富山の郷土料理、ご当地グルメの筆頭「ますのすし」です(『ますすし』とも)。
富山県内には40前後もの専門業者があるとされ、各社ともに独自の製法にこだわり「ますのすし」を生産し続けていますが、中でも一大ブランドとして挙げられるのが「ますのすし本舗 源」です。
地元での料亭運営から後に駅弁業に着手。地元に伝わる伝統的な「ますのすし」製法にこだわりながらも、主要駅や、はたまた各地で開催される物産展などでも積極的に販売したことで、「ますのすし」を全国に広め立役者的ブランドとして知られています。
そして、地元の専門業者の中でも特に伝統的な味わいを貫いていることも特長で、このこともまた全国に多くのファンを持つゆえんと言って良いでしょう。
富山名物「ますのすし」。そのシンプルながらも奥深い「作り方」を教わりました。
▲「ますのすし」の故郷と言っても良い富山・神通川のすぐ近くにある「ますのすしミュージアム」
▲「ますのすし」の歴史・文化・製法にまつわる様々な展示があります
そんな「ますのすし本舗 源」ですが、実は富山県内に「ますのすしミュージアム」という施設を持っており、ここでは「ますのすし」の歴史・文化・製法に深く触れる展示が多くあります。また、事前予約で「ますのすし手作り体験」も実施しており、主に「詰める」工程を中心に惜しみなく一般に教えているとも。
今回は、この「ますのすしミュージアム」で「ますのすし」の作り方を教わってきました。シンプルながらも奥が深い作り方とは一体!?
■「ますのすし」を作る上で、「鱒」「飯」「酢」「塩」など以外に欠かせぬものは!?
▲全身に衛生具をまとい教えてもらいました
今回、筆者に「ますのすし」の作り方を教えてくださったのは副館長の宮口和起さん。全身の衛生具をまとい、さっそくレクチャーを受けました。
まず、「ますのすし」作りに欠かせないのが「鱒」「飯」「酢」「塩」の4種類。
▲「ますのすし」を覆い、押し寿司にする「笹」「わっぱ」類
そしてそれを覆う「笹」、押し寿司にする「わっぱ」などになるわけですが、宮口さんはここですかさず「もう一つ、絶対に欠かせないものがあるのです」とも言います。
「他に何があったかな……」と考えあぐねていると、宮口さんは一言こう教えてくれました。
「もう一つ欠かせないものは……愛情です」
なるほど、確かに一番大切なものだと思います。
■想像以上に難しい「笹」の配置と「酢飯」詰め
食べる人の気持ちを思い、愛情を忘れずに実践に入りました。まず、「わっぱ」の曲面に対し、右利きの場合は時計周りに順々に「笹」を並べていきます。
「わっぱ」の直径と、そこからはみ出る「笹」は半分・半分くらいになるバランスで並べていくわけですが、まだ押していない状態ですので、「笹」がフワフワして綺麗に並べるだけでも少々難航。しかし、そこは優しい宮口さん。慌てる筆者の前でも何度もやり直させてくれ、なんとか綺麗に並べることができました。
▲「笹」の葉脈の硬いところを上にし、時計回りに並べていきます
▲なんとか綺麗に並べることができました
そして、その「笹」の上に「酢飯」を押すように入れていきます。今回教えてもらった「わっぱ」のサイズは「小丸」というサイズのもので、この場合は「酢飯」が約200g。「なるほど。これならできるだろう」と思いながら、酢飯を「わっぱ」に詰めていくと、これまた「笹」がズレていきます。
ここも難しいポイントらしく、「笹」がズレないように優しく「酢飯」を詰めていくのが良いとのことでした。
▲「酢飯」を詰めるところ
■「鱒」の並べ方にも繊細なコツが…
「酢飯」が綺麗に詰められたところで、肝心の「鱒」を乗せていきます。
「鱒」は新鮮なものに塩を振り酢漬けしておいた、良いあんばいのものを使いますが、ここでもコツがあります。
▲「鱒」を乗せるのにもコツが必要です
「鱒」の切り身と切り身の間に隙間ができないようにする一方、できるだけ切り身同士が重ならないことも重要。重ねったところは味ムラができるので、これもダメ。なんとか綺麗にムラなく乗せていきます。
どうしてもできてしまう隙間に対しては、「鱒」の身を千切るなどして埋め、「酢飯」が見えなくなったところで、盛り付けは完成です。
▲なんとか完成した盛り付け。多少の身の被りが起きているのはご容赦を…
■「わっぱ」の上部・底部に「竹」をかけて完成!
盛り付けが終わったら、「わっぱ」に蓋をし、上部と底部に「竹」を挟み、専用の器具で押さえながら輪ゴムをし密封します。最後に「わっぱ」や「パッケージ」に自分の名前などを書いて完成です。
▲「わっぱ」に「竹」を挟み、専用器具で押さえながら輪ゴムをし密封させます
▲最後に「わっぱ」や「パッケージ」に自分の名前などを書いて完成
ここまでの通り、ごくごくシンプルでありながら「鱒」「酢飯」の味付け、そして細部の仕込みには相応のコツや技が必要なのが「ますのすし」。「ますのすし本舗 源」ではこれらの工程を全て手作業で行い、愛情を込めて出荷しているのだと言います。
■食べ終わった「わっぱ」はオリジナル押し寿司にも応用できる
実践終了後、宮口さんは「ますのすし」の秘密をこんなふうに教えてくれました。
「今回実践していただいた通り、『ますのすし』は一見シンプルですが、先人の知恵が詰まった製法で、これを地元の専門業者は今日まで守り抜いています。
『ますのすし』作りに欠かせないのは『鱒』『酢飯』だけでなく、やはり『笹』です。『笹』があることで殺菌作用があることに加え、『鱒』『酢飯』が乾燥しにくい利点もあります。この『笹』と『笹』の間に空気が入らないように押し寿司にする点もポイントで、これらの工程によって『ますのすし』の美味しさが確立されています」(宮口さん)
そして、最後に「ますのすし」作りは意外な応用ができるとも教えてくれました。
「実は、『ますのすし』の『わっぱ』は、食べ終わった後、別の押し寿司を作ることもできます。ご自宅で『酢飯』を用意し、お好きな刺身類に少々塩を振り酢に漬けて、今回ご紹介した要領で詰めて密封すれば立派な押し寿司になります。本来は使い捨ての『わっぱ』ですので、耐久度は低いかもしれませんが、一度挑戦していただければ楽しいかもしれません」(宮口さん)
▲自分で作った「ますのすし」は格別な味わいです
貴重な体験をさせてもらいました。一見シンプルに見えつつも、やはり奥が深かった「ますのすし」作り。この実践を経て自分で作った「ますのすし」はまた格別な味わいでした。
富山エリアに行かれる方はぜひ「ますのすしミュージアム」を訪れてみてはいかがでしょう。また、「ますのすし」を購入した際は、食べ終わった「わっぱ」を使って宮口さんオススメのオリジナル「押し寿司」を作ってみるのも楽しいと思いますよ。
>> ますのすし本舗 源
<取材・文/松田義人(deco)>
松田義人|編集プロダクション・deco代表。趣味は旅行、酒、料理(調理・食べる)、キャンプ、温泉、クルマ・バイクなど。クルマ・バイクはちょっと足りないような小型のものが好き。台湾に詳しく『台北以外の台湾ガイド』(亜紀書房)、『パワースポット・オブ・台湾』(玄光社)をはじめ著書多数
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