【男前マルチツールの世界】
マルチツール。それは、手に収まるほどのコンパクトなボディにさまざまな道具を詰め込んだ“ハンドツール”。とかく専用ツールに比べ「間に合わせ」と思われがちですが、そこにはマルチツールだからこそ味わえる奥深い世界が存在します。
男前なマルチツールの魅力を紹介する連載【男前マルチツールの世界】第47回は「PDW-OTR11SAK Scales Fullers」(9460円)です。
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先日、久しぶりに村の集まりでワインを飲む機会があったのですが、ワインを持ってきた本人がコルク抜きを忘れるという失態を犯しました。そしてギア好きである私に何故か視線が集まったのですが、不覚にもコルク抜きを備えたEDC(EveryDay Carry)ツールを携帯していませんでした。周りの「なんだよ、使えねぇ」という吹き出しが見て取れました。マルチツール好きとしては屈辱の極み! ということで、最近はめっきり使っていなかったコルク抜き付きのモデルを箪笥からひっぱり出しました。
モデル名は忘れました。手に入れたのは10年以上前かと。ビクトリノックス(VICTORINOX)のたくさんツールが付いているモデル。全長91mmで、確認できる限り18種のツールを備えたサイズの割に分厚いやつです。ホント、なんでも来やがれ!ってくらいのツールの多さです。
ただ嵩張って重いので、私のEDC一軍から落ちて久しく、今日までベンチを温めていました。「今さらなんの用じゃ!?」と、つれない仕草をする師匠のごときビクトリノックスは、今にも経年劣化で割れそうな赤いハンドルカバーを鈍く光らせていました。
このまま古臭い、もとい、クラシックなビクトリノックスを使っても良いのですが、本当にハンドルカバーが割れそうでヤバい。カバーが割れたところで道具としては使えますが、それではあまりに忍びない。
そこで探し出したのがこのアイテム。
ビクトリノックスの91mmサイズに適したPDWの社外スケールです。材質はカスタムナイフの柄としてお馴染みのG10のオリーブグリーン。片側にはクリップ、反対側には蓄光ポイントがついています。詳細は後ほど説明しますが、かなりクールなパーツです。
プロメテウスデザインワークス、通称PDWは、アメリカ・カリフォルニア州で誕生しました。設立メンバーにはデザイナー、職人、冒険家、元軍人など、EDC好きにとってはアベンジャーズのような面々が勢ぞろい。そんな彼らが作ったビクトリノックス専用のスケールと呼ばれるハンドルカバーを取り付けることにしました。
既製品を自己責任でカスタムすることを属にMOD(モッド)と言います。私も懐中電灯を何本もMODして楽しんでいたものです。つまり、自分の好みにカスタムすることで従来の性能を上回る、もしくは自分の使い勝手が良いようにすることです。先に書いたように、すべては自己責任です。自分の所有するアイテムなんですから当たり前ですよね。「それだけのコストと手間をかけたら新しいの買えるんじゃね?」的な突っ込みは私たちのような人種にはまったく通じません。
用意するものを紹介します。薄めのマイナスドライバー、ナイフ、プライバー、クリップを外すためのトルクス、あとできればバイスとハンマー。そんなところです。
まず、PDWのカバーについているクリップを外します。バイスで本体に圧着する際に作業しやすくするためです。上手く嵌められれば、クリップを外す必要はないかもしれませんが念のため。クリップを留めるボルトは星型のトルクスなので注意。
次に元々付いているビクトリノックスのカバーを外します。
カバーに挿入されているピックやピンセットは先に抜きます。このピックが刺さっていた部分に細く薄いマイナスドライバーを差し込み、こじります。カバーは本体に3箇所ある凸部に嵌っており、その周囲を接着剤で固定しています。なので、最初はかなり抵抗を感じます。ちなみに私は、ピックが刺さっていた穴の一部を壊しました。まぁ、使わないから良いかって具合でさらにこじると、接着剤がはがれて隙間ができます。
マイナスドライバーでさらに進撃しようと試みましたが、ナイフにチェンジしてボディ中心部あたりに深く差し込みます。さらに隙間が広がります。ナイフは刃を痛める心配があるので、プライバーにチェンジ。
ここまで進めば勝利は確定です。プライバーのテコの原理でカバーはあっさりと外れました。正直、カバーを外せられれば良いので、他に代用できるものがあればそれを利用してください。
外してみた内側は古い接着剤で汚れていたので、中性洗剤と使い古しの歯ブラシでクリーニングしました。丁寧にしっかりと。ついでにツールの可動部にも薄く注油して動きを良くしておきましょう。注油は少しで良いですよ。
きれいに水気を拭き取ったら、いよいよPDWを装着。驚くほどピッタリと嵌ります。適合性はかなり良いですね。
軽く嵌めて位置がずれないことを確認したら、ウエスを上にかけて軽くハンマーで慣らし、バイスで締め込みます。「コクン」とツール側の凸部にカバーが嵌る感触があれば装着完了。各々のツールの状態にも依るかと思いますが、私の場合はかなりあっさり付けられました。
残念なのはボールペンを挿すスペースがなかったこと。本来であれば備えることができたボールペンが差せませんでした。割とあの青いインクのボールペンが好きだったのですが、まぁ、仕方ないですね。
年月を経て必要になったツール、小型ルーペ。十数年前であれば必要なかったツールが今は必要になりました。年月とは残酷です。でも、ツール好きとしては温故知新な感じでちょっと嬉しかったです。
クリップの反対側にある蓄光ポイントはかなり明るく光ります。持続性にも優れ暗所で見つけやすくなりました。
古びたマルチツールでも雰囲気を変えることで一気に愛着が増しました。何より「このツールは今の私に必要だ」と再認識できたことが最大の収穫でした。マルチツールも昔より着実に進化していますし、より新しいものに目が行きがちですが、どんなにトレンドを追いかけてもキリがありません。古いものを磨くことで、今の自分に合ったものになるかもしれません。お手持ちのアーミーナイフがあったら、自分好みのカスタムパーツを探してみるのも面白いと思います。
>> Prometheus Design Werx(KINRYU)
<取材・文/GOL>
GOL|現在、東京近郊の山村と都会で二拠点生活をしています。ライター業がメインですが、地方の魅力発信にも力を入れています。実地でのレビューがしやすい環境を活かしてアイテムを紹介していきます。
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- Original:https://www.goodspress.jp/reports/610015/
- Source:&GP
- Author:&GP
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