インドネシア発・戒律を順守するイスラム金融P2Pレンディングサービス「ALAMI」が事業拡大中

日本は明治時代の執政者の賢明な判断が奏功し、全国各地に地銀と信用金庫が存在する。しかも、これらの金融機関は地元ではメガバンクよりも信頼されている。

が、そのような盤石の金融インフラが整っている国は世界でも稀だ。有望なスタートアップを次々と輩出するインドネシアでは、農村部に存在する「金融の空白」をP2Pレンディングで埋めようとする取り組みが活発になっている。

Image Credits:ALAMI

しかし、出資者から集めた資金を対象者に貸し付けてそこから金利を取るという金融の基本的な仕組みはインドネシアではあまり歓迎されていない。なぜなら、インドネシア国民の9割近くはイスラム教徒だからだ。そうした事情から、イスラム教徒に寄り添ったP2Pレンディングサービス「ALAMI」が注目されている。

イスラム法に則ったP2Pレンディング

インドネシアの首都ジャカルタに拠点を置くALAMIグループは、2023年10月にIntudo Ventures主導の投資ラウンドで資金調達を行った。調達額は非公開だが、これはALAMIのさらなる成長を狙う出資劇である。

ALAMIが展開するのは、スマホアプリを活用したP2Pレンディングサービス。その内容はシャリア(イスラム法)を厳格に守ることで知られている。

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シャリアでは顧客から金利を取るビジネスを禁じている。資金を求める顧客に融資を行い、後日元金に金利分を上乗せした額を少しずつ返済してもらう……イスラム教徒以外の現代人にとって金融のこの仕組みはごくごく当然だが、金利が前提の事業はアルコールや豚肉と同じくハラム(禁忌)なのだ。

そこで「イスラム金融」という手段が登場する。

方法はさまざまあるが、最もポピュラーなイスラム金融は「分割払い」である。たとえば土地を購入する際、実際の購入希望者の代わりに銀行が該当の土地を買う。その後、購入希望者は決まった間隔で銀行に分割金を支払う。銀行が土地を転売するという形にすれば、金利を発生させる必要はないという考え方だ。

イスラム評議会の認証マークを取得

ただし、銀行ないしP2Pレンディングサービスがこうした金融事業を始めたからといって、即座に「シャリアに則ったイスラム金融」を自称することはできない。インドネシアの場合は、必ずMUI(インドネシア・ウラマー評議会)のファトゥワ(イスラム法の法的決定)が必要だ。このあたりは、食品のハラル認証取得の流れとほぼ同様である。イスラム法学者が厳格なチェックを行い、該当の仕組みがハラルかハラムかを判断する。

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ALAMIはこのファトゥワを取得し、MUIの認証マークを掲げる許可をすでに得ている。これがあれば、インドネシア全国のイスラム教徒は安心してALAMIのP2Pレンディングを利用できるのだ。

スマート養殖システム「eFishery」と業務提携

そしてこのALAMI、今やインドネシアを代表するアグリテック企業に成長したeFisheryと業務提携を結んでいる。
eFisheryはスマート養殖給餌機を農村部の一次産業従事者に提供し、世界的にも注目されている。が、中小規模の農家でもある養殖堀経営者から見れば、eFisheryの機器は決して安いものではない。そこで2018年からMUIの認証マークを取得しているALAMIの出番となるのだ。

東南アジアでのビジネスは、常に信仰と隣り合わせだということを忘れてはいけない。

特にインドネシアは、世界で最も多くのイスラム教徒を抱える国でもある。シャリアは、多くの日本人にはやや縁遠くも感じるかもしれないが、イスラム教徒にとっては精神的支柱だ。金融分野においても無視することはできない。

デジタル化されたイスラム金融プラットフォームの拡大は、農村部の一次産業従事者に新しいビジネスチャンスを与えている。日本もこの流れから目を逸らすことはできないはずだ。

参照:ALAMI

(文・澤田 真一)


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