民間宇宙飛行の発展にともない、世界の「小型衛星」市場シェアはさらに拡大している。Fortune Business Insightsのレポートによれば、世界の小型衛星市場規模は2023年の34億6,000万ドルから2030年までに58億8,000万ドルに成長すると予測されており、予測期間中に7.9%のCAGRを示すとされている。
一般的に重量100kg~500kg程度の衛星が小型衛星と呼ばれ、50kg級以下の衛星が“超”小型衛星と呼ばれる。低コスト、短期間で開発しやすいメリットがあり、通信や監視、地球観測をはじめ多様な用途に活用されながら宇宙産業ビジネスを後押ししている。(参考)
小型衛星打ち上げロケットを製造する韓国の民間宇宙飛行スタートアップINNOSPACEは今年5月末、ブラジルのマラニョン連邦大学(UFMA)、ブラジルの航空宇宙車両用システムなどを開発する慣性航法分野の専門企業Castro Leite Consultoria LTDA(CLC)と、新たな契約を締結したことを発表。
この契約は、2025年上半期にブラジルのアルカンタラ宇宙センターで予定されているINNOSPACEの「HANBIT-Nano」ロケットによるライドシェア打ち上げミッションに関するもの。ブラジルのマラニョン州でアルカンタラ・サイエンティスト・プロジェクトを主導するUFMAとの契約を通じて、同プロジェクトに参加しているブラジルの研究機関DARTilabとBAITESが開発した超小型衛星を展開する。
INNOSPACEにとって初の商業打ち上げに
INNOSPACEは2017年設立のスタートアップ。昨今急速に拡大している小型衛星市場において、低遅延、低コスト、信頼性の高い打上げサービスを提供するため、ハイブリッドロケット駆動の小型衛星打上げ機(HANBIT)を開発している。韓国、ブラジル、フランスにオフィスを構え、世界的な航空宇宙産業拡大を目指している。同社のHANBIT-Nanoは、重量90kg級の搭載体を500kmの太陽同期軌道(SSO)に載せる2段型宇宙ロケット。発射体は、1段目が推力25t級ハイブリッドエンジン1基、2段目が推力3t級エンジン1機で構成されている。2段目の発射はハイブリッドエンジン「ハイパー(HyPER)」、メタンエンジン「リーマー(LiMER)」によって行われる。
今回のミッションはINNOSPACEにとって初の商業打ち上げとなる。2023年3月にブラジルのアルカンタラ宇宙センターから同社初の試験用ロケット「HANBIT-TLV」の打ち上げに成功した後、HANBIT-Nanoロケットの初飛行となる。同社では「ブラジルのお客様に選ばれたことは非常に意義深いこと」とコメントを寄せている。
HANBIT-NanoにCLCが開発中の慣性システムを搭載
今回の提携により、HANBIT-NanoにはCLCが開発中の慣性システムが搭載されることになる。慣性航法を専門とするCLCは、国内唯一の“飛行資格を持つ慣性プラットフォーム”を持つ(GNSSの助けを借りた慣性)。CLCは「当社の製品が宇宙飛行に適合することを証明する絶好の機会だ」と語る。またUFMAは「超小型衛星の打ち上げに向けたINNOSPACEとの提携は、歴史的な節目である」と述べている。
参考:
BUSINESS WIRE
INNOSPACE
日本航空協会
(文・坂土直隆)
- Original:https://techable.jp/archives/239861
- Source:Techable(テッカブル) -海外テックニュースメディア
- Author:Tsunoda Maiko
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