【達人のプラモ術】
イタレリ
「1/32 イタリア空軍 マッキ MC.202フォルゴーレ」
06/06
■飛行機好きなら一度は作りたいイタリアの最優秀戦闘機
1/32スケールでは初となる「マッキMC.202フォルゴーレ」完成しました! あまりなじみのない機体ですが、第二次大戦でのイタリアを代表する高性能戦闘機だけに、同時代のメッサーシュミットBf-109やスピットファイア、P-51マスタング等と比べても遜色がありません。ファストバックタイプのキャノピーと長い機首はエアレーサー的でもあり、シュナイダーレーサーの血を引いているのだなぁと感じさせてくれます。
キットはイタレリの本気を随所に感じることができる優良キットです。ダイムラーDB601を国産化したアルファロメオR.A.1000 RC.41エンジンも再現度が高く、完成後も楽しめます。そして特徴でもあるデカールで再現するスモークリング迷彩は、簡単とは言いませんが塗装とは一味違う面白さを味わえます。個性的なレシプロ戦闘機を作ってみたいならオススメのキットですよ!(全6回の最終回/1回目、2回目、3回目、4回目、5回目)
長谷川迷人|東京都出身。モーターサイクル専門誌や一般趣味雑誌、模型誌の編集者を経て、模型製作のプロフェッショナルへ。プラモデル製作講座の講師を務めるほか、雑誌やメディア向けの作例製作や原稿執筆を手がける。趣味はバイクとプラモデル作りという根っからの模型人。YouTube「
モデルアート公式チャンネル」などでもレビューを配信中。
■細部を仕上げて完成を目指す
スモークリング迷彩のデカールを貼り終えた時点で達成感MAXになってしまい、気分的には完成!だったんですね。しかし実際は、後づけにした主脚の取り付け、ちょっと古さを感じるフレームの多いキャノピーの塗装、アンテナ線の工作などまだまだ作業がテンコ盛りではありました。1/32という大スケールだけに細部までディテールが再現されているので手は抜けません(涙目)。
▲前回、機体にデカールを貼り終えた時点で燃え尽きてました
■エンジンフェアリングは選択式
キットはよくできたエンジンが再現されており、5分割されたカバーを取り外せば、エンジンとガンベイドア内部を見られます。実のところインストでは、エンジンフェアリングパネルは外した状態か接着した状態のどちらかを選んで製作せよ、と指定されており、完成後に取り外しできる仕様にはなっていません。
作例は、エンジンも見たい、機体のフォルムも楽しみたい、というわがままを押し通すために、両面テープで各パネルを固定。取り外し可能にしています。パネル自体の嵌合性は良いのですが、プラのテンションもあり、やはりピタリとはいきません。若干パネルのラインに段差が生じています。
▲エンジンのフェアリングは取り外した状態か取り付けた状態で接着の選択式になっている。作例は両面テープでフェアリングを固定したので、着脱は選択できる。この場合エンジン左側の過給機に繋がるインテークダクトも取り外しできるようにしておかないとパネルの着脱ができなくなるので要注意
▲上面フェアリングを外した状態。エンジンの過給機に繋がるインテークダクト(内部にエアフィルターを装備)の構成が分かって面白い
■脚の取り付け
キットではエンジンを機体に組む際に主脚も組み込む仕様になっています。作例は塗装時のマスキングの手間などを考えて後付けに加工し、主翼側に差し込むピン部分を半分ほどカットしています(取り付け基部を短くすることで90度ひねるように差し込める)。そのため、やや取り付け強度に不安が残るので、エポキシ接着剤を使い強度を確保しています。
▲主脚は後付けできるように、主翼内部の桁に差し込む部分を約7ミリ切り詰め、取り付けに際しては強度を確保するためエポキシ接着剤(15分硬化)を使用している
▲胴体側脚カバー。細い開閉用ステーは、ほぼイモ付けなので取り付けの際の破損と脱落に気を付けたい
▲盟友ドイツ空軍のメッサーシュミットBf109は主脚のトレッド幅が極端に狭く、離着陸時のトラブルに泣かされていたが、MC.202は主翼外側に脚を配置したのでトレッドも広く取られている
■キャノピーの製作
キャノピーは2パーツ構成で透明度も高く、フレームのモールドもしっかりとしています。残念ながら専用マスクシールは付属していないので、マスキングテープを使います。
インストでは、キャノピーフレーム内側は黒で塗装せよ、と指定されていますが、作例では機体内部色で塗装しています。またガンサイトのレクテルがクリアパーツで再現されているので、光硬化樹脂を使い接着後も曇らないように取り付けています。
▲市販のマスキングテープでマスキング。フレームモールドがしっかりしているのでマスキングもやりやすい
▲キャノピー内側フレーム部分は機体色で塗装。外側から機内色→黒→機体色の順番で塗り重ねていく
▲キャノピーはメッサーシュミットBf109と同じ横開きタイプ。内側に開閉レバーを取り付けて機体に接着
▲初期型ではキャノピー後部に窓があったが、窓を廃して胴体両側を大きくえぐった形状に変更することで、後方視界を確保しているのだそうだ
■プロペラの製作
プロペラは基本的にはキットのインストに沿って製作すればOK。ただし3枚のプロペラブレードは、取り付け基部が小さく正しい位置に接着しづらいので要注意です。
▲プロペラの塗装は艶消しの黒ブレードで、先端は黄色で塗装。完成後にプロペラブレードに貼ったはずのデカールが1枚剥がれて紛失していることが発覚して残念な状態となる
■アンテナ線の取り付け
キットには、キャノピー後部のアンテナから垂直尾翼の伸びる空中線(アンテナ線)の再現用に細い金属線が付属しています。しかしアンテナ線に使うには太すぎるので、ここは定番の“伸ばしランナー”を使用しています。空中線取り付け基部の碍子がパーツで再現されているのはありがたいです。
▲無線用アンテナ線は“伸ばしランナー”で再現。メリットは、簡単に自作できる、ランナーを使うのでノーコスト。プラなので接着剤との相性も良く、扱いやすい。ただし指などを引っ掛ると切れやすい
■完成!
今回、製作途中で尾輪が折れる、接着した排気管がいつの間にか外れていて焦る、機体各部に接着した小エッチングパーツが無くなる、主翼機銃を紛失する、といった些細なトラブルはありましたが、何とか完成することができました(実はリカバリーで四苦八苦)。
キットは仕様に応じてパーツの違いや取り付け位置が変わるので、製作に際しては、事前のチェックと注意が必要ですが、日本語版の解説書が付属していので助かりました。
▼「マッキMC.202フォルゴーレ」ギャラリー
▲機首上面と後部エンジンフェアリングを外した状態。キャノピー前のガンベイドフェアリングを取り付けておくと機首の長さを強調できる
▲MC.202は左の主翼が右に比べて20cm長い。キットもちゃんと長さ違いが再現されている(左翼が6.25ミリ長い)が、一見では分からない。ちなみにこれは、プロペラの回転方向に生じるトルクモーメントで機体が傾くのを防ぐための採用された形状だ
▲機体下面の機首からラジエーターにかけてはオイル汚れを塗装で再現している
▲後方から見ると後方視界確保のためキャンノピー後部が大きく絞り込まれているのが分かる。アメリカのF-4Uコルセアの初期型(バードケージキャノピー)でも同じような形状で視界を確保している
▲3Dプリントの計器盤デカールなどを使うことで精密感があるコクピット。1/32スケールならではの見せ場のひとつ
▲イタリア機の個性的な迷彩をデカ―ルで再現可能! これはこれでアリだと思う。選択肢が多いのには賛成だ。イタレリの今後にも期待したい!
■飛行機モデルの楽しみ方
1/32スケールは作りごたえがあります。エンジンやコクピットといった細部のディテールにもメーカー独自のこだわりがあり、それがまたキット魅力なっています。
昨年100年を迎えたイタリア空軍の中で、WW2において活躍した「MC.202フォルゴーレ」、イギリスの「スピットファイア」やアメリカの「P-51マスタング」にもヒケを取らない高性能機でした(もう少し登場が早かったら良かったんですが…)。デカール迷彩は大変だけど、改めて惚れ直しました。プラモの達人オススメのキットです!
さて次回はちょっと目先を変えて、いまやプラモ製作で欠かせない塗装ツール、エアブラシのハウツーを紹介していきます! お楽しみに!
それにしてもプロペラのデカールどこいっちゃったんだろう(泣)。
>> [連載]達人のプラモ術
<製作・写真・文/長谷川迷人>
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- Original:https://www.goodspress.jp/howto/612183/
- Source:&GP
- Author:&GP
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