」などが記載されているが、特別なスキルがなくても始められそうである。応募は公式サイトからフォームを送信するだけで完了。“身分証明書のアップロードすら求められない”という手軽さはドライバーのハードルを下げている一方で、利用者の視点からすると少し気になるところなのかもしれない。
ジャカルタなどではすでにGojekなどのオンラインタクシーが浸透しており、ドライバーが買い物代行サービスの配達業務も行っている。1人のドライバーが、複数のオンラインタクシー事業者に登録しているケースも珍しくない。
このため、応募する側が「収入を増やせる機会」として、Astroに応募するといったことも期待できるだろう。
こだわりのプライベートブランド品が充実
注文した品を、最寄りのドライバーがピックアップして届ける--Astroのサービスは一見すると、単なる買い物代行サービスのようにも思える。
だがアプリで品揃えを見ると、「Astro」のロゴが入った商品の数々が目に入る。これはプライベートブランド品(以下「PB商品」と表記)だ。食品や日用品はもちろん、USBケーブルなどのスマホの周辺機器まで幅広く手掛けている。
PB商品はパッケージデザインも洗練されており、低コレステロールの卵や、保存料無添加のクッキーなど、健康志向にも対応。こだわりが感じられる。
PB商品以外に市販の品々も取り揃えているため、顧客の利便性を損なうこともない。ここでもミッションに忠実な姿勢が見られる。
SNSでレシピや家事のコツなどを発信
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AstroはSNSの運用にも余念がない。Instagramでは新商品やキャンペーン情報はもちろん、レシピや家事のコツ(卵のゆで方や台所の掃除の方法など)も積極的に発信している。
先ほども触れたとおり、同社は生鮮食品や洗剤などの日用品もPB商品として数多く取り扱っているため、Instagramの投稿が売上に貢献していることは想像に難くない。
課題は“対応地域の狭さ”か
Astroについて気になるのは対応地域の狭さだ。Astroが利用できるのは、2024年3月時点で、ジャカルタとその周辺に限られている。第2都市のスラバヤ、第3都市のバンドンにも、まだ進出していない模様だ。
同社にチャットで確認したところ、ピックアップポイントは自前で運営しているとのことだったため、その確保が一つのネックになっていると考えられる。
とはいえ、Astroは今後もサービスエリアの拡大を目指して開発を進める意向を示している。
「生活をよりシンプルに・より便利に」というミッションを形にしてきたAstro。今後の展開に注目したい。
参考・引用元:
Astro 公式サイト
Astro App Store/Google Play
(文・サト)
- Original:https://techable.jp/archives/229857
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:Haruka Isobe
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