仏Seederalが1,100万ユーロ調達|出力160馬力EVトラクター開発を加速、2026年の量産化目指す

EVの普及が進む昨今、普通乗用車だけでなく農業用トラクターもEV化されている。EVトラクターは従来の化石燃料トラクターよりも二酸化炭素の排出を抑えられるエコロジーな製品だ。

フランスのスタートアップSeederalが発表したEVトラクターのプロトタイプは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンのトラクターにも負けないパワーを誇りつつ、ランニングコストでそれらに勝るパフォーマンスを発揮するという。

国家プロジェクト「フランス2030」から資金調達

Image Credits:Seederal

フランス北西部ブルターニュ地方。ユーラシア大陸からケルト海に突き出した半島の中にある地域に、Seederalは本社を置いている。

今年4月、Seederalは1,100万ユーロの資金調達を完了した。このうちの370万ユーロは、フランスの国家投資計画「フランス2030」からの援助である。

Image Credits:Seederal

まずはこの「フランス2030」について、JETROの情報を参考に解説したい。これは脱炭素化の達成を目指す企業や、環境に負荷をかけないイノベーションを実現させようとする企業に国が積極投資をしようというプロジェクト。戦略分野別の10の目標と、それを達成するための分野横断的な6の目標を設定している。

Seederalは、そんなフランス2030に選定されたスタートアップのひとつなのだ。

ランニングコストは従来型トラクターを下回る見通し

JCBファストラックをEV車に改造する形で製造されたSeederalのプロトタイプトラクターは、資金調達以前の今年2月に発表された。

以下、この車両のスペックを解説しよう。

Image Credits:Seederal

重量は約7トン、出力は160馬力、連続稼働時間は8時間から12時間、そして0%から100%まで充電するのに必要な時間は2時間とのこと。今の時点ではまだ性能の実証段階だが、2026年までに量産型を発売する予定だ。このトラクターは、1台あたり年間15~20トンの二酸化炭素を削減する効果が見込まれる。これは普通自動車17台分の量だ(参考:Founders Today)。

EV自動車メディアelectriveの記事によると、EVトラクターは従来型トラクターよりも購入費用が高くなってしまうことはSeederalも認めているという。しかし、7年間の運転期間中に年500~700時間使用した場合、ランニングコストは従来型トラクターを下回るそうだ。

変速機を省ける効果も

Image Credits:Seederal

EV車の利点の一つを挙げれば、「トランスミッション(変速機)を省ける」という点が挙げられる。

ガソリンエンジントラクターやディーゼルエンジントラクターには、変速機が搭載されている。EVトラクターはそうしたものを必要としないケースが多く、その操作はいわゆる「オートマ車」とほぼ同様のものになる。

また、ギアボックスに関連するメンテナンス費用を削減できる効果も期待できる。

大型トラクターのEV化

現在、大手農機メーカーはEVトラクターの開発・市場投入に着手し始めている。

しかし、その多くは数十馬力程度の中小型車両である。小規模の農場では活躍できるだろうが、地平線を見渡せるフランスの平野に投入するとなると、やはり荷が重い。

Image Credits:Seederal

日本で100馬力以上のトラクターを見かける機会は、特に都市部ではそう頻繁にはないかもしれない。しかし、日本より平野に恵まれているヨーロッパではそのあたりの事情も異なる。現に、ヨーロッパで販売されているトラクターの半分以上が100~200馬力クラスの車両のようだ(参考:Farmers Weekly)。

そうしたなかで160馬力の大型EVトラクターのプロトタイプが問題なく稼働できると実証された場合、Seederalは数多くの大手農機メーカーと肩を並べるようになるかもしれない。

参考・引用元:
Seederal
JETRO
Founders Today
electrive
Farmers Weekly

(文・澤田 真一)


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