事件や事故、自然災害などで警察や消防などの当局に救助要請といった緊急通報が入った場合、可能な限り現場に早く駆け付けるのが基本であるのはどの国でも同じだろう。到着までの時間が生死を分けることもある。
そうした緊急対応の効率を上げられるよう、米国ドローンメーカーのBRINCは、緊急対応者向けの新型ドローン「Responder」と、機体が発着する専用ステーション、ドローン運用を支えるプラットフォームを発表した。ドローンを素早く現場に配備し、高性能なカメラなどで現場の状況を詳しく把握することが可能になる。強力なズームで現場を把握
Responderは一般消費者ではなく警察や消防などの当局が使うことを想定して開発されたドローンだ。4G通信対応で、カメラやスピーカー、サイレンなどを備えている。もちろん、内蔵するセンサーで障害物を回避するなど安全を確保しながら目的地まで最短経路で飛行する。
現場の状況を上空から正確に把握できるよう、最大40倍ズームのデュアルビジュアルカメラを搭載。暗所や夜間は解像度640ピクセルの赤外線カメラで対応する。温度差を可視化できるため、行方不明者の捜索や、火災の有無の確認などにも役立つ。現場を照らせるよう、強力なスポットライトも備えている。
スピーカーとマイクも
Responderは95デシベルのスピーカーと100フィート(約30メートル)先の音声を拾うマイクを搭載しており、ドローン操縦者や司令室のスタッフがResponderを介して現場にいる人と双方向の会話ができる。
そのため、上空からのライブ映像で現場状況を把握しつつ、地上にいる人に指示を出したり、落ち着いた行動を促したりすることが可能だ。
現場に急行していち早く状況を把握するのに役立つだけでなく、Responderは緊急医療品の運搬に対応するのも特徴だ。自動体外式除細動器(AED)やアナフィラキシー症状の進行を緩和する補助治療剤のエピペン、救命胴衣などを運搬できるため、ボートが崖の上や漂流しているといった、救助隊がすぐに駆けつけられない状況で特に威力を発揮しそうだ。
なおResponderは雨や水飛沫を浴びることも想定して、防水仕様(防水規格IPX4)になっている。
Responder専用ステーションとの組み合わせにより、離発着の自動化を実現。5秒以内にResponderを展開できる。
ドローン本体が専用ステーションに戻るとすぐに充電が始まり、わずか40分で 0%から100% まで充電可能。フル充電時の飛行時間は42分だ。
既存システムに統合も
BRINCは今回、Responderと共に運用のための専用ソフトウェアプラットフォーム「LiveOps」も提供する。ドローンのリモート操縦や映像ストリーミングはもちろん、ドローンの配備の管理などを行える。
このプラットフォームを活用して、ドローンのライブ映像に地図をオーバーレイして、位置情報を把握しやすくすることも可能だ。当局の既存の緊急通報システムやコンピューターによる出動指示のシステムなどに統合すれば、通報からドローン出動までを最短で行えるという。
人手不足解決の一助に
BRINCはこれまでにも当局向けに、ドローン「Lemur 2」や、災害対応や事件時の犯人との交渉などのシーンに使える投げ入れ型の通話デバイス「BRINC Ball」などを展開しており、全米の500を超える当局が同社の商品を使用しているという実績を持つ。
BRINCによると、警察の人手不足に直面している自治体もあり、ドローンを活用することで優先度の高い事案に職員を派遣するのに役立つとしている。
緊急出動を素早くかつ効率的に行いつつ、リソース不足の問題解決にも貢献する総合システムに対する需要は日本にもありそうだ。
参考・引用元:
BRINC
PR Newswire
(文・Mizoguchi)
- Original:https://techable.jp/archives/236434
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:溝口慈子
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