【特集】成長するペットテック市場、ユニークな猫用ガジェットも

Global Market Insightsの2023年報告書によると、ペットテック市場は2023年から2032年にかけてCAGR15%以上を記録すると予測されている。2桁の成長率を支えるのが世界的な「Pet Humanization(ペットの家族化)」トレンドだ。

ペット保険相談サービス「MOFFME」が2024年3月に実施・発表したアンケートでは、犬または猫を飼育している人の99.6%が「ペットは家族」と回答。欧米でも昔からある考え方だが、U.S. Chamber of Commerceの記事では、特にコロナ禍以降にこの傾向が強まっているとのこと。「pet parents(ペットの親)」と呼ばれる飼い主たちをターゲットにさまざまなビジネスが生まれている。

今回はクラウドファンディングサイトで“猫グッズ”を眺めながら、海外企業のものづくりを見てみる。

ユニークなスマート猫グッズ

日本でも“ペットと泊まれる宿”が人気だが、犬に比べて猫は本来環境の変化に敏感な生き物。1泊程度であればペットホテルに預けたり連れて行ったりするより、留守番をさせた方が負担は少ないとされている(健康な成猫で極度の寂しがり屋ではない場合)。

ここで紹介する「スマート猫グッズ」があれば、飼い主も愛猫もより安心できるかもしれない。長時間の留守番をさせる予定のない人にとっても、普段から“使える”ガジェットだ。もちろん、これらのグッズがいくら便利でも、不適切な長期間にわたり猫に留守番をさせることのないよう、最初にお断りしておきたい。

猫用スマート水洗トイレ「Petgugu」

まず紹介するのは、猫用スマート水洗トイレ「Petgugu」だ。猫の排泄物を自動洗浄し、臭わないように瞬時に処理する。スマート脱臭、除菌・殺菌を実現した猫用トイレである。

現在クラウドファンディングサイトIndieGoGoにてプロジェクトを実施している。

Image Credits:IndieGoGo

猫が排泄したら即座に水で洗い流す自動水洗機能に加え、空気清浄機能、UV除菌機能で臭いやバクテリアとは無縁の暮らしを実現する。


出入口はどんな猫種にも対応できるように設計されており、体重約11キロの猫まで出入り可能。重量や赤外線など複数のセンサー搭載で猫の安全を確保している。あらかじめ15リットル分の猫砂を入れておけば、猫が3匹いたとしても12日間使用できるというから、多頭飼いにも便利だ。猫砂の量を感知し自動的に砂を補充するので、飼い主自らこまめに補充する必要はない。

トイレの使用状況と愛猫の健康状態は専用アプリでチェック可能。トイレに内蔵されたHD暗視カメラによって、24時間リアルタイムで愛猫のトイレ使用をモニターし、排泄物の状態を把握できる。

Image Credits:IndieGoGo

なお、トイレ自体の清掃は月に1回、しかも簡単に済むというからうれしい。給水ホースと排水ホースなどがセットになったPetguguは設置も簡単で、工事の必要もなくわずか1分で設置可能とのこと。

開発・販売を行うPetgugu社はシンガポールを拠点とする企業。とにかくペットに愛情を注ぎ大切にすることを最優先し、科学的根拠に基づきペットを育成、すべての過程で寄り添うことを目指している。ペットに関するビッグデータを積極的に集積し、その活用によってペットの健康に働きかけ、上質なペットライフを創出する構えだ。

ウェットや生のフードもOK!冷蔵自動給餌器

続いて、冷蔵式のスマートペットフィーダー(冷蔵自動給餌器)をご紹介したい。Happy Llama Tech社の冷蔵自動給餌器は、6食分のウェットフードや生鮮食品をフレッシュな状態に保てる製品である。

Image Credits:IndieGoGo

ウェットフード対応の従来製品は鮮度を保つために保冷剤や保冷バッグを使うものが多いが、こちらは冷蔵庫とフィーダーが合体したもの。これさえあれば、飼い主の留守中も就寝中もペットに新鮮な食事を与えることができる。

設置も使用も簡単で、電源プラグを差し込んでフィーダーを満たし、アプリで給餌の時間を選ぶだけ。ステンレス製のトレイには最大6回分の食事を入れておける。ヒゲが不要な刺激を察知しないようにという配慮から、ボウルは角をなくして“ヒゲストレス”を軽減した。

Wi-Fi接続の本体はアプリで簡単に操作可能、いつでもどこにいても好きな時刻に食事の時間を設定できる。給餌を行うとアプリに通知が届き、停電などのトラブルが発生した場合も通知がくる。

Image Credits:IndieGoGo

華氏40度(摂氏4度)以下でエサを冷蔵保存できるので、ウェットフードや生ものしか食べないコでも安心だ。持病があって食事療法を行っているペットの給餌にも活用できる。また、耳が遠くて食事が出てきたことに気付かないペットや忙しい飼い主のため、フードがあと何食分残っているかライトの光を変えて知らせてくれる機能も。

Image Credits:IndieGoGo

開発はアメリカの企業Happy Llama Tech。ペットを愛してはいるが毎日決まった時間に家にいられない飼い主のため、さらなる自由を必要とする人たちのために同製品を開発したという。このデバイスがあれば、ペットの健康を損なうことなく、飼い主は仕事にも遊びにも思い切り専念できるだろう。

IndieGoGoでのプロジェクト自体は終了済みだが、リターンの購入はまだ可能な状態だ(日本は配送エリアに含まれていない)。

セルフグルーミング器「PawSwing」+“猫毛”フェルトサービス

次に紹介するのが、猫用セルフグルーミング器「PawSwing」だ。グルーミングは猫の肌と毛の健康に欠かせない大切なケア。こちらもIndieGoGoにてプロジェクトを実施しており、残り2週間あまりで約2700万円の資金を集め大成功を収めている。

Image Credits:IndieGoGo

PawSwingの本体は丈夫なフェルトボックスで、狭い空間に入りたいという猫の本能を刺激する。入り口部分に猫の舌を模したコームがついているため、出入りのたびに自然とグルーミングができるという仕組みだ。静電気防止布と食品グレードシリコンのコームが、猫の動きに合わせて前後に滑って毛を梳かしてくれる。

Image Credits:IndieGoGo

上部に自動のおやつディスペンサーが設置されているため、トイレと間違われることもない。猫の体格に合わせてスライド機能で入り口のサイズ調整でき、多頭飼いの家にもピッタリ。コーム部分も伸縮自在で、最大40ポンド(約18キロ)の猫まで対応できる。

抜けた毛は入り口にあるボックス部分に集められるうえ、溜まった毛を開発企業PawSwingに送ると羊毛フェルトのようにつついてミニ版の愛猫を作ってくれるサービスがあるとか。

Image Credits:IndieGoGo

猫への深い愛情を感じる猫毛フェルトサービスのほか、好奇心旺盛で用心深い猫の性格を考慮して、グルーミング器に慣れるための適応期間を設けるなど、とにかく猫ファーストな製品だ。それは開発背景にも関係しているかもしれない。

このグルーミング器の開発スタッフは2019年、泥にまみれた迷子の子猫を見つける。手の平に乗るほど小さな子猫をどうしたらいいかその場で1時間迷った末に、家に連れて帰ることに。このときに蒔かれた種の実った結果が、PawSwingという企業の設立と製品の誕生だ。「オレンジ」と名付けられた子猫は今では見違えるほど美しい毛並みの成猫に成長している。

Image Credits:IndieGoGo


以上、飼い主の時間を確保しつつ猫の留守番を快適にするグッズを紹介した。ペットを飼う責任は重大だし、ペットと一緒に過ごす時間を大切にすべきなのは言うまでもないが、時おり羽を伸ばし自由なひとり時間を満喫する際の一助にいかがだろうか。

(文・根岸志乃)


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