【達人のプラモ術】
ハセガワ
「1/35 タダノ ラフテレーンクレーンGR-130NL/N クレヴォ mini G4」
06/06
さて! 完成編となる今回は、車体にデカールを貼っていきます。ところで街や現場で目にする建機、特にクレーン車と言えば、大抵アームに大きく『〇×建設』と書かれていますよね、そこでデカールを自作して『&GP建設』のロゴをアームと車体に入れてみました。こうしたアレンジも模型の楽しみ方のひとつです。架空のロゴですがイエローカラーの車体にベストマッチ! さらに車体にウエザリング(汚し塗装)を施して、リアルなラフテレーンクレーンの完成です!(全6回の最終回/1回目、2回目、3回目、4回目、5回目)
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」などでもレビューを配信中。
■コ―ションマーク(注意書き)のデカールを貼る
キットは、タダノのロゴや車体各部のコーションマーク(注意書き)がデカールで用意されています。軍用機などでお馴染みのコーションマークですが建機でも、こんなにあるんだと思うくらい車体各部に注意書きが入っています(窓枠やナンバープレートなどを除いて60枚前後)。
塗装図にチェックマークを入れながら全て貼っていきます。ちなみに1/48の航空自衛隊F-4EJ改だとコーションマークを約300枚貼らなくてはいけないので、それに比べれば楽かも…。頑張って貼っていきます。
コーションマークは小さいサイズが多いので、密着力をあげるマークセッター、そして精密ピンセットの使用が必須です。
▲キット付属のデカール。発色等の質も良く貼りやすい。塗装図を参照しながら貼っていく
▲バンパーの警戒ラインはサイズがギリギリなので、乾燥後にデカールのフチの部分が欠けやすい。マークセッターを使って密着させる
▲車体各部にある滑り止め塗装は塗装だとマスキングが大変なのだが、デカールで再現されているのがありがたい
▲GSI クレオス「Mr.マークセッター模型用デカール軟化剤」(308円) 水溶性の模型用デカール軟化剤。デカールのベースフィルムを柔らかくして凹凸でも曲面でも馴染ませやすくなる。ノリの成分も含まれているのでデカールの密着力もアップさせられる。ただし塗装が水性塗料の場合、塗膜を溶かすことがあるので要注意
▲タミヤ「精密ピンセット(ストレートタイプ)」(1980円) 握った力がダイレクトに先端に伝わるストレートタイプのピンセット。精密研磨加工されたシャープな先端なのでコーションマークのような小さなデカールを掴むのに適している
■&GP建設デカールを自作する!
今回は車体をオリジナルのイエローで塗装したこともあって、いかにも建機らしい雰囲気に仕上がったラフテレーンクレーンではありますが、見ているとウームもうひとつ何か足りないなぁと感じたワケです。なんだろうと考えてみると、建機って大体において○×建設とか○△工業といった社名が車体に大きく描かれているんですよ。クレーンであればアーム部分に大きく社名が書かれています。
そう! それが足りないんだ! というワケで社名ロゴのデカールを自作しました。
■インクジェットプリンターで作るオリジナルデカール
以前はデカールを自作するとなると、専門の業者に依頼する必要があり価格も高価でしたが、今はプリンターとパソコンがあれば簡単に自作できるようになりました。自作用デカール製作のためのフィルム台紙も、ホビーメーカーをはじめPCのサプライ用品メーカーなどから数多く発売されています。今回は一般で普及しているインクジエットプリンター、あとはエクセルやイラストレーター等の描画ソフトがあればOKです。
使用したのはTransOurDreamというメーカーの「インクジェット用水転写シート(クリア)」です。A4版のシートが5枚入って実売価格800円前後で購入できます。
今回は&GPのロゴデータをパソコンに取り込んで、エクセルで「&GP建設」のロゴを作成。クレーンのアームや車体に合わせて何種類かサイズの違うロゴを作っています。
シートはA4サイズなので、効率的にロゴデータをコピペして、なるべく多く無駄が出ないようにレイアウトしておきます。
自作デカールは、印刷時にムラができたり、貼る際に破れるなどのトラブルも多いので、予備を含めてロゴを複数枚を用意しておくのがポイントです。また印刷の際はプリンターの設定は高品位、あるいは光沢紙に設定しておきます。
印刷後はインクが乾くまで1時間前後乾燥させて、水性アクリル塗料(Mr.ホビー「水性プレミアムトップコート」を使用)の缶スプレーでコートしておきます。吹き付け→乾燥→吹き付けと3回程度塗り重ねます。インクジェットプリンターの染料・顔料インクは、そのままだと水に溶け出してしまうのでコート塗装は必須です。
また印刷したロゴは一般的なデカールのように1枚づつカットされていないので、自身でカットして使用します。その際にロゴサイズギリギリではなく、余白を大きめ(1ミリ以上)とっておくようにします(後で理由を解説)。
▲TransOurDream「インクジェット用水転写シート A4 5枚 クリア(透明)」(実勢価格:800円前後) インクジェットプリンターの染料インク・顔料インクに対応しておりプラスチックをはじめ、木、金属、樹脂、ガラスなどにも貼れる水クリアータイプの水転写シート。印刷後に水性アクリルスプレーでのコートが必要。A4サイズ5枚入り
▲プリンターの印刷設定を高品位にして、エクセルで作成した『&GP建設』のロゴを印刷
▲GSIクレオス「Mr.トップコート 水性プレミアムトップコート(半光沢)スプレー」(660円) トップコートは、水性の表面仕上げ用コート剤。デカールを傷めることなく表面を保護。同時に塗装面とデカールのツヤの差を解消し、段差を目立たなくできる
■『&GP建設』デカールを貼る!
自作したデカールをカットしたら、普通のデカールと同じように水に浸けて、シート全体に水が行き渡ったらすぐに水から引き上げます。浸けたままにするのは避けてください。この際にインクが水に溶け出してくるようであればトップコート不足が原因です。
水を浸透させたシート上でノリが溶けてデカールが軽く動けばOK。パーツに貼れるのですが、シートはピンセットで持ち上げるとすぐに丸まってしまうので、パーツの貼る位置まで台紙ごと持っていき、シートをパーツ上にスライドさせて貼っていきます。
位置が決まったら綿棒でシート内側の水分を押し出して定着させます。この際もフチが丸まりやすいので綿棒で丁重にフチを伸ばしてしっかり密着させます。
またシートのフィルムは柔らかくよく伸びるのですが、貼る際に不用意に伸ばしてしまうと、インクが引っ張られてヒビが入ってしまうので要注意です。また乾燥時間はしっかり取ってください(最低でも24時間)。
▲トップコートによるオーバーコートが甘いと水に浸けた際にインクが溶け出してしまう
■乾燥後にシートのめくれをカット
自作水転写シートはシートの特性なのか、水に浸けるととても丸まりやすいので、扱いには慣れが必要です。
印刷したロゴをカットする際に、シートの余白を多めに取るのは丸まりやすいシートへの対策です。印刷した部位が丸まってしまった場合、それを綿棒で伸ばすとヒビが入ったり印字がカスレるといったトラブルの原因になります。実際、乾燥後にチェックしたところ何か所かシートのフチがめくれてしまっていました。その部分はデザインナイフでカットして修正しています。
▲水に浸けたシートは時間を置くにつれてどんどん丸まっていくので、複数枚同時に水に浸けてしまうのはNGだ
▲シートはロゴサイズより1~2ミリ程度大きめに余白を作って台紙ごとカットしておく
▲アームの右側は位置的に&GPと建設の間に凸部分がありデカールシートと干渉してしまうので、2つにカットして貼っている
▲貼ったシートは綿棒で水分を押し出して、丸まりやすいフチの部分をしっかりと密着させる
▲アームの『&GP建設』の貼り込みが完了。働くラフテレーンクレーンのイメージが120パーセントアップ
▲運転席後部と車体右側にもサイズの違う『&GP』のロゴを入れてみた。TADANOのロゴはキット付属のデカールだ
■デカール貼りが完了!
扱いに慣れは必要ですが、自作デカールを使ったことでオリジナリティ溢れるラフテレーンクレーンになりました。リアル志向でいくならば、個人で楽しむ限り実在の建設会社のロゴを入れても良いと思うし、ロゴだけではなくパーソナルマークを入れても面白いと思います。デカールを自作することで楽しさと作品の個性が大きく広がりますね。
▼デカール貼りが完了したラフテレーンクレーン『&GP建設』仕様
■建機なんだから、やはりウエザリングは欠かせません!
現場で働く建機ですから、やはりウエザリング(汚し塗装)は欠かせませんよね。特に今回イエローカラーに塗装したことで、キレイな車体そのままだと、どうしてもTOY感が出てしまいます。ロゴを入れたことである意味リアルな雰囲気は出てきましたが、ここはもうひとつ車体にウエザリングを施すことで、働く建機のリアル感を作品に吹きこみましょう。
■スミ入れ塗料を使って汚れを表現
今回ウエザリングはタミヤのスミ入れ塗料を使用しています。気を付けなくてはいけないのが、ラフテレーンクレーンは軍用車ではないということです。戦車や装甲車では、ガッツリと汚し塗装をしても違和感はないのですが、建機は汚れ方もミリタリービークルとは違います。そこで、極端な汚れや塗装のハゲ、サビといったウエザリングを施すのではなく、ちょっとした土汚れ的な軽いウエザリングで仕上げています。
そしてウエザリング塗装の前に自作デカールを保護するために、車体全体トップコートのセミグロスクリアーでオーバーコート塗装を施しています。
▲タミヤスミ入れ塗料使ったウエザリング。使用色はブラック、ブラウン、ダークブラウンの3色。スミ入れ塗料は攪拌せずに上澄みの薄い色を使うのがポイント
▲クレーン等はスミ入れ塗料のブラックでウォッシング。モールドされている配管等のディテールを強調する
▲車体やエンジン周りの排熱口はスミ入れすることで奥行き感を強調する
▲クレーンアーム基部のビスまわりへのスミ入れは厳禁。ネジなど応力がかかっている部分にエナメル塗料が入り込むと、割れの原因になる
▲車体下回り、ホイール、アウトリガといった部分はブラウンとダークブラウンで汚れを再現
■これにてタダノラフテレーンクレーン『&GP建設』仕様が完成!
ウエザリングが完了したらラフテレーンクレーン『&GP建設』仕様の完成です。
キットは細部までよく再現されていて、パーツも多く、車体をイエローで塗装、デカールの自作等をしたこともあり、手間はかかりました。
しかし完成してみると存在感があり、お気に入りの一作になりました。ぜひ皆さんもカタにはまることなくオリジナルラフテレーンクレーンの製作にチャレンジしてみてください!
▼完成画像
さて次回は2044静岡ホビーショーレポートをお送ります。お楽しみに!
【おまけ】パイプを吊り下げてみました!
せっかくのクレーン製作、アームだって伸縮できるので、手元にあったアルミパイプをカットして吊り下げてみました。楽しいです。
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/599053/
- Source:&GP
- Author:&GP
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